第2編 犯罪 第4章 責任
KH0770H26-03 責任 A
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.法律を知らなかったとしても,そのことによって,罪を犯す意思がなかったとすることはできないが,情状により,その刑を減軽し,又は免除することができる。
イ.心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって,専ら裁判所の判断に委ねられており,犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判断される。
ウ.先天的に耳が聞こえない者の行為については,必要的にその刑を減軽し,又は免除する。
エ.14歳未満の者であっても,行為の是非善悪を弁識し,その弁識に従って行動する能力が十分に認められる場合があり,そのような者については処罰されることがある。
オ.親告罪について,告訴権者に対して自己の犯罪事実を告げ,その措置に委ねたときは,刑を減軽することができる。
解答 ア2,イ1,ウ2,エ2,オ1
KH0810H24-13K 責任能力 A
責任能力に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。
ア.犯行時に14歳未満であっても,公訴を提起する時点で14歳に達していれば,刑事責任能力が認められる。
イ.犯行時に成年に達していても,犯行時の知能程度が12歳程度であった場合には,刑事未成年者に関する刑法第41条が準用される。
ウ.犯行時に心神耗弱の状態にあったと認められれば,刑が任意的に減軽される。
エ.犯行時に事物の是非善悪を弁識する能力が著しく減退していても,行動を制御する能力が十分に保たれていれば,完全責任能力が認められることがある。
オ.飲酒当初から飲酒後に自動車を運転する意思があり,実際に酩酊したまま運転した場合,運転時に飲酒の影響により心神耗弱の状態であっても,完全責任能力が認められることがある。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
解答 4 ア×,イ×,ウ×,エ×,オ〇
KH0820H25-05K 責任能力 A
責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力が欠けている場合をいう。
2.心神耗弱とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力が欠けている若しくは著しく減退している場合,又はこの弁識に従って行動する能力が欠けている若しくは著しく減退している場合をいう。
3.13歳であるが,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力に欠けるところがない場合,責任能力が認められる。
4.精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めることはできない。
5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。
解答 5
KH0830H27-11K 責任能力 A
責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.ある人が同じ精神の障害の状態にありながら,ある行為については完全な責任能力が認められ,他の行為については完全な責任能力が認められないことがある。
2.心神喪失とは,精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力及びその弁識に従って行動する能力のいずれもない状態をいう。
3.心神喪失は,精神の障害がある場合に限られるから,アルコールによって一時的にそのような状態に陥った場合は心神喪失と認めることはできない。
4.心神耗弱は,責任能力が著しく減退しているにすぎないから,その刑を減軽しないこともできる。
5.13歳の少年が人を殺害した場合,少年法の規定に基づく手続を経れば,その少年に刑罰を科すことができる。
解答 1
KH0840H29-13 責任能力 A
責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.13歳の少年であっても,事物の理非善悪を弁識する能力及びその弁識に従って行動する能力が備わっていれば,責任能力が認められることがある。
2.責任能力の有無は法律判断であり,専ら裁判所の評価に委ねられるべきであるため,その前提となる生物学的・心理学的要素についても,最終的には裁判所により判断される。
3.相手の頭部を殴打する暴行を加えた時点で行為者に責任能力が存在したとしても,その暴行により相手が死亡した時点で行為者に責任能力が存在しなければ,死亡の結果について行為者
に刑事責任を問うことはできない。
4.犯行当時,行為者に重度の精神疾患があれば,そのことだけで直ちに心神喪失の状態にあったと判断されることになる。
5.飲酒の際,飲酒後に酒酔い運転をする意思が認められる場合には,実際に酒酔い運転をした時に酩酊による心神耗弱の状態にあったとしても,行為者に完全責任能力が認められることがある。
解答 2,5
KH0850H30-11K 責任能力 A
責任能力に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.裁判所は,責任能力の有無・程度について,専門家たる精神医学者の意見を十分に尊重して判定すべきであるから,精神鑑定の意見の一部だけを採用することは許されない。
2.行為者が犯行時に心神耗弱状態にあった場合でも,その刑を減軽しないことができる。
3.犯行時に事物の是非善悪を弁識する能力が著しく減退していても,行動を制御する能力が十分に保たれていれば,完全責任能力が認められることがある。
4.精神の障害がなければ,心神喪失又は心神耗弱と認められる余地はない。
5.14歳の者は,事物の是非善悪を弁識し,その弁識に従って行動する能力が十分に認められる場合であっても,処罰されない。
解答 4
KH0851R03-05Y 責任能力 A
学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,乙を殺せとの幻聴に従い,殺意をもって,乙の腹部を包丁で刺して死亡させた。甲の精神鑑定を行った精神科医丙は,上記犯行当時,甲が重篤な統合失調症を患っており,これに基づく幻覚妄想に支配された状態にあったと鑑定した。
【会 話】
学生A.甲の責任能力についてはどのように考えていくべきだろうか。いくら精神科医であっても,統合失調症等の重い精神障害が①(a.生物学的要素・b.心理学的要素)に与えた影響など分からないのではないかな。
学生B.確かに,精神科医の中でも,A君の見解,つまり不可知論を採用する方もいるようだね。でも,判例はそのように考えていないんだ。判例による心神喪失の定義が,精神の障害により,事物の理非善悪を弁識する能力が欠如し,②(c.又は・d.かつ),この弁識に従って行動する能力が欠如している場合とされていることからも分かるよね。
学生C.では,精神障害による影響の程度は,誰がどのようにして判断するのだろうか。特に,専門家である医師が述べている意見については,どう考えるべきなのかな。丙医師の意見に従えば,心神喪失になるのではないかと思うんだけど。
学生B.判例は,生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が③(e.臨床精神医学の本分・f.非医学的知見も加味した総合的判断)であることからすれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,④(g.これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して・h.生物学的要素の判断に関する限り,その意見に従って)認定すべきであると判示しているね。もっとも,一方で判例は,被告人の精神状態が心神喪失・心神耗弱に該当するかは,⑤(i.事実判断・j.法律判断)であって,裁判所の専権事項であり,その前提となる生物学的要素・心理学的要素についても,究極的には裁判所の判断に委ねられるべき問題であると判示しているね。
1.①a ②d ③e ④g ⑤i
2.①a ②d ③f ④h ⑤j
3.①b ②c ③e ④g ⑤j
4.①b ②c ③f ④g ⑤i
5.①b ②d ③e ④h ⑤i
解答 3
KH0870H20-09 原因において自由な行為 B
次の【事例】について,学生A及びBが後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から③までの( )内に入る学生Aの発言として正しいものを後記【発言】から選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,乙を殺害しようと考えたが,しらふでは殺害行為に及ぶ勇気がなかったので,多量の飲酒により自己を心神喪失状態に陥れて隣室で就寝中の乙を刺殺しようと考え,手元に包丁を用意して飲酒を開始し,計画どおり自己が飲酒のため心神喪失になった状態で乙の胸部を包丁で突き刺して殺害した。
【会 話】
A. 甲の行為は,自己の責任能力のない状態を道具として利用する一種の間接正犯であって,自己を心神喪失状態に陥れる飲酒行為が殺人の実行行為であり,したがって,飲酒行為時に責任能力が認められる以上,甲には殺人罪が成立すると思う。
B. ただ,君のように考えると,仮に,甲が自己の心神耗弱状態を利用して乙を殺害する意思で殊更その状態に陥り,計画どおり乙を殺害した場合には,刑を減軽せざるを得ず,本件のように心神喪失状態で殺害した場合には完全な刑事責任が認められることとの不均衡が生じないだろうか。
A. ( ① )
B. 君の考えでは,甲が酔いつぶれて眠り込んでしまった場合にも殺人未遂罪が成立してしまうことになるが,それでは処罰範囲が広がりすぎるのではないか。
A. ( ② )
B. 責任能力は責任の要件ではあっても責任非難それ自体ではないのだから,実行行為を心神喪失時の行為と解しつつ,それより前の責任能力のあったときの意思態度について非難可能性が認められれば,行為全体について完全な責任を負わせても一向に構わないと思う。
A. ( ③ )
【発 言】
ア. 責任能力は単に意思決定能力にすぎないものではなく,行動制御能力でもあるのだから,責任能力は,やはり実行行為に対する同時的コントロールの問題と解すべきであって,実行行為時に存在すべきものではないのか。
イ. 本事例のような故意の作為犯についてはそう思えるかもしれないが,過失犯や不作為犯のように,実行行為の定型性が弱い場合には,飲酒行為に構成要件該当性を認めても問題はないと思う。それよりも,君のように実行行為の時点で心神喪失状態に陥っていても,甲に完全な刑事責任を負わせることの方が問題ではないか。
ウ. 私の立場からは,あたかも身分のない故意ある道具の利用の場合と規範的意味において同じように考え,心神耗弱状態を利用した場合にも原因において自由な行為の理論を認めることができると思う。
1. ①ア ②イ ③ウ 2. ①ウ ②ア ③イ 3. ①ア ②ウ ③イ 4. ①ウ ②イ ③ア 5. ①イ ②ア ③ウ
解答 4 ①ウ,②イ,③ア
KH0881R02-09K 原因において自由な行為 A
原因において自由な行為に関する次の各【見解】に従って後記の各【事例】における甲の罪責を検討した場合,後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。
【見 解】
A.責任能力がある状態で行われた原因行為を実行行為と捉える。
B.責任能力を欠いた状態で行われた結果行為を実行行為と捉えつつ,責任能力は意思決定時に存在すれば足り,必ずしも実行行為時に存在することは必要ない。
【事 例】
Ⅰ.甲は,X宅に赴いて同人を殺害しようと決意し,心神喪失状態に陥る可能性があることを認識しつつ,自宅において景気づけのために覚醒剤を使用したところ,心神喪失状態に陥り,当
初の計画どおりXを殺害した。
Ⅱ.甲は,X宅に赴いて同人を殺害しようと決意し,心神喪失状態に陥る可能性があることを認識しつつ,自宅において景気づけのために覚醒剤を使用したところ,心神喪失状態に陥ったが,
X宅には赴かず,Xの殺害には及ばなかった。
Ⅲ.甲は,覚醒剤を使用すると粗暴になり周囲に暴行を加える習癖があると知りつつ,覚醒剤を使用した結果,心神喪失状態に陥り,Xと口論になり,殺意を生じて同人を殺害した。
【記 述】
1.Aの見解によれば,事例Ⅰでは,甲に,Xに対する殺人既遂罪が成立し得る。
2.Aの見解を採った上で,未遂犯の成立時期は結果発生の現実的な危険性が生じた段階に求められるべきで,それが常に実行行為の開始段階に認められる必然性はないと考えれば,事例Ⅱでは,甲に,Xに対する殺人未遂罪は成立しない。
3.Aの見解によれば,事例Ⅲでは,甲に,Xに対する殺人既遂罪が成立し得る。
4.Bの見解によれば,事例Ⅰでは,甲に,Xに対する殺人既遂罪が成立し得る。
5.Bの見解によれば,事例Ⅱでは,甲に,Xに対する殺人未遂罪は成立しない。
解答 3
第2編 犯罪 第5章 未遂
KH0920H28-13 既遂と未遂の区別 A
次のアからオまでの各記述における甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,( )内の犯罪が既遂になる場合には1を,未遂にとどまる場合には2を,既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
ア.甲は,所持金がなかったことから代金を支払わずに食事をしようと考え,飲食店に行って料理を注文し,これを食べた後,代金を請求した店員に対し,財布を忘れたので自宅に取りに帰ると嘘を言ったが,店員にその嘘を見破られた。(詐欺罪)
イ.甲は,Aを殺害しようと考え,Bから致死性の毒薬であると告げられて小瓶入りの液体を購入し,コーヒーに同液体を入れて,これをAに飲ませたものの,同液体は水であったため,Aは死亡しなかった。(殺人罪)
ウ.甲は,Aと同居している自宅を燃やそうと考え,自宅の和室に新聞紙が入った段ボール箱を置き,同新聞紙にライターで点火したが,その直後に帰宅したAが燃えている同段ボール箱を発見して消火したため,同段ボール箱の直下の畳だけが焼損した。(現住建造物等放火罪)
エ.甲は,駅のホームのベンチで寝ているAの隣に座ったところ,Aのズボンのポケットに財布が入っていることに気付き,これを盗もうと考え,手を差し伸べて同ポケットの外側に触れたが,駅員が近付いてきたので,財布に触れることはできなかった。(窃盗罪)
オ.甲は,交通事故を装って保険会社から保険金をだまし取ろうと考え,Aに依頼して,甲運転の自動車にA運転の自動車を衝突させ,警察官に交通事故を申告したが,Aが警察官から追及されて偽装事故であると認めたため,保険金を請求しなかった。(詐欺罪)
解答 ア1,イ3,ウ2,エ2,オ3
KH0930H29-17K 既遂と未遂の区別 A
次のアからオまでの各事例における甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,( )内の犯罪が既遂になる場合には1を,未遂にとどまる場合には2を,既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。
ア.甲は,会社事務所内において現金を窃取して,戸外に出たところを警備員乙に発見されて取り押さえられそうになったため,逮捕を免れようと考え,乙に対し,刃体の長さ20センチメートルの出刃包丁をその腹部に突き付け,「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴り付けたが,偶然その場を通り掛かった警察官に取り押さえられ,逮捕を免れることができなかった。(事後強盗罪)
イ.甲は,行使の目的で,カラープリンターを用いて,複写用紙に真正な千円札の表面及び裏面を複写して千円札を偽造しようとしたが,カラープリンターの操作を誤ったため,完成したものは,一般人がこれを一見した場合に真正な千円札と誤認する程度の外観を備えたものではなかった。(通貨偽造罪)
ウ.甲は,通行中の乙に因縁を付けて乙から現金を脅し取ろうと考え,乙に対し,「俺をにらんできただろ。金を払えば許してやる。金を出せ。」などと大声で怒鳴り付けて反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫を加え,同脅迫により畏怖した乙は,甲に現金を直接手渡さなかったものの,甲が乙のズボンのポケットから乙が所有する現金在中の財布を抜き取って持ち去るのを黙認した。(恐喝罪)
エ.甲は,知り合いの女性乙を自己が運転する自動車に乗せて同車内において強いて性交しようと考え,乙に対し,「自宅まで送ってあげる。」とうそを言ったところ,乙は,これを信じて同車に乗り込んだが,甲の態度を不審に思い即座に同車から降りた。(強制性交等罪)(問改)
オ.甲は,会社事務所にある現金を窃取する目的で,門塀に囲まれ,警備員が配置されて出入りが制限されている同事務所の敷地内に塀を乗り越えて立ち入ったが,同事務所の建物に立ち入る前に警備員に発見され敷地外に逃走した。(建造物侵入罪)
解答 ア1,イ2,ウ1,エ3,オ1
KH0950H26-09 実行の着手 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。
1.甲は,Xを眠らせてXが左腕に着けていた高級腕時計を外して持ち去ろうと考え,Xに多量の睡眠薬を飲ませたが,Xが眠らなかったため,Xの腕時計に触れることすらできなかった。甲には昏酔強盗未遂罪が成立する。
2.拘置所に勾留中の甲は,逃走しようと考え,収容されていた房の壁を削り取って穴を開けたが,その穴が脱出可能な程度の大きさになる前に発見されたため,逃走行為に及ばなかった。甲には加重逃走未遂罪が成立する。
3.甲は,Xから現金を脅し取ろうと考え,「殺されたくなければ100万円をよこせ。」などとXを恐喝する内容の手紙をポストに投かんし,その手紙はX方に配達されたが,手紙を見たXの妻は冗談であると思い,その内容をXに伝えなかった。甲には恐喝未遂罪が成立する。
4.甲は,X方の居間に置かれた金庫に多額の現金が入れてあることを知り,これを盗む目的で,X方の無施錠のドアから玄関に入ったが,Xにその場で発見されたため,逃走した。甲には窃盗未遂罪が成立する。
5.甲は,Xに対し,Xの孫を装って電話をかけ,「おじいちゃん。金がなくて困っているので,今から言う俺の口座に100万円を送金して。」と言って現金をだまし取ろうとしたが,その声が孫の声と違うことに気付いたXは,甲から指定された口座に送金しなかった。甲には詐欺未遂罪が成立する。
解答 5
KH0960H27-05K 未遂犯の成否 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。
1.甲は,Xを眠らせてXが左腕に着けていた高級腕時計を外して持ち去ろうと考え,Xに多量の睡眠薬を飲ませたが,Xが眠らなかったため,Xの腕時計に触れることすらできなかった。甲には昏酔強盗未遂罪が成立する。
2.拘置所に勾留中の甲は,逃走しようと考え,収容されていた房の壁を削り取って穴を開けたが,その穴が脱出可能な程度の大きさになる前に発見されたため,逃走行為に及ばなかった。甲には加重逃走未遂罪が成立する。
3.甲は,Xから現金を脅し取ろうと考え,「殺されたくなければ100万円をよこせ。」などとXを恐喝する内容の手紙をポストに投かんし,その手紙はX方に配達されたが,手紙を見たXの妻は冗談であると思い,その内容をXに伝えなかった。甲には恐喝未遂罪が成立する。
4.甲は,X方の居間に置かれた金庫に多額の現金が入れてあることを知り,これを盗む目的で,X方の無施錠のドアから玄関に入ったが,Xにその場で発見されたため,逃走した。甲には窃盗未遂罪が成立する。
5.甲は,Xに対し,Xの孫を装って電話をかけ,「おじいちゃん。金がなくて困っているので,今から言う俺の口座に100万円を送金して。」と言って現金をだまし取ろうとしたが,その声が孫の声と違うことに気付いたXは,甲から指定された口座に送金しなかった。甲には詐欺未遂罪が成立する。
解答 4
KH0970R01-13K 窃盗犯の実行の着手時期 A
学生A,B及びCは,次の【事例】における窃盗罪の実行の着手時期について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑥までの( )内から適切なものを選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,X宅のタンスに宝石が保管されていることを知ったため,その宝石を窃取する目的で,X宅に玄関から侵入し,宝石が保管されているタンスの在りかを探し始めて,それが置かれていた居間に立ち入ろうとしたところ,居間から出てきたXと鉢合わせとなり,取り押さえられた。
【会 話】
学生A.私は,甲がX宅に侵入した時点で窃盗罪の実行の着手を認めてよいと思います。この時点で,①(a.犯意の飛躍的表動があった・b.法益侵害の危険が飛躍的に高まった)といえるからです。
学生B.A君は,犯罪を行為者の危険な性格の発現であると考えているのですね。私は,実行の着手の「実行」とは構成要件該当行為のことで,「着手」とはそれを開始することだと解するので,【事例】では,窃盗罪の実行の着手は,②(c.認められない・d.居間に立ち入ろうとした時点で認められる)と考えます。
学生A.B君の見解に対しては,実行の着手時期が③(e.不明確になる・f.遅くなり過ぎる)との批判がありますね。
学生C.私は,実行の着手時期とは,未遂犯の成立時期のことであるので,未遂犯の処罰根拠に遡り,実質的に考えることが必要だと思います。そのため,窃盗罪の実行の着手時期は,④(g.占有侵害の現実的危険性が発生した・h.窃取行為と密接に関連する行為を開始した)時点だと解するので,【事例】では,窃盗罪の実行の着手は,⑤(i.認められない・j.X宅内でタンスの在りかを探し始めた時点で認められる)と考えます。この点,B君の見解を修正し,実行の着手時期を⑥(k.占有侵害の現実的危険性が発生した・l.窃取行為と密接に関連する行為を開始した)時点とする見解もありますが,この見解に対しては,形式面を重視すると言いながら,結局,実質的な観点を取り入れているとの批判があります。
1.①a ⑥k 2.②c ④h 3.②d ⑤i 4.③f ⑥l 5.④g ⑤j
解答 4 ①a ②c ③f ④g ⑤i ⑥l
KH0971R02-11 実行の着手 A
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.甲及び乙は,深夜,路上を一人で歩いていたV女を見付け,約6キロメートル先のひとけのない工事現場にV女を連れ込んで強制的にV女と性交しようと決意し,二人でV女の背後からその身体を抱きかかえながら,付近に停めていた自動車にV女を押し込んで乗せ,同車を発進させたが,性交には至らなかった。甲及び乙には,強制性交等未遂罪の共同正犯が成立する。
イ.甲は,強制的にV女と性交しようと決意し,深夜,路上において,V女を押さえ付けて反抗を抑圧したが,付近から人の声が聞こえたため性交を諦めて,V女のハンドバッグから財布を奪い取ろうと考え,「騒ぐな。殺すぞ。」と申し向けてV女の畏怖心を強めた上,財布を奪い取った。甲には,強盗・強制性交等未遂罪が成立する。
ウ.甲は,Vが居住する木造家屋に火をつけて焼損しようと考え,同家屋台所において,プロパンガスを多量かつ長時間にわたり放出するとともに,ガソリン約18リットルを撒布したが,点火行為には至らなかった。甲には,現住建造物等放火未遂罪が成立する。
エ.甲は,Vを殺害する意思で,毒入りの菓子を箱詰めし,それをV宅に宛てて宅配便で発送した。しかし,仕事に嫌気が差した配達員により,その菓子は配達途中に川に捨てられた。甲には,殺人未遂罪が成立する。
オ.甲は,V宅に侵入し,金品を強取しようと決意し,Vを脅すためのナイフを入手した上,それを携行してV宅に向かった。しかし,V宅に至る手前で,罪悪感を覚え,計画を中止することに決め,自宅に引き返した。甲には,強盗予備罪の中止犯が成立する。
解答 ア1,イ2,ウ1,エ2,オ2
KH0972R03-13 殺人未遂罪の成立 A
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】のうち,甲に殺人未遂罪の成立を認めるための論拠として適切なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,知人の乙に,毒物を混入したワイン(以下「本件ワイン」という。)を送り付ければ,乙がそれを自ら飲んで死亡すると考えた。甲は,某日,本件ワインを宅配業者の事務所に持ち込み,3日後の配達指定をして,乙宅への配達を申し込んだ。しかし,本件ワインは,申込み当日,同事務所での保管中に瓶が破損して廃棄処分となったため,乙宅に配達されることはなかった。
【記 述】
ア.間接正犯の実行の着手については,被利用者の行為を基準として実行の着手を判断すべきところ,本件では,それと同様の考え方が妥当する。
イ.結果発生の一定の蓋然性が生じれば,未遂犯の成立を認めることができるところ,我が国の一般的な宅配業務の実情を前提とした場合,本件ワインの配達を申し込んだ時点で乙宅に到着することはほぼ確実といえる。
ウ.実行の着手は,行為者が,その犯行計画上,構成要件実現のためになすべきことを行った時点で認めることができる。
エ.甲が,宅配業者に依頼せず,自ら乙宅に本件ワインを届けようとした場合には,乙宅に本件ワインを届けるまでは殺人未遂罪が成立しないこととの均衡を考慮する必要がある。
オ.既遂結果発生の時間的に切迫した危険を内容とする未遂結果は,刑法第43条の書かれざる構成要件要素である。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ
解答 3
KH1000H24-11 中止犯 A
次の【事例】に引き続く事情に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,甲に殺人未遂罪の中止犯が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。
【事 例】
甲は,殺意をもって,乙の頭部目掛けて包丁で1回切り付けたが,乙は,これを左腕で防いだため,左前腕部切創の傷害を負った。
【記 述】
ア.乙の負った傷害は,全治約2週間の左前腕部切創にとどまり,生命に危険のある状態には至らなかった。甲は,更に乙に切り付けようとしたが,通行人が近づいてくるのを認めて,自己の犯行が発覚すると思い,その場から逃走した。
イ.乙は,前記左前腕部切創に起因する出血のため,早期に治療を受けなければ出血性ショックにより死亡する危険のある状態となった。甲は,乙に致命傷を与えたと思い,その場を立ち去ろうとしたが,乙から「助けてくれ。」と懇願されたため,憐憫の情を催し,通行人に「あそこに怪我人がいるから,あとはよろしく。」とだけ告げて立ち去った。乙は,その通行人が手配した救急車によって病院に搬送されて治療を受けた結果,死亡するに至らなかった。
ウ.乙の負った傷害は,全治約2週間の左前腕部切創にとどまり,生命に危険のある状態には至らなかった。しかし,甲は,乙に致命傷を与えたものと信じ込み,その場を立ち去った。
エ.乙の負った傷害は,全治約2週間の左前腕部切創にとどまり,生命に危険のある状態には至らなかった。甲は,更に乙に切り付けようとしたが,乙から「助けてくれ。」と懇願されたため,憐憫の情を催し,そのままその場から立ち去った。
オ.乙は,前記左前腕部切創に起因する出血のため,早期に治療を受けなければ出血性ショックにより死亡する危険のある状態となった。甲は,更に乙に切り付けようとしたが,乙から「助けてくれ。」と懇願されたため,憐憫の情を催し,乙を病院に搬送して治療を受けさせたが,乙は治療の甲斐なく出血性ショックにより死亡した。
解答 ア2,イ2,ウ2,エ1,オ2
KH1010H27-07Y 中止犯 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.中止未遂が成立するためには,行為者が自己の行為のみで結果発生を防止する必要がある。
2.既遂犯が成立する場合にも,結果発生防止のための真摯な努力をしていれば,中止未遂が成立する。
3.窃盗の目的で他人の住居に侵入して物色行為を行った場合,住居に侵入した行為について成立する犯罪と物色行為について成立する犯罪は科刑上一罪の関係に立つので,財物の窃取を自己の意思により中止すれば,いずれの犯罪にも中止未遂が成立する。
4.予備罪に中止未遂の成立する余地はない。
5.中止未遂の刑は,刑法第43条ただし書により,任意的に減軽又は免除される。
解答 4
KH1020H30-08Y 不能犯 A
不能犯と未遂犯を区別する基準についての次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】を検討し,正しいものを2個選びなさい。
【見 解】
行為当時に一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識した事情を基礎とし,一般人を基準に結果発生の危険性があるか否かの判断による。
【記 述】
1.この【見解】によれば,人を殺そうとして,客観的には死の結果を引き起こさない量の空気を人の血管内に注射した場合,殺人未遂罪の成立が認められる余地がある。
2.この【見解】によれば,結果発生の危険性の有無は,実際に存在した事実のほかにどのような事実が存在すれば結果が発生し得たかを事後的見地から検討し,そのような事実が行為時に存在し得る可能性の程度を考慮して判断することになる。
3.この【見解】によれば,人を殺そうとして,一般人ならば明らかに砂糖と分かる黒糖を毒薬と思い込んで紅茶に入れて飲ませた場合,この行為者の認識した事情を基礎として,一般人を基準に,この行為による死の結果発生の危険性の有無を判断することになる。
4.この【見解】によれば,行為者が特に認識した事情も基礎とされるので,結果を引き起こす特別な事情を認識している行為者による行為には結果発生の危険性が認められ,その事情を認識していない行為者による行為には結果発生の危険性が認められない場合がある。
5.この【見解】によれば,結果が発生しなかった原因が科学的に説明できる場合には,常に結果発生の危険性は否定されることになる。
解答 1,4
第2編 犯罪 第6章 共犯
KH1040H26-07 正犯・共犯 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.Aは,BがVを殺害しようとして拳銃で狙っているのを見て,Bの発射した弾丸がVに命中しなかった場合には自らVを射殺してBの目的を達成させようと考え,Bの知らない間に拳銃を持って付近に待機していたが,Bの発射した弾丸がVに当たってVが死亡した。この場合,Aには殺人既遂罪の幇助犯が成立する。
2.Aは,Bが賭博場を開くことを知って,これを手伝うつもりでBには告げずに客を誘って賭博場に案内して賭博をさせた。この場合,Aには賭博場開張図利罪の幇助犯が成立する。
3.Aは,BがVを殴打しようとしているときに,Bに気付かれずにVの足を押さえ付けたため,Bは,Vの顔面を殴打して顔面打撲の傷害を負わせることができた。この場合,Aには傷害罪の共同正犯が成立する。
4.Aは,Bにその夫Vを殺害させようと考えて,Bの知らない間に,Vの不倫の現場写真と拳銃をBの居宅のテーブルに置いておいたところ,それを見たBがVに対する殺意を抱き,その拳銃を発砲してVを殺害した。この場合,Aには殺人既遂罪の単独正犯が成立する。
5.Aは,BがVに致死量に満たない毒入りのコーヒーを渡したのを知って,Vを殺害しようと考え,Bの知らない間に,Bの入れた毒と併せて致死量となる量の毒をそのコーヒーに入れ,その後,Vがそのコーヒーを飲んで死亡した。この場合,Aには殺人既遂罪の単独正犯が成立する。
解答 2,5
KH1070H30-13K 共犯の従属性 A
共犯の従属性に関する次の【見解】に従って後記1から5までの各【記述】を検討した場合,正しいものを2個選びなさい。
【見 解】
共犯が成立するためには,正犯の行為が構成要件に該当し,違法性を具備することを要する。
【記 述】
1.甲が強盗犯人Aの妻乙を唆してAを蔵匿させた場合,甲には犯人蔵匿罪の教唆犯は成立し得ない。
2.甲が刑法第41条の刑事未成年者に当たる乙を唆して窃盗を行わせた場合,甲には窃盗罪の教唆犯は成立し得ない。
3.甲が乙にAが一人で居住する家屋に侵入するよう唆したところ,乙がAの承諾を得て平穏にその家屋に立ち入った場合,甲には住居侵入罪の教唆犯は成立し得ない。
4.甲が乙を唆して私文書を偽造させたが,乙に行使の目的がなかった場合,甲には私文書偽造罪の教唆犯は成立し得ない。
5.甲が乙に偽証するよう唆したところ,乙が証人として法律により宣誓した上,虚偽の陳述をしたが,証人尋問手続が終了した後,判決言渡し前に自白した場合,甲には偽証罪の教唆犯は成立し得ない。
解答 3、4
KH1090H28-12Y 共謀共同正犯 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.共謀共同正犯が成立するためには,実行行為を行わない者が実行行為者に対して指揮命令をすることが必要である。
2.共謀共同正犯が成立するためには,実行行為を行わない者が実行行為の具体的内容の詳細を認識していることが必要である。
3.共謀共同正犯が成立するためには,数人相互の間に,実行行為者の犯行の認識だけでなく,共同犯行の認識があることが必要である。
4.順次共謀の形式では,共謀共同正犯は成立しない。
5.共謀が明示的に行われなければ,共謀共同正犯は成立しない。
解答 3
KH1100H26-19 共謀共同正犯 A
次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。
【事 例】
暴力団組長である被告人は,被告人を警護するスワットと呼ばれる複数のボディーガードを配下に持ち,被告人が車両で移動する際には,拳銃及びそれに適合する実包(以下「拳銃等」という。)を携帯したスワットが被告人車両の前後の車両に乗車するなどして,被告人を警護することを常としていた。被告人は,本件犯行時,車両で移動したが,その際,拳銃等を携帯したスワットらが被告人車両の前後の車両に乗車し,被告人車両と隊列を組んで移動するなどして,被告人の警護に当たった。
【判 旨】
被告人は,スワットらに対して拳銃等を携行して警護するように直接指示を下さなくても,スワットらが自発的に被告人を警護するために本件拳銃等を所持していることを確定的に認識しながら,それを当然のこととして受け入れて認容し,そのことをスワットらも承知しており,被告人とスワットらとの間に拳銃等の所持につき黙示的に意思の連絡があった。そして,スワットらは被告人の警護のために本件拳銃等を所持しながら終始被告人の近辺にいて被告人と行動を共にしていたものであり,彼らを指揮命令する権限を有する被告人の地位と彼らによって警護を受けるという被告人の立場を併せ考えれば,実質的には,正に被告人がスワットらに本件拳銃等を所持させていたと評し得る。よって,被告人には,本件拳銃等の所持について,スワットらとの間で,銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪の共謀共同正犯が成立する。
【記 述】
1.【判旨】の考え方によれば,共謀共同正犯が成立するためには,実行行為者とその背後者の間に明示の意思連絡が常に必要なわけではない。
2.【判旨】の考え方によれば,およそ実行行為者とその背後者の間に意思連絡がある場合には,背後者について狭義の共犯が成立することはなく,共謀共同正犯が成立することとなる。
3.【判旨】の考え方によれば,共謀共同正犯が成立するためには,一般に,実行行為を行わない者に実行行為者に対する指揮命令権限が必要である。
4.【判旨】の考え方によれば,仮に【事例】において,現実には被告人がスワットらの拳銃等の所持を認識・認容していたのに,スワットらは,これらの所持に被告人が気付いていないと思っていた場合でも,被告人には共謀共同正犯が成立することとなる。
5.【判旨】では,被告人が犯行現場付近にいて犯行と密接な関係を保っていたことや被告人の組織内での地位が,被告人を共同正犯と評価する上での重要な事情として考慮されている。
解答 1,5
KH1110H26-13Y 共同正犯の成否 B
次の【事例】及び【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。
【事 例】
Xが甲に暴行を加えていたところにXの知人Yが通り掛かり,XとYが意思を通じ合った上で,その場で更に両名で甲に暴行を加えた。これらの暴行によって甲は傷害を負ったが,X及びYのどの暴行で傷害を負ったのかは不明であった。
【見 解】
本件では,Y加担前のXの暴行で甲に傷害が生じていた場合,YのXとの共謀やそれに基づく行為と甲の傷害との間に因果関係がない以上,X及びYに傷害罪の承継的共同正犯は成立しない。一般に,傷害の結果が,全く意思の連絡がない2名以上の者の同一機会における各暴行によって生じたことは明らかであるが,いずれの暴行によって生じたものであるかは確定することができない場合には,同時犯の特例として刑法第207条により傷害罪の共同正犯として処断される。また,共謀成立前後にわたる一連の暴行により傷害の結果が発生したことが明らかであるが,共謀成立前後のいずれの暴行により生じたものであるか確定することができない場合にも,一連の暴行が同一機会に行われたものである限り,刑法第207条が適用され,全体が傷害罪の共同正犯として処断されると解するのが相当である。X及びYは,傷害の結果につき同時傷害が成立し,全体につき傷害罪の共同正犯として処断すべきである。けだし,このような場合でも,単独犯の暴行によって傷害が生じたのか,共同正犯の暴行によって傷害が生じたのか不明であるという点で,やはりその傷害を生じさせた者を知ることができないときに当たることに変わりはないと解されるからである。
【記 述】
1.【見解】の考え方によれば,本件でY加担前のXの暴行以前にXY間の共謀が成立していたとしても,刑法第207条の適用がなければ,X及びYを傷害罪の共同正犯として処罰することはできない。
2.【見解】の考え方によれば,仮に本件で刑法第207条が適用されない場合には,X及びYのいずれも暴行罪の共同正犯として処罰することになる。
3.【見解】に対しては,「刑法第207条は,被害者が傷害を負っているにもかかわらず,誰にも傷害罪の責任を問えないことの不合理性を回避するための例外的な規定と考えるべきである。」との批判が可能である。
4.【見解】に対しては,「仮に本件でXY間に意思の疎通が一切なかった場合には刑法第207条が適用されてX及びYを傷害罪で処罰することとの均衡を失する。」との批判が可能である。
5.【見解】の考え方によれば,仮に本件の甲の傷害がY加担前のXの暴行か,Y加担後のXの暴行によって生じたことが明らかであるが,そのいずれであるかが不明という場合には,X及びYを刑法第207条の適用により傷害罪の共同正犯として処罰することができる。
解答 3
KH1120H29-19K 承継的共同正犯 A
学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,乙がVに対して暴行を加えていたところに通り掛かり,乙との間で共謀を遂げた上,乙と一緒にVに対して暴行を加えた。Vは,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行を加えられた際に1個の傷害を負ったが,Vの傷害が,甲の共謀加担前の乙の暴行により生じたのか,甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じたのかは,証拠上不明であった。
【会 話】
学生A.私は,共犯は自己の行為と因果関係を有する結果についてのみ責任を負うという見解に立ち,後行者は,共謀加担前の先行者の暴行により生じた傷害結果には因果性を及ぼし得ないと考えます。事例の場合,甲には①(a.暴行罪・b.傷害罪)の共同正犯が成立すると考えます。事例とは異なり,Vの傷害が甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じたことが証拠上明らかな場合,甲には傷害罪の共同正犯が②(c.成立する・d.成立しない)と考えます。
学生B.A君の見解に対しては,甲に対する傷害罪の成立範囲が③(e.狭く・f.広く)なり過ぎるとの批判が可能ですね。
学生C.私は,事例の場合には,同時傷害の特例としての刑法第207条が適用され,甲は,Vの傷害結果について責任を負うと考えます。その理由の一つとして,仮に甲が乙と意思の連絡なく,Vに暴行を加えた場合に比べ,事例における甲が④(g.不利・h.有利)に扱われることになるのは不均衡であると考えられることが挙げられます。
学生B.乙には,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行の際にVに生じた傷害結果についての傷害罪が成立するのであり,傷害結果について責任を負う者が誰もいなくなるわけではないということは,C君の⑤(i.見解に対する批判・j.見解の根拠)となり得ますね。
1.①a ②c ③e ④h ⑤i
2.①b ②d ③f ④g ⑤j
3.①a ②c ③f ④g ⑤j
4.①b ②c ③e ④h ⑤i
5.①a ②c ③e ④g ⑤j
解答 1
KH1121R03-03 承継的共同正犯 A
次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。
【事 例】
Xは,Aに電話を掛け,本来支払う必要のない違約金をAが支払わなければならない旨うそを告げた。Aはうそを見破ったが,警察官から,「だまされたふり作戦」(引き続き犯人側の要求どおりに行動しているふりをして犯人を現行犯逮捕しようとする捜査手法をいう。)に協力することを依頼された。Aはこれに応じ,現金を某所に送付するようにというXの指示に従ったふりをして,現金の代わりに模擬紙幣が入った荷物を同所に向けて発送した。その後,被告人は,Xから,報酬を支払う約束の下に荷物の受領を依頼され,詐欺の被害金を受け取る役割である可能性を認識しつつ,これを引き受け,「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに,上記場所で同荷物を受領し,警察官に現行犯逮捕された。
【判 旨】
被告人は,本件につき,Xによる欺罔行為がされた後,「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに,Xと共謀の上,本件を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与している。そうすると,「だまされたふり作戦」の開始の有無にかかわらず,被告人は,その加功前の欺罔行為を含めた本件につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。
【記 述】
1.【判旨】は,被告人に詐欺未遂罪の共同正犯が成立するには,前記荷物の受領行為自体に未遂犯として処罰すべき法益侵害の危険性が必要であり,その危険性の有無は,一般人が認識可能であった事情及び被告人が特に認識した事情に基づいて判断すべきという立場に立った上で,一般人は,Aが「だまされたふり作戦」に協力している事実を認識することが可能であったとの評価を前提としている。
2.【判旨】に対しては,Aがうそを見破っている以上,被告人が関与した時点では,詐欺罪が既遂に至る可能性がなく,被告人が法益侵害の危険性を惹起したとはいえないとの批判が考えられる。
3.【判旨】を前提とした場合,強盗罪における財物奪取行為のみに関与した者には,同罪の共同正犯の成立を認めることはできない。
4.【判旨】は,欺罔行為と財物受領行為の一体性を根拠として,財物受領行為のみに関与した者について,詐欺罪の承継的共同正犯を認めるとの立場と矛盾するものではない。
5.【判旨】によれば,被告人がXのAに対する欺罔行為の内容を認識していても,同欺罔行為を自己の犯罪の手段として積極的に利用する意思がない場合には,詐欺未遂罪の共同正犯の成立が否定される。
解答 2,4
KH1130H27-15K 結果的加重犯の共同正犯 A
結果的加重犯の共同正犯の成立が認められることを前提に,次の【事例】及び各【見解】に関する後記1から5までの各【記述】を検討し,誤っているものを2個選びなさい。
【事 例】
甲と乙は,丙に対する傷害を共謀し,共同して木刀で丙の手足を殴打していた際,甲は丙に対する殺意を抱き,木刀で丙の頭部を殴打し,丙はその殴打により脳挫傷で死亡した。なお,乙は,甲が殺意を抱いたことを知らなかった。
【見 解】
A説:共同正犯とは,数人が犯罪に至る行為過程を含めた行為を共同することであり,特定の犯罪を共同して実現する場合はもちろんのこと,単なる行為を共同して各自の意図する犯罪を実現する場合も,それぞれの行為について共同正犯の成立を認める。
B説:共同正犯とは,数人の者が共同して特定の犯罪を行うことであり,構成要件の間に重なり合いがあれば,そのうちのより重い犯罪について共同正犯の成立を認め,軽い犯罪の故意しかない者には,軽い犯罪の刑を科す。
C説:共同正犯とは,数人の者が共同して特定の犯罪を行うことであり,構成要件の重なり合う限度で軽い犯罪の共同正犯の成立を認める。
【記 述】
1.A説からは,甲と乙に殺人罪の共同正犯が成立するとの結論が導かれる。
2.B説からは,甲と乙に殺人罪の共同正犯が成立するとの結論が導かれる。
3.B説に対しては,犯罪の成立と科刑が分離するのは妥当でないと批判できる。
4.C説からは,甲と乙に傷害致死罪の共同正犯が成立し,甲には殺人罪の単独犯が成立するとの結論が導かれる。
5.C説に対しては,A説やB説から,共同正犯の成立範囲が広すぎると批判できる。
解答 1,5
KH1131R03-05 結果的加重犯の共同正犯 A
次の【事例】及び各【見解】に関する後記1から5までの各【記述】を検討した場合,誤っているものはどれか。なお,共同正犯に関する刑法第60条は,結果的加重犯にも適用されることを前提とする。
【事 例】
甲乙両名は,2人でVに向けて石を投げることにし,それぞれVに石を投げた。その際,甲には,傷害の故意しかなかったのに対し,乙には,未必的な殺意があった。両名が投げた石のうち,甲の投げた石がVの頭部に当たり,Vが死亡するに至った。
【見 解】
A説:共同正犯とは,数人が共同して特定の犯罪を行うことであり,構成要件の間に重なり合いがあれば,そのうちのより重い犯罪について共同正犯の成立を認め,軽い犯罪の故意しか有しない者には,軽い犯罪の刑を科す。
B説:共同正犯とは,数人が共同して特定の犯罪を行うことであり,構成要件の重なり合う限度で軽い犯罪の共同正犯の成立を認め,重い犯罪の故意を有する者には,共同正犯とは別に,その故意に応じた単独犯の成立を認める。
C説:共同正犯とは,数人が犯罪に至る行為過程を含めた行為を共同することであり,特定の犯罪を共同して実現する場合はもちろん,単なる行為を共同して各自の意図する犯罪を実現する場合も,それぞれの行為について共同正犯の成立を認める。
【記 述】
1.A説からは,甲と乙に殺人罪の共同正犯が成立するとの結論が導かれる。
2.A説に対しては,罪名と科刑が分離し,妥当でないとの批判がある。
3.B説に対しては,重い犯罪の故意を有する乙について,重い犯罪の単独犯として構成した場合には,自らの行為と死亡結果の因果性を欠くことから,殺人既遂罪の成立を認めることが困難となるとの指摘がある。
4.B説とC説とで,甲に成立する罪名は異ならない。
5.C説からは,甲と乙に傷害致死罪の共同正犯が成立するにとどまるとの結論が導かれる。
解答 5
KH1140H28-19 共犯 A
共犯に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲がAの殺害を乙に教唆したところ,乙はAの殺害を丙に教唆し,さらに,丙はAの殺害を丁に教唆し,丁がAを殺害した。甲には,殺人罪の教唆犯が成立する。
2.乙は,路上で,Aの頭部を殴って転倒させ,Aに脳挫傷の傷害を負わせたが,その直後に駆けつけた甲は,Aが乙の暴行によって倒れて苦しんでいることを知り,Aの抵抗が困難になっている状態を利用してAに暴行を加えようと考え,乙と意思を通じ,代わる代わるAの腹部を蹴り,腹部に打撲傷の傷害を負わせた。甲には,脳挫傷の傷害についても乙との傷害罪の共同正犯が成立する。
3.甲は,乙からAの殺害計画を打ち明けられ毒薬の入手を依頼されたことから,毒薬を購入して乙に渡したが,乙は,毒薬での殺害計画を変更し,Aを包丁で刺して殺害した。甲には,殺人予備罪の共同正犯が成立する。
4.甲と乙は,A方に強盗に入ることを計画し,それぞれ包丁を持ってA方に侵入し,Aを包丁で脅した上,室内を物色していたところ,家人B,Cに犯行を目撃され,甲はBに捕まったが,乙は逮捕を免れるためCの腕を包丁で切り付けて傷害を負わせた。甲には,住居侵入罪のほか強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
5.暴力団組員乙は,対立する暴力団組長Aを殺害することを決意し,誰にも犯行の決意を打ち明けることなく,小刀を持ってA方に向かったところ,乙の舎弟である甲は,乙の決意を察し,仮に乙がAから反撃されそうになった場合は,自分がAを殺害しようと考え,乙に何も告げることなく,拳銃を持ってA方付近に先回りして隠れていたが,乙は,玄関先に出てきたAを小刀で一突きして殺害した。甲には,乙の殺人罪の従犯が成立する。
解答 2,5
KH1146R02-13 幇助犯の成否 A
幇助犯の成否について,学生A及びBが次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑤までの( )内に後記アからオまでの【事例群】から適切な事例を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【会 話】
学生A. (①) に,乙に幇助犯は成立すると思うか。
学生B.幇助行為と結果との間に,物理的因果性も心理的因果性もないと思うので,乙に幇助犯は成立しないだろう。
学生A. (②) は,どうだろうか。
学生B.乙の行為の有無にかかわらず,生じた結果は同じだったと考えると,共犯行為と結果との間の因果関係に欠けるという結論になるようにも思えるね。
学生A.しかし,幇助犯は,正犯の実行が容易になり,結果の発生が促進されたという関係さえあれば,行為と結果との因果関係を認めるのが判例だろう。
学生B.なるほど。乙がいることで甲が安心でき,精神的に後押ししたという心理的因果性がありそうなので,乙に幇助犯の成立を認めるべきだね。
学生A. (③) は,どうだろうか。
学生B. (②) と同じ理由で,乙に幇助犯の成立が認められるように思う。ただ,教唆犯の成立を認める余地もあるかもしれないね。
学生A. (④) は,どうだろうか。
学生B.判例は片面的幇助を肯定する以上,乙に幇助犯が成立するんじゃないか。
学生A. (⑤) は,どうだろうか。
学生B.この場合,乙の立場を考えれば,幇助犯が成立すると思うよ。
【事例群】
ア.乙が,甲が空き巣に入ろうとしていることを知りながら,甲に黙ってV方玄関の施錠を外したところ,甲が玄関からV方に侵入し,空き巣に成功した場合
イ.乙が,空き巣に入ろうと決意していた甲から頼まれ,甲が空き巣に入る際,見張りをしていたところ,特に何も起きないまま,甲が空き巣に成功した場合
ウ.甲が万引きをしようとしていることを目撃した店員乙が,甲と意思を通じることなく,甲の万引きを黙認し,甲が万引きに成功した場合
エ.甲が空き巣に入ることを知り,乙が甲に黙って見張りをしていたが,特に何も起きないまま,甲が空き巣に成功した場合
オ.乙が空き巣に使うことができるものとしてV方の合鍵を甲に渡したため,甲がV方に行ったが,無施錠であったため合鍵を使わず,空き巣に成功した場合
1.①イ ②エ ③ア ④ウ ⑤オ
2.①イ ②エ ③オ ④ア ⑤ウ
3.①エ ②イ ③ウ ④オ ⑤ア
4.①エ ②イ ③オ ④ア ⑤ウ
5.①エ ②イ ③オ ④ウ ⑤ア
解答 4
KH1160H28-03K 間接従犯 A
次の【事例】に関する後記1から5までの各記述のうち,甲に窃盗罪の従犯の成立を肯定する論拠となり得ないものはどれか。
【事 例】
甲は,乙又は乙の友人が窃盗罪を犯そうとしていることを知り,その手助けのため,乙に対し,同罪の遂行に必要な道具を貸したところ,さらに,乙はその道具を友人丙に貸し,丙がこれを用いて同罪を犯した。
なお,丙には同罪の正犯が成立し,乙にはその従犯が成立するものとする。
1.従犯には独立した犯罪性が認められる。
2.従犯の幇助には,教唆者を教唆した者については正犯の刑を科すとする刑法第61条第2項のような規定がない。
3.共犯は修正された構成要件に該当する行為であるところ,従犯もその構成要件においては「正犯」となる。
4.幇助は正犯を容易にすることであるという定義からすると,幇助行為が直接的になされたか,間接的になされたかは必ずしも問われない。
5.教唆犯に対する幇助行為は従犯として処罰される。
解答 2
KH1200H25-07 共犯と身分 A
刑法第65条に関する次のⅠないしⅢの各【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。
【見 解】
Ⅰ.刑法第65条第1項は真正身分犯の成立及び科刑についての規定であり,同条第2項は不真正身分犯の成立及び科刑についての規定である。
Ⅱ.刑法第65条第1項は身分が違法性に関係する場合についての規定であり,同条第2項は身分が責任に関係する場合についての規定である。
Ⅲ.刑法第65条第1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定であり,同条第2項は不真正身分犯の科刑についての規定である。
【記 述】
1.Ⅰの見解に対しては,真正身分犯が身分を連帯的に作用させ,不真正身分犯が身分を個別的に作用させることの実質的根拠が明らかでないとの批判がある。
2.Ⅱの見解に対しては,身分が違法性に関係する場合と身分が責任に関係する場合を区別することは困難であるとの批判がある。
3.Ⅲの見解は,刑法第65条第1項が「共犯とする」と規定し,同条第2項が「通常の刑を科する」と規定していることを根拠の一つとしている。
4.Ⅰの見解に立った場合,甲が愛人である乙を唆して,乙が介護していた乙の老母の生存に必要な保護をやめさせた事例では,甲には保護責任者遺棄罪の教唆犯が成立し,科刑は単純遺棄罪の刑となる。
5.Ⅲの見解に立ちつつ,常習賭博罪における常習性が身分に含まれると解した場合,賭博の非常習者である甲が賭博の常習者乙を唆して,乙に賭博をさせた事例では,甲には常習賭博罪の教唆犯が成立し,科刑は単純賭博罪の刑となる。
解答 4
KH1210H27-13 事後強盗罪と共犯 A
教授Xと学生Yは,事後強盗罪の共犯に関する事例について後記【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から④までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【会 話】
教授X.窃盗犯人甲は,自己を逮捕しようと追い掛けてきた被害者Vに対し,逮捕を免れる目的で,Vの反抗を抑圧する程度の暴行を加えました。甲にはどのような犯罪が成立しますか。
学生Y.甲には事後強盗罪が成立します。
教授X.それでは,甲がVから追い掛けられている時に,甲の知人乙が,偶然通り掛かり,その状況から甲がVの物を盗んだのだと認識し,甲と意思を通じて,甲の逮捕を免れさせる目的で,Vに対し,Vの反抗を抑圧する程度の暴行を加えた場合,乙の共犯としての罪責はどうなりますか。
学生Y.事後強盗罪を真正身分犯と考え,刑法第65条についての判例の立場に立てば,乙には①(a.刑法第65条第1項により事後強盗罪・b.刑法第65条第2項により暴行罪)が成立します。
教授X.事後強盗罪を不真正身分犯と考える立場では,乙の共犯としての罪責はどうなりますか。
学生Y.事後強盗罪を不真正身分犯と考えた上で,刑法第65条第1項は構成的身分及び加減的身分を通じて,身分犯における共犯の成立の規定であり,同条第2項は加減的身分について刑の個別作用を定めたものと解する立場に立てば,乙には②(c.刑法第65条第1項により事後強盗罪が成立するが,同条第2項により暴行罪の刑を科す・d.刑法第65条第1項と同条第2項の双方を適用して,暴行罪が成立する)ことになります。
教授X.事後強盗罪を身分犯と考えない立場では,乙の共犯としての罪責はどうなりますか。
学生Y.事後強盗罪を窃盗と暴行の結合犯と考える立場もあります。この立場に立ち,乙に事後強盗罪が成立するという考え方は,乙の承継的共同正犯を③(e.肯定・f.否定)しています。
教授X.事後強盗罪を結合犯と考える立場に対しては,どのような批判がありますか。
学生Y.④(g.窃盗の既遂・未遂によって事後強盗罪の既遂・未遂が決まることを説明できない・h.窃盗に着手しただけで事後強盗罪の未遂を肯定することになってしまうのではないか)という批判があります。
1.①a ②d ③e ④g
2.①b ②d ③f ④h
3.①a ②c ③e ④h
4.①b ②d ③f ④g
5.①a ②c ③e ④g
解答 3
KH1220H30-15 身分犯と共犯 A
学生A,B及びCは,身分犯の共犯に関して,次の【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から③までの( )内から適切なものを選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【会 話】
学生A.私は,刑法第65条第1項は構成的身分の連帯作用を,同条第2項は加減的身分の個別作用を定めたものであると考えます。そして,財物を占有していない甲が,その財物を業務上占有する乙を教唆して,その財物を横領させた事案では,甲には,業務上横領罪の教唆犯が成立すると考えます。
学生B.A君は,業務上横領罪における「業務」や「占有」という点について,①(a.「業務上占有」していることが,非占有者との関係で構成的身分・b.「占有」は構成的身分であり,「業務」は加減的身分)と考えているのですね。私は,刑法第65条第1項は「共犯とする」と規定し,身分犯における共犯の成立について定めたもの,同条第2項は「通常の刑を科する」と規定し,非身分者について刑の個別作用を定めたものであると考えています。同じ事案につき,私の立場からすると,甲には,②(c.単純横領罪の教唆犯が成立し,同罪の刑が科せられる・d.業務上横領罪の教唆犯が成立し,同罪の刑が科せられる・e.業務上横領罪の教唆犯が成立し,単純横領罪の刑が科せられる)ことになります。
学生C.B君は,遺失物等横領罪の刑は「通常の刑」ではないと考えているのですね。私は,刑法第65条第1項は行為の違法性に関係する身分,すなわち違法身分の連帯作用を,同条第2項は行為者の責任に関係する身分,すなわち責任身分の個別作用を規定したものであると考えます。私の見解に立ち,占有者という身分を違法身分,業務者という身分を責任身分と考えた場合,甲には,③(f.単純横領罪の教唆犯が成立する・g.業務上横領罪の教唆犯が成立する・h.業務上横領罪の教唆犯が成立し,単純横領罪の刑が科せられる)ことになります。
1.①a ②d ③h
2.①a ②e ③f
3.①a ②e ③h
4.①b ②c ③f
5.①b ②e ③g
解答 2
KH1230R01-19K 身分犯と共犯 A
身分犯の共犯に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものを2個選びなさい。
1.刑法第65条の身分には一時的な心理状態は含まれないので,目的犯に当たる犯罪行為を,当該目的を有する者と有しない者が共同して行った場合,同条の適用の余地はない。
2.刑法第65条第2項は加減的身分のない者が当該身分のある者に加功した場合について規定するものであるので,賭博の常習性を有する者が有しない者に賭博を教唆した場合,同項の適
用の余地はない。
3.非占有者が業務上の占有者による横領行為に加功した場合,当該非占有者には,刑法第65条第1項の適用により業務上横領罪の共犯が成立し,同条第2項の適用により単純横領罪の刑
が科される。
4.刑法第65条の身分は,一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態の全てを指称するものであるので,責任能力のある者が刑事未成年者を教唆して犯罪を行わせ
た場合,同条が適用される。
5.自首による刑の減免は一身的な事由であるので,共犯者のうち一人に自首が成立する場合,刑法第65条第1項の適用はなく,その減免の効果は自首した者以外には及ばない。
解答 3,5
KH1231R03-15K 刑法第65条 B
刑法第65条について,学生A,B及びCが次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑪までの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。なお,①から⑪までの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。
【会 話】
学生A.私は,「違法の連帯性,責任の個別性」の原則を強調する立場から,(①)と考えます。
学生B.A君の見解には,(②)との批判がありますね。私は,刑法第65条第1項が「共犯とする」,同条第2項が「通常の刑を科する」とそれぞれ規定していることに着目し,(③)
と考えます。
学生C.ただ,B君の見解には,(④)との批判がありますね。刑法第65条第1項が身分によって構成すべき犯罪を問題とし,同条第2項が身分によって刑の軽重がある犯罪を問題と
していることに着目し,(⑤)と考えるべきではないかな。
学生B.でも,C君の見解にも,(⑥)との批判がありますね。ところで,C君の見解だと,甲が知人の乙を唆して乙の嬰児の生存に必要な食事をさせなかった事例では,甲の罪責はど
うなりますか。
学生C.私は,刑法第217条(遺棄)と同法第218条(保護責任者遺棄等)の「遺棄」とは,行為者と要扶助者との間の場所的離隔を生じさせることをいい,同法第217条では作為
による遺棄のみが処罰されていると考え,また,同法第218条の「必要な保護をしなかった」とは,場所的離隔を生じさせることなく要扶助者を不保護状態に置くことをいうと
考えます。そうすると,同条の罪のうち,作為による保護責任者遺棄罪は(⑦)犯,保護責任者不保護罪は(⑧)犯になるため,乙とその嬰児との間に場所的離隔が生じていない
本件では,甲には(⑨)と考えます。
学生A.しかし,C君の見解では,甲が乙を唆して乙の嬰児を山に捨てさせた事例では,甲に(⑩)ため,不均衡な結論になるのではないかな。私は,保護責任者という身分は,必要
な保護をしなかったことの違法性を基礎付け,遺棄の違法性を加重するため,(⑪)と考えます。したがって,私の見解からは,いずれの事例でも,甲には(⑨)と考えます。
【語句群】
a.刑法第65条第1項は真正身分犯の成立及び科刑についての規定であり,同条第2項は不真正身分犯の成立及び科刑についての規定である
b.刑法第65条第1項は身分が違法性に関係する場合についての規定であり,同条第2項は身分が責任に関係する場合についての規定である
c.刑法第65条第1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定であり,同条第2項は不真正身分犯の科刑についての規定である
d.犯罪の成立と科刑が分離されることになる
e.真正身分犯が身分を連帯的に作用させ,不真正身分犯が身分を個別的に作用させることの実質的根拠が明らかでない
f.身分が違法性に関係する場合と責任に関係する場合を区別することは困難
g.責任身分 h.違法身分 i.真正身分 j.不真正身分
k.刑法第218条の罪の教唆犯が成立する
l.刑法第217条の罪の教唆犯が成立する
1.①b ⑤a ⑨k 2.②d ⑥e ⑪h 3.②f ⑦i ⑧j 4.③c ④d ⑪g 5.③c ⑥f ⑩l
解答 1 ①b ②f ③c ④d ⑤a ⑥e ⑦j ⑧i ⓽k ⑩l ⑪h
KH1250H24-02K 共犯一般の区別 A
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,甲に( )内の犯罪の共同正犯が成立する場合には1を,教唆犯又は幇助犯が成立する場合には2を,間接正犯が成立する場合には3を選びなさい。
ア.甲は,甲の所属する暴力団事務所にVを連行し,同事務所において3日間,Vを逃走できないように見張って監禁し,その後,同じ暴力団に所属する乙に対して「お前が俺に代わって見張れ。」と言った。乙は,これを了承し,4日目から前記事務所においてVを逃走できないように見張って監禁した。5日目に乙が居眠りをした隙に,Vは,前記事務所の窓から外に飛び降りて逃げ出したが,飛び降りた際,右足首を骨折した。(監禁致傷罪)
イ.甲は,乙が自宅で賭博場を開張して利益を得ていることを知り,乙の役に立とうと考え,乙に連絡することなく,乙の開張する賭博場にA及びBを誘引し,賭博をさせた。(賭博場開張図利罪)
ウ.甲は,常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせていた実子の乙(13歳)に対し,Vが管理するさい銭箱から現金を盗んでくるように命じ,乙は,是非善悪の識別能力及び識別に従って行動を制御する能力を有していたが,甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し,意思を抑圧された状態で,前記さい銭箱から現金を盗んだ。(窃盗罪)
エ.甲は,知人乙から,交際相手であるVを殺害したいので青酸カリを入手してほしいと依頼され,自らもVに恨みを抱いていたことから,青酸カリを準備して乙に交付した。乙は,甲から青酸カリを受領した後,実行行為に出る前にV殺害を思いとどまり,警察署に出頭した。(殺人予備罪)
オ.甲は,乙から,乙がV方に強盗に入る際に外で見張りをしてほしいと頼まれ,利益を折半する約束でこれを承諾し,乙と共にV方に赴いた。甲がV方の外で見張りをしている間に,乙はV方に侵入した。その後,甲は,不安になり,携帯電話で乙に「やっぱり嫌だ。俺は逃げる。」と告げた上,その場から逃走した。乙は,甲の逃走を認識した後,V方内にいたVを発見し,同人に包丁を突き付けてその反抗を抑圧した上,現金を強取した。(強盗罪)
解答 ア1,イ2,ウ3,エ1,オ1
KH1270H29-15K 教唆犯と錯誤 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.甲が乙に対し,深夜の公園で待ち伏せしてAから金品を喝取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,深夜の公園でAを待ち伏せしたが,偶然通り掛かったBをAと誤認してBから金品を喝取した。乙は,人違いに気付き,引き続きAを待ち伏せして,通り掛かったAから金品を喝取しようとしてAを脅迫したが,Aに逃げられてしまい金品を喝取することができなかった。甲にはAに対する恐喝未遂罪の教唆犯のみが成立する。
2.甲が乙に対し,Aをナイフで脅してAから金品を強取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aをナイフで脅したが,その最中に殺意を抱き,Aの腹部をナイフで刺してAに傷害を負わせ,Aから金品を強取したものの,Aを殺害するには至らなかった。甲には強盗罪の教唆犯が成立するにとどまる。
3.甲が乙に対し,留守宅であるA方に侵入して金品を窃取するように教唆したところ,乙は,その旨決意したが,B方をA方と誤認してB方に侵入し,その場にいたBから金品を強取した。甲にはB方への住居侵入罪及びBに対する窃盗罪の教唆犯が成立する。
4.甲が乙に対し,現住建造物であるA家屋に放火するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,A家屋に延焼させる目的で,A家屋に隣接した現住建造物であるB家屋に放火したが,B家屋のみを焼損し,A家屋には燃え移らなかった。甲にはA家屋に対する現住建造物等放火未遂罪の教唆犯のみが成立する。
5.甲は,土建業者AがB市発注予定の土木工事を請け負うためB市役所土木係員乙に現金を供与しようと考えていることを知り,乙に対し,Aに工事予定価格を教える見返りとしてAから現金を受け取り,Aに工事予定価格を教えるように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aとの間で,Aに工事予定価格を教える旨約束して,Aから現金100万円を受け取ったが,その後,工事予定価格を教えなかった。甲には加重収賄罪の教唆犯が成立する。
解答 3
KH1271R02-05K 共犯と錯誤 A
共犯と錯誤に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。
ア.甲及び乙がAに対する暴行を共謀したが,Aの態度に激高した甲が殺意をもってAを殺害した場合,甲及び乙に殺人罪の共同正犯が成立するが,乙は傷害致死罪の刑で処断される。
イ.甲及び乙がAに対する強盗を共謀したが,その強盗の機会に,甲が過失によってAに傷害を負わせた場合,甲及び乙に強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
ウ.甲及び乙が共謀して,公務員Aに虚偽の内容の公文書の作成を教唆することにしたが,乙はAを買収することに失敗したため,甲に無断で,Bに公文書を偽造することを教唆し,Bが公
文書を偽造した場合,甲に虚偽公文書作成罪の教唆犯が成立する。
エ.甲が乙にA方に侵入して金品を窃取するように教唆して,その犯行を決意させたが,乙はA方と誤認して隣のB方に侵入してしまい,B方から金品を窃取した場合,甲にB方への住居侵入罪及びBに対する窃盗罪の教唆犯は成立しない。
オ.甲が乙の傷害行為を幇助する意思で,乙に包丁を貸与したところ,乙が殺意をもってその包丁でAを刺殺した場合,甲に殺人罪の幇助犯が成立し,傷害致死罪の幇助犯は成立しない。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個
解答 2 ア×,イ〇,ウ×,エ×,オ×
KH1280H25-17K 共同正犯と間接正犯 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(問改)
1.甲は,生活費欲しさから強盗を計画し,12歳の長男乙に対し,Vから現金を強取するよう指示した。乙は,甲の指示に従い,Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か,甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず,甲には強盗罪の間接正犯が成立する。
2.甲は,通常の判断能力がないVの殺害を計画し,Vに対し,首をつっても仮死状態になるだけであり,必ず生き返るとだまして,Vに首をつらせて窒息死させた。甲には自殺関与罪が成立する。
3.甲と乙は,自分たちのことを日頃ばかにするVを懲らしめてやろうと思い,Vに傷害を負わせる旨共謀した。そして,甲と乙は,それぞれ,Vに対し,日頃の恨みを言いながら,その身体を殴り付けた。Vは,これに応答して甲らを罵った。すると,乙は,Vの発言に腹を立て,殺意をもって,隠し持っていたナイフでVを刺し殺した。乙に殺人罪が成立する場合,甲には,Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する。
4.甲は,V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は,自分も窓ガラスを割りたいと思い,甲に気が付かれないよう,V宅に石を投げ付け,甲が割った窓ガラスとは別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。
5.女性である甲は,甲の男友達である乙との間で,乙がVを強制性交する旨共謀した。その後,甲がVを誘い出してVの体を押さえ付け,乙がVを強制性交した。乙に強制性交等罪が成立する場合でも,甲には強制性交等罪の共同正犯は成立しない。
解答 4
KH1290H26-17K 間接正犯と教唆犯 A
教授Xと学生Yは,次の【事例】における甲の罪責について後記【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記
1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,Vが宅地造成地に駐車して所有・占有していたパワーショベルを盗もうと思い,重機販売業者の乙に前記パワーショベルを同所から搬出させた。
【会 話】
教授X.【事例】において,甲が,事情を全く知らない乙に対し,前記パワーショベルは甲の所有・占有である旨説明して売却し,乙に前記パワーショベルを搬出させたという事実関係があるとしましょう。甲の罪責はどうなりますか。
学生Y.パワーショベルを搬出したのは乙ですが,乙は,事情を全く知らず,規範的障害のないままパワーショベルを搬出したので,乙には窃盗罪の①(ア.故意・イ.法益侵害)がないと思います。甲は,乙を道具のように利用してVのパワーショベルを盗んだので,窃盗罪の間接正犯が成立すると思います。
教授X.甲には,いつの時点で窃盗罪の実行の着手が認められるのですか。
学生Y.私は,実行の着手は法益侵害の具体的危険が発生した時に認められると考えた上で,間接正犯の場合には,被利用者の行為開始時に実行の着手が認められると考えます。したがって,②(ウ.乙が甲との間でパワーショベルを購入する契約を締結した時に・エ.乙がパワーショベルを搬出する作業を開始した時に),甲には実行の着手が認められると思います。
教授X.では,【事例】において,甲が,パワーショベルを盗むため,事情を知らない乙に先ほどと同様の説明をして売却したが,その後,乙が,宅地造成地に向かう途中で甲の計画にたまたま気付き,自分のものにするつもりでパワーショベルを盗むことを自ら決意して搬出したという事実関係があるとしましょう。先ほどの場合と何か違ってきますか。
学生Y.乙は,盗むことを自ら決意してパワーショベルを搬出したのですから,乙には窃盗罪の③(オ.正犯・カ.幇助犯)が成立します。そして,乙には,パワーショベルを搬出する前に甲の計画を知って規範的障害が認められるので,もはや甲の道具とはいえません。したがって,乙が搬出した行為を甲の実行行為と評価することはできません。
教授X.その場合の甲の罪責はどうなりますか。
学生Y.甲は,間接正犯を犯す意思で,客観的には乙に窃盗を決意させたので,甲には,窃盗既遂罪の④(キ.幇助犯・ク.教唆犯)が成立すると思います。
教授X.これはY君の考え方とは異なるのですが,間接正犯の実行の着手時期につき,利用者が被利用者を道具として利用した時点とする考え方に立った場合,結論はどのように変わりますか。
学生Y.甲には,窃盗既遂罪の④(キ.幇助犯・ク.教唆犯)のほかに,⑤(ケ.窃盗未遂罪・コ.窃盗既遂罪)の間接正犯が成立すると思います。
1.①ア ②エ ③オ ④ク ⑤ケ
2.①イ ②ウ ③オ ④キ ⑤コ
3.①ア ②エ ③オ ④ク ⑤コ
4.①イ ②ウ ③カ ④キ ⑤コ
5.①ア ②エ ③カ ④キ ⑤ケ
解答 1
KH1300R01-03 承継的共同正犯 B
承継的共犯に関する次の各【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
【見 解】
A.共犯は,一個の犯罪を共同して行うものであり,後から犯罪に加担した者も,情を知って一罪の一部に加担した以上,犯罪全体について責任を負う。
B.共犯は,自己の行為と因果性がある範囲においてのみ責任を負うべきであって,自らが生じさせていない過去の事実について責任を負うべきではない。
C.先行者が生じさせた結果は承継しないが,先行者が生じさせた犯行を容易にする状態が存在する場合に,後行者がその状態を利用して犯罪を実現したときには,後行者も犯罪全体につい
て責任を負う。
【記 述】
ア.Aの見解に対しては,何を一罪として扱うかは,立法政策によって決まるため,一罪性に決定的な意味を認めるのは適切ではないとの批判が可能である。
イ.Aの見解は,共犯の処罰根拠に関する因果的共犯論に基づいて主張されるものである。
ウ.Bの見解に対しては,複数の行為からなる犯罪で後行行為だけでは処罰されない場合に,処罰の間隙が生じるとの批判が可能である。
エ.Cの見解に対しては,単なる憂さ晴らしにより他人に暴行を加えて抗拒不能状態にした後,財物奪取の意思が生じ,その状態を利用して同人から財物を奪取した場合,一般に強盗罪が成立しないとされていることとの比較から問題があるとの批判が可能である。
オ.甲がVに暴行を加えた後,なお強く抵抗するVに乙が甲と共謀の上で暴行を加え,Vが負傷したが,その傷害結果が共謀成立の前後いずれの暴行によって生じたかを特定できない場合,Cの見解からは,乙には傷害罪の承継的共犯は成立しないことになるのが自然であるが,この帰結は刑法第207条との関係で不均衡であるとの批判が可能である。
解答 ア1,イ2,ウ1,エ1,オ1
第2編 犯罪 第7章 罪数
KH1360H24-05 罪数 A
次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し,成立する犯罪が【 】内の罪数関係にある場合には , 1を 【 】内の罪数関係にない場合には2を選びなさい 。(特別法犯は除く。)
ア.公務員が,電化製品を盗品であると知りながら,賄賂として収受した 。【観念的競合】
イ.連日,駅前で募金箱を持ち,真実は募金を難病の子供のために使うつもりはなく,自己のために費消するつもりであるのにそれを隠して ,「難病の子供を救うため,募金をお願いします 。」と連呼し,多数回にわたり,不特定多数の通行人からそれぞれ少額の金員をだまし取った 。【 包括一罪】
ウ.他人のキャッシュカードを盗み,これを使って銀行の現金自動預払機から預金を引き出した 。【併合罪】
エ.自動車を盗み,これを売却した。【牽連犯】
解答 1
KH1370H24-08Y 罪数 A
次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し,成立する犯罪が【 】内の罪数関係にある場合には , 1を 【 】内の罪数関係にない場合には2を選びなさい 。(特別法犯は除く。)
ア.公務員が,電化製品を盗品であると知りながら,賄賂として収受した 。【観念的競合】
イ.連日,駅前で募金箱を持ち,真実は募金を難病の子供のために使うつもりはなく,自己のために費消するつもりであるのにそれを隠して ,「難病の子供を救うため,募金をお願いします 。」と連呼し,多数回にわたり,不特定多数の通行人からそれぞれ少額の金員をだまし取った 。【 包括一罪】
ウ.他人のキャッシュカードを盗み,これを使って銀行の現金自動預払機から預金を引き出した 。【併合罪】
エ.自動車を盗み,これを売却した。【牽連犯】
解答 ア1,イ1,ウ1,エ2
KH1380H25-09Y 監禁罪と恐喝罪の罪数関係 A
次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。
【見 解】
恐喝の目的で人を監禁し,その監禁中に同人を脅迫して現金を喝取した場合,監禁罪と恐喝罪が成立し,両者は併合罪の関係になる。
【記 述】
1.この見解は,監禁行為と恐喝行為とが社会的に見て一個の行為であると考えている。
2.この見解は,監禁が恐喝の手段として用いられることが類型的に予定されることを根拠としている。
3.この見解は,数個の犯罪の牽連性を,行為者の主観によって判断すべきであると考えている。
4.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における逮捕罪と監禁罪の罪数関係と同様に考えている。
5.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における監禁罪と殺人罪の罪数関係と同様に考えている。
解答 5
KH1390H26-11 罪数 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.甲は,乙に対し,丙の日本刀を盗んでくれば高値で買ってやると申し向け,乙が盗んできた日本刀を買い受けた。甲には,窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し,これらは併合罪となる。
2.甲は,乙が強盗を行うつもりであることを知りながら,乙に模造拳銃1丁を貸し与えたところ,乙は,2店のコンビニエンスストアで,同模造拳銃を使ってそれぞれ強盗を行った。甲には,2個の強盗幇助罪が成立し,これらは併合罪となる。
3.甲は,乙を殺害する目的で乙が居住する家に侵入し,乙及び偶然その場に居合わせた丙をそれぞれ殺害した。甲には,乙に対する住居侵入罪及び殺人罪が成立し,これらは牽連犯となり,これと丙に対する殺人罪が併合罪となる。
4.甲は,強盗の目的で,路上を連れ立って歩いていた乙及び丙に対し,包丁の刃先を両名の方に向けながら「お前ら金を出せ。出さないと殺すぞ。」と言って脅迫し,両名からそれぞれ現金を奪った。甲には,2個の強盗罪が成立し,これらは併合罪となる。
5.甲は,恐喝の手段として乙を監禁し,乙から現金を喝取した。甲には,監禁罪及び恐喝罪が成立し,これらは併合罪となる。
解答 1,5
KH1400H27-17K 罪数 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。
1.甲は,酒に酔った状態で,自動車を無免許で運転した。甲には酒酔い運転の罪と無免許運転の罪が成立し,これらは観念的競合となる。
2.甲及び乙は,対立する暴走族の構成員を襲撃することを共謀し,同構成員であるX,Y及びZに対し,殴る蹴るの暴行を加え,それぞれに傷害を負わせた。甲及び乙にはそれぞれ3個の傷害罪が成立し,これらは併合罪となる。
3.甲は,乙がX及びYを殺害するつもりでいることを知ったことから,凶器としてナイフ1本を乙に手渡したところ,乙は,同ナイフを用いてX及びYを殺害した。甲には2個の殺人幇助の罪が成立し,これらは併合罪となる。
4.甲は,離婚した元妻Xを殺害する目的で,深夜,Xの母親Y宅に侵入し,その場にいたX,Y及びYの子Zを順次殺害した。甲には1個の住居侵入罪と3個の殺人罪が成立するが,住居侵入罪と各殺人罪は牽連犯となり,全体が科刑上一罪となる。
5.甲は,身の代金を得る目的でXを拐取し,更にXを監禁し,その間にXの近親者に対して身の代金を要求した。甲には身の代金目的拐取罪,拐取者身の代金要求罪及び監禁罪が成立し,身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪は牽連犯となり,これらの各罪と監禁罪は併合罪となる。
解答 3
KH1410H28-07 罪数 A
罪数に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.甲は,偽造された1万円札を使って価格1万円の商品をだまし取ろうと考え,事情を知らない商店の店員Aに対し,同商品の購入を申し込み,代金として同1万円札を渡して,Aから同商品の交付を受けた。甲には,詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,これらは観念的競合となる。
2.甲は,Aを監禁するために逮捕し,それに引き続きAを監禁した。甲には,逮捕罪と監禁罪が成立し,これらは牽連犯となる。
3.甲及び乙は,共同でAの身体に危害を加える目的で,凶器として用いる鉄パイプをそれぞれ準備して集合し,その後,その目的を遂げるため,鉄パイプで代わる代わるAの身体を殴打して傷害を負わせた。甲には,凶器準備集合罪と傷害罪が成立し,これらは牽連犯となる。
4.甲は,Aを監禁してAから金品を喝取しようと考え,Aをビルの一室に閉じ込めて監禁し,その上で,同室内において,監禁により畏怖していたAに対し,金品の交付を要求しながら脅迫して畏怖させ,Aから金品を脅し取った。甲には,監禁罪と恐喝罪が成立し,これらは牽連犯となる。
5.甲は,AがB銀行に預け入れていた預金を不正に払い戻して金銭を得る目的で,Aから,B銀行が発行したA名義の預金通帳を窃取した上,B銀行の窓口において,行員に対し,Aに成り済まして,同預金通帳を使って預金を不正に払い戻して金銭を得た。甲には,窃盗罪と詐欺罪が成立し,これらは併合罪となる。
解答 5
KH1420R01-07 罪数 A
罪数に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.甲は,乙を恐喝して乙から財物の交付を受けるとともに財産上の利益を得た。甲には,包括して1個の恐喝罪が成立する。
2.甲は,乙ら3名をその面前で同時に恐喝して3名全員からそれぞれ財物を出させ,その3名分の財物の交付を乙から一括して受けた。甲には,3個の恐喝罪が成立し,これらは併合罪となる。
3.甲は,乙を恐喝して乙から財物の交付を受け,その恐喝の手段として用いられた暴行により乙に傷害を負わせた。甲には,恐喝罪と傷害罪が成立し,これらは併合罪となる。
4.甲は,恐喝の手段として乙を監禁し,その間に乙を脅迫して乙から財物の交付を受けた。甲には,監禁罪と恐喝罪が成立し,これらは併合罪となる。
5.甲は,乙が窃取した財物と知りながら,乙を恐喝してその財物の交付を受けた。甲には,盗品等無償譲受け罪と恐喝罪が成立し,これらは併合罪となる。
解答 1,4
KH1421R02-15K 罪数 A
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,火災保険金をだまし取る目的で,同居する家族が不在の間に,自宅に放火して焼失させ,その後,火災原因を偽って火災保険金の支払を受けた。この場合,甲には,現住建造物等放火罪及び詐欺罪が成立し,これらは併合罪となる。
2.甲は,強盗目的で,乙方に侵入した上,乙及び丙をそれぞれ殴打して緊縛し,その際,両名に怪我を負わせ,乙が管理していた現金100万円を強取した。この場合,甲には,住居侵入罪及び1個の強盗致傷罪が成立し,これらは牽連犯となる。
3.甲は,乙を教唆して丙占有の自動車を盗むことを決意させ,乙にこれを実行させた後,乙から頼まれて,同自動車を預かり保管した。この場合,甲には,窃盗教唆罪及び盗品等保管罪が成立し,これらは牽連犯となる。
4.甲は,乙を殺害して金品を強取しようと考え,甲の自宅内で乙を殺害して現金を強取した後,引き続き,その死体を自宅の床下に埋めて遺棄した。この場合,甲には,強盗殺人罪及び死体遺棄罪が成立し,これらは併合罪となる。
5.甲は,乙名義で預金口座を開設する目的で,同人に成り済まし,同人名義で口座開設申込書を作成し,これを銀行の係員に提出して,乙名義の預金通帳の交付を受けた。この場合,甲には,有印私文書偽造罪,同行使罪及び詐欺罪が成立し,これらは牽連犯となる。
解答 2,3
KH1422R03-07 罪数 B
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.甲は,情を知らない法務局の担当登記官Aに対し,虚偽の申立てをして登記簿の磁気ディスクに不実の記録をさせた後,当該記録の内容を閲覧可能な状態にした。この場合,甲には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立し,これらは牽連犯となる。
イ.甲は,乙がA及びBをバットで順次殴打して両名を負傷させた際,これに先立ち,乙の意図を知りながら,乙にバットを手渡してそれらの犯行を幇助した。この場合,甲には,A及びBに対する2個の傷害罪の幇助犯が成立し,これらは観念的競合となる。
ウ.甲は,A名義の預金口座から現金を引き出す目的で,AからA名義のキャッシュカードをだまし取るとともに,暗証番号を聞き出し,銀行の現金自動預払機で同キャッシュカードを使用して現金を引き出した。この場合,甲には,詐欺罪及び窃盗罪が成立し,これらは牽連犯となる。
エ.甲は,強制性交の目的でA宅に侵入したが,Aが不在であったため目的を遂げられなかった。その後,甲は,居間に置かれていたA所有の腕時計を発見し,窃取しようと考えてこれを持ち去った。この場合,甲には,住居侵入罪及び窃盗罪が成立するが,これらは併合罪となる。
オ.甲は,身の代金を得る目的でAを拐取した後,甲の自宅に監禁し,その間にAの実父Bに対し,電話で身の代金を要求した。この場合,甲には,身の代金目的拐取罪,監禁罪及び拐取者身の代金要求罪が成立し,身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪が牽連犯となり,これらの各罪と監禁罪は併合罪となる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ
解答 4
第3編 刑罰 第1章 刑罰の意義と種類
KH1500H24-20 没収と追徴 B
没収と追徴に関する次の【記述】中の①から⑧までの( )内に,後記アからシまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【記 述】
「刑法第19条により没収の対象とされているのは,例えば,犯罪を組成した物として(①),犯罪行為の用に供した物として(②),犯罪行為によって生じた物として(③),犯罪によって得た物として(④)がある。同条は,任意的な没収を定めた規定であるが,刑法上,必要的没収となるものとしては,(⑤)がある。没収は,罰金,(⑥)と並ぶ財産刑の一種であり,(⑦)を言い渡す場合に付加して言い渡すことができるものである。これに対し,追徴は,没収が不能となった場合に認められる(⑧)である。」
【語句群】
ア.殺人に使用された包丁 イ.賭博に勝って得た金品 ウ.文書偽造罪における偽造文書 エ.偽造文書行使罪における偽造文書 オ.犯罪行為の報酬として得た金銭 カ.収受した賄賂 キ.過料 ク.科料 ケ.自由刑 コ.主刑 サ.換刑処分 シ.付加刑
1.①ウ ②ア ③エ ④カ ⑤オ ⑥ク ⑦ケ ⑧シ
2.①ウ ②エ ③イ ④オ ⑤ア ⑥キ ⑦コ ⑧サ
3.①エ ②ア ③ウ ④イ ⑤カ ⑥ク ⑦コ ⑧サ
4.①エ ②ア ③ウ ④オ ⑤カ ⑥ク ⑦コ ⑧シ
5.①カ ②エ ③ウ ④イ ⑤オ ⑥キ ⑦ケ ⑧シ
解答 3
KH1510H29-09 没収と追徴 A
没収と追徴に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.主物を没収するときは,その従物も没収できる。
イ.判決により没収の言渡しをするためには,対象物が判決時に裁判所により押収されている必要がある。
ウ.被害者宅に侵入して行われた窃盗事犯において,被害者宅への侵入に際して道具として使用された鉄棒は,住居侵入罪について公訴提起されていなければ没収できない。
エ.窃盗によって取得された盗品は,取得物件であるが,没収できない場合がある。
オ.収賄罪において,収受した賄賂が没収不能となった時点で,収受時と比較してその価額が減じていた場合には,没収不能時の価額を追徴することになる。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ
解答 2
KH1511R03-11 没収及び追徴 B
刑法上の没収及び追徴に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.犯罪行為の用に供した物(刑法第19条第1項第2号)の没収は,物の危険性に着目した処分であるため,行為者が責任無能力を理由に無罪の言渡しをされたときであっても科すことが
できる。
2.犯罪行為の報酬として得た貴金属を売却して得た現金は,追徴ではなく,没収の対象となる。
3.強制性交の犯人が,被害者に犯行の様子を撮影録画したことを知らせて捜査機関に対し処罰を求めることを断念させる目的で,ひそかに撮影録画したデジタルビデオカセットは,犯罪行為の用に供した物ではないため,没収の対象とならない。
4.犯罪行為によって得た物(刑法第19条第1項第3号)は,犯罪により不当に得た利益を犯人から剥奪する必要があるため,任意的没収ではなく,必要的没収の対象となる。
5.没収の対象は,刑罰の一身専属性の見地から,犯人の所有物に限られる。
解答 2
KH1520H25-09 刑罰 B
刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.自由刑には,懲役,禁錮及び労役場留置が含まれる。
イ.財産刑には,罰金,没収及び追徴が含まれる。
ウ.有期の懲役又は禁錮は,1月以上15年以下であり,これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。
エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。
オ.懲役は,受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり,禁錮は,受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。
解答 ア2,イ2,ウ2,エ1,オ1
KH1530H30-09 罪数・刑罰論 B
次の1から5までの各記述のうち,誤っているものを2個選びなさい。
1.刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者が,猶予の期間内に更に罪を犯しても,罰金に処せられたときには,刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなくてもよい。
2.懲役に処せられた者がその執行を終わった日から5年以内に更に罪を犯し,その者を有期懲役に処するとき,その刑は,その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とするが,その場合でも懲役20年までしか上げることができない。
3.懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは,無期刑については10年を経過した後,行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
4.1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合,それらの罪についていずれも有期懲役に処するとき,その刑は,その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。
5.親告罪に当たる罪を犯した者が,捜査機関及び告訴権者に発覚する前に,告訴権者に対して自己の犯罪事実を自発的に告げ,告訴するかどうかについて告訴権者の措置に委ねた場合,その刑を減軽することができる。