第4編 個人法益 第1章 生命身体に対する罪

KH1560H27-06 殺人罪の成否 A

次の1から5までの各事例における甲のVに対する罪責について,判例の立場に従って検討した場合,甲に殺人罪が成立しないものはどれか。
1.甲は,Vには自殺がどのようなものかを理解する能力がなく,しかもVが甲の命ずることには何でも服従するのを利用してVを死亡させようと考え,Vに対して,首を吊る方法を教えた上,これを実行するよう命じた。Vは,甲から命じられたとおりに,教えられた方法で自ら首を吊って窒息死した。
2.甲は,真冬の深夜,河川堤防でVに激しい暴行を加えたところ,Vは走って逃げ出した。甲は,逃げるVを堤防際まで追い詰めれば,逃げ場を失ったVが堤防から下の川に飛び込んで溺死するかもしれないがそれでも構わないと考え,Vを堤防際まで追い詰めた。逃げ場を失ったVは,甲からの暴行を免れるため,堤防から約3メートル下の川に飛び込んで溺死した。
3.甲は,Vから,包丁で腹部を突き刺して殺してほしいと依頼され,これを真意から出た依頼であると信じて包丁でVの腹部を突き刺したが,その依頼はVの冗談であって,Vの真意から出たものではなかった。Vは,甲から腹部を包丁で刺されたことにより失血死した。
4.甲は,妻と話し合って一家心中することとし,妻と5歳になる息子Vからそれぞれ一家心中することの承諾を得た上,妻とVを殺すため,同人らの腹部を包丁で刺した。妻とVは,甲から腹部を包丁で刺されたことにより失血死した。
5.甲は,Vから心中を持ち掛けられたことを利用して,Vを死亡させようと考え,自らは死ぬ気がないのに,Vとの心中を了承した。Vは,甲の真意を知っていれば死ぬことはなかったが,甲も一緒に死んでくれるものと誤信したまま,甲の目の前で,甲が用意した致死量の毒を飲んで中毒死した。

解答 3

KH1580H28-14 傷害罪等の成否 A

次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.甲は,Aの太ももを蹴って怪我をさせたが,甲には,Aに傷害を負わせるまでの意思はなかった。甲には傷害罪は成立しない。
2.甲,乙及び丙が,互いに意思の連絡をすることなく,同一の機会にそれぞれAに暴行を加えて怪我をさせたところ,その怪我は,乙又は丙いずれかの暴行によるものであり,甲の暴行によるものではなかった。Aがその怪我により死亡した場合,乙及び丙には傷害致死罪が成立し,甲には傷害罪が成立する。
3.甲は,四畳半の室内で,Aを脅す目的で,さやから抜いた日本刀をその面前で数回振り回したところ,誤ってその日本刀の刃先がAの腕に当たり,Aに怪我を負わせた。甲には傷害罪は成立しない。
4.甲は,路上でトラブルとなったAの顔面を1回殴ったところ,Aは,その暴行によりバランスを崩し,足下にあった石につまずいて路上に転倒し,頭部を強く打ち付けて怪我をし,これにより数時間後に死亡した。甲がAの死亡の結果を全く予見していなかった場合でも,甲には傷害致死罪が成立する。
5.甲は,Aら数名が殴り合いのけんかをしているところにたまたま通り掛かり,「もっとやれ。」と言ってはやし立てた。Aらけんかの当事者が怪我をせず,Aらの暴行が互いの相手に対する暴行罪にとどまる場合でも,甲には現場助勢罪(刑法第206条)が成立する。

解答 4

KH1590R01-04K 傷害の罪 A

傷害の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.傷害罪は,他人の身体の生理的機能を毀損する犯罪であるから,精神疾患の一種である心的外傷後ストレス障害(いわゆるPTSD)を負わせるなど精神的機能の障害を惹起した場合,傷害罪が成立することはない。
2.傷害罪は,暴行罪の結果的加重犯であるから,被害者に暴行を加えずに身体の生理的機能を毀損した場合,傷害罪が成立することはない。
3.被害者に睡眠薬を摂取させたことによって一定時間にわたり筋弛緩作用等を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた場合,傷害罪が成立することはない。
4.傷害の実行行為者をその現場において精神的に鼓舞する行為が傷害罪の幇助に当たる場合,現場助勢罪が成立することはない。
5.同時傷害の特例は,刑法の基本原理に対する重大な例外規定であり,厳格に適用されなければならないため,その要件を満たす傷害から被害者に死亡結果が生じた場合,同特例の適用により傷害致死罪が成立することはない。

解答 4

KH1600H30-01Y 凶器準備集合罪 B

次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合,甲に凶器準備集合罪が成立しないものはどれか。
1.甲は,乙,丙及び丁が,対立するグループの者らによる襲撃に備えて同人らの身体に対し共同して害を加える目的で凶器を準備して公園に集合していることを知った。その上で,甲は,自らも乙らと共同して害を加える目的で凶器を所持して同公園に赴き,乙,丙及び丁に合流したが,客観的には同グループの者らによる襲撃が切迫しているという状況はなかった。
2.甲は,乙,丙及び丁と共に,Vの身体に対し共同して害を加える目的でそれぞれ凶器を準備し公園に集合することとしたが,乙,丙及び丁が凶器を準備して先に同公園に到着しVを待ち伏せていたところ,同公園にVが現れたことから,乙らにおいてVの身体に対する加害行為を開始した。その後間もなく,甲は,凶器を所持して同公園に到着し,乙らがVに対する加害行に及んでいる間も,自らも乙らと共にVの身体に対し共同して害を加える目的で凶器を所持してその場に居続けた。
3.甲は,乙,丙及び丁と共に,Vが居住する家屋を共同して損壊する目的でそれぞれハンマーや斧を準備し,同家屋近くの公園に集合した。
4.甲は,乙,丙及び丁と共に公園で雑談をしていたところ,同公園の隅に長さ約1メートルの棒状の角材が多数保管されているのを発見した。甲ら4名は,その角材を手に取った後,これを凶器としてVの身体に対し共同して害を加える目的を有するに至った。
5.甲は,乙,丙及び丁が,対立するグループの者らによる車両での襲撃を察知して,相手車両に衝突させるという意図の下に,エンジンを切った状態で無人のダンプカー1台を乙方付近の路上に駐車させていることを知った。その上で,甲は,自らも乙らと共に同グループの者らの身体に対し共同して害を加える目的で乙方に赴き,乙,丙及び丁に合流した。

解答 5

KH1630H29-06Y 遺棄罪 A

次の各【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。
【見 解】
A説:遺棄罪は,生命・身体に対する危険犯である。
B説:遺棄罪は,生命に対する危険犯である。
【記 述】
1.「自説のように解さないと処罰範囲が広くなり過ぎる」ことは,B説の根拠となり得る。
2.「刑法第219条(遺棄等致死傷罪)が致傷罪という加重処罰規定を置いている」ことは,A説の根拠となり得る。
3.「刑法第218条(保護責任者遺棄罪)が生存に必要な保護をしなかったことを遺棄とともに処罰の対象としている」ことは,B説の根拠となり得る。
4.「遺棄罪の懲役刑の上限が傷害罪の懲役刑の上限よりも軽い」ことは,B説の根拠となり得る。
5.「刑法典は,殺人,傷害,過失傷害,堕胎の各罪の章の後に遺棄の罪の章を置いている」ことは,A説の根拠となり得る。

解答 4

KH1631R02-04 遺棄の罪 B

遺棄の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものを2個選びなさい。
1.遺棄罪(刑法第217条)の成立には,生命に対する危険の発生が必要である。
2.妊婦の依頼を受け,母体保護法上,許されない堕胎を行った産婦人科医師が,それにより出生した未熟児について,医療設備の整った病院に搬送することが容易であり,同病院の医療を受けさせれば,同児が短期間内に死亡することはなく,むしろ生育する可能性がある場合において,そのことを認識しながら,生存に必要な保護を行わず同児を死亡させたときは,同医師に,保護責任者遺棄等致死罪(刑法第219条,第218条)が成立し得る。
3.保護責任者遺棄等罪(刑法第218条)にいう「老年者,幼年者,身体障害者又は病者」は,例示列挙であり,同罪の客体はそれらの者に限られず,扶助を必要とする者であれば足りる。
4.保護責任者遺棄等致傷罪(刑法第219条,第218条)には,傷害結果に故意がある場合は含まれない。
5.保護責任者遺棄等罪(刑法第218条)における遺棄には,置き去りは含まれない。

解答 2,4

第4編 個人法益 第2章 自由平穏に対する罪

KH1640H25-02 監禁罪 A

監禁の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.甲は,自己が経営する飲食店で住み込みの従業員として違法に働かせていたA女が逃げたことから,これを連れ戻すため,A女に対し,「お母さんが病気で入院していると連絡があった。これからその病院に連れて行くから,車に乗れ。」と嘘を言い,これを信じたA女を自己の運転する普通乗用自動車に乗車させて約12キロメートル走行した。甲に監禁罪は成立しない。
2.甲は,身の代金取得の目的で7歳の子供Aを拐取し,さらに,Aの手足をロープで縛って逃げることができないようにして自室に閉じ込め,その間にAの親に電話をかけて身の代金を要求した。甲に監禁罪は成立しない。
3.甲は,知人のA女をA女宅に送るため,自己が運転する原動機付自転車の後部荷台に乗せて走行していたが,途中でA女を強制性交しようと考え,なおも走行を続けた。その後,甲の意図に気付いたA女が「降ろして。」と叫んだが,甲は,これを無視して,そのまま約1キロメートルの間,同車を疾走させた。甲には監禁罪が成立する。(問改)
4.甲は,自己の所属する暴力団の配下組員Aに指を詰めさせることとし,嫌がるAを無理やり普通乗用自動車に乗せて組事務所に連行し,約1時間半にわたってAを監視したが,その間に,組事務所内において,Aの左腕を押さえ付け,包丁でAの小指を切断した。甲には監禁致傷罪が成立する。
5.甲は,通行中のA女を殴るなどして無理やり自己が運転する普通乗用自動車に乗せて同車を疾走させて連れ回そうと考え,同車を停めて運転席から降り,路上でA女に近づき,A女を同車に連れ込むために,A女の顔面を殴打して加療約2週間を要する顔面挫傷の傷害を負わせたが,A女が甲に捕まえられることなく逃げたため,A女を同車に乗せることはできなかった。甲に監禁致傷罪は成立しない。

解答 3,5

KH1650R01-06K 監禁罪 A

学生A,B及びCは,監禁罪の客体に関して,次の各【見解】のうち,いずれか異なる見解を採り,後記【事例】について【会話】のとおり検討している。学生A,B及びCの採る見解として正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【見 解】
ア.監禁されている時点で移動する一般的な能力がある者は,その時点で移動できなくても,監禁罪の客体となる。
イ.監禁されている時点で移動する一般的な能力があり,その時点で現実に移動できる者は,監禁罪の客体となる。
ウ.監禁されている時点で移動する一般的な能力があり,その時点で現実に移動でき,かつ,移動する意思がある者は,監禁罪の客体となる。
【事 例】
乙が窓のない部屋の中に一人でいたところ,甲は,午後1時から午後3時までの間,その部屋の唯一の出入口であるドアに外から施錠し,その間,乙がその部屋の外に出られないようにした。
【会 話】
学生A.乙が甲による施錠に気付かなかった場合,B君が採る見解によれば,監禁罪は成立しますか。
学生B.成立します。
学生C.私が採る見解でも成立します。では,乙が午後0時30分頃に眠ってしまい,その後,午後2時頃に目覚めて,甲による施錠に気付かないまま午後4時まで室内で過ごした場合,A君が採る見解によれば,監禁罪は成立しますか。
学生A.成立しません。
学生B.私が採る見解では,結論はA君と異なります。では,今のC君の事例を少し修正し,乙が午後3時過ぎに目覚め,甲による施錠に気付かなかったという場合,C君が採る見解によれば,監禁罪は成立しますか。
学生C.成立しません。
1.A-ア B-ウ C-イ
2.A-イ B-ア C-ウ
3.A-イ B-ウ C-ア
4.A-ウ B-ア C-イ
5.A-ウ B-イ C-ア

解答 4

KH1660H24-04K 脅迫罪 A

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,甲に乙又は乙社に対する脅迫罪が成立するものの組合せは,後記1から7までのうちどれか。
ア.甲は,乙に対し,乙の妻の実兄である丙を殺害する旨告知し,乙は丙が殺されるかもしれない旨畏怖した。
イ.甲は,乙株式会社総務課長丙に対して,乙社の商品不買運動を行って乙社の営業活動を妨害する旨告知し,丙は,乙社の営業活動が妨害されるかもしれない旨畏怖した。
ウ.甲は,インターネット上の掲示板に乙が匿名で行った書き込みに対し,同掲示板に「そんな投稿をするやつには天罰が下る。」旨の書き込みを行い,これを閲読した乙は,小心者だったことから,何か悪いことが起こるかもしれない旨畏怖した。
エ.甲は,口論の末,乙に対し,「ぶっ殺すぞ。」と怒号した。この様子を見ていた周囲の人たちは,甲が本当に乙を殺害するのではないかと恐れたが,乙は剛胆であったため畏怖しなかった。
オ.甲は,単身生活の乙に対し,「乙宅を爆破する。」旨記載した手紙を投函し,同手紙は乙方に配達されたが,同手紙には差出人が記載されていなかったことから,不審に思った乙は同手紙を開封しないまま廃棄した。
1.ア イ  2.ア ウ  3.ア エ  4.イ エ  5.イ オ 6.ウ エ  7.ウ オ

解答 3

KH1690H29-02K 人身売買の罪 B

略取,誘拐及び人身売買の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.営利の目的で未成年者を買い受けた場合,未成年者買受け罪のみが成立する。
イ.身の代金目的誘拐罪は,近親者その他誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的を主観的要素とする目的犯である。
ウ.身の代金目的で成年者を略取し,公訴が提起される前に同成年者を安全な場所に解放すれば,身の代金目的略取罪の刑が必要的に減軽される。
エ.未成年者誘拐罪は親告罪である。
オ.親権者は,未成年者誘拐罪の主体とはならない。
1.ア ウ  2.ア オ  3.イ ウ  4.イ エ  5.エ オ

解答 2

KH1700H24-11Y 強制性交等罪 B

次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを1個選びなさい 。(問改) 
1.甲は,V女を不同意性交した後,同女から金品を奪う意思を生じ,同女に更なる暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して同女の財布を奪った。甲には強盗・不同意性交等既遂罪は成立しない。(問改)
2.甲は,V女に暴行を加えてその反抗を著しく困難にさせた上で性交しようと思い,同女の顔面を1回殴ったところ,同女に逃げられ,性交することはできなかったが,前記殴打行為により同女に全治約1か月間を要する鼻骨骨折の傷害を負わせた。甲には不同意性交等未遂罪と傷害罪が成立し,両罪は観念的競合となる。(問改)
(3.甲は,強制性交するために反抗を著しく困難にする程度の暴行をV女に加えたところ,その暴行により同女が脳震とうを起こして失神した。甲は失神した同女を性交した。甲には準強制性交等既遂罪が成立する。)改正により不成立
4.甲(30歳)は,16歳のV女を15歳であると誤信したまま,暴行・脅迫を加えることなく同女を性交した。甲には不同意性交等既遂罪は成立しない。(問改)
5.甲は,不同意性交するため,殺意をもってV女に強度の暴行を加え,同女の反抗を抑圧した上で同女を性交し,同暴行により,同女を死亡させた。甲には不同意性交等致死罪のみが成立する。(問改)

解答 4

KH1710H27-08K 性的自由に対する罪 A (令和5年改正で問題不成立)

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.準強制わいせつ罪(刑法第178条第1項)の「心神喪失」とは,責任能力における心神喪失と同義である。
イ.第三者の暴行・脅迫によって女子が「抗拒不能」の状態に陥っているのを利用して,同人を性交等した場合,準強制性交等罪(刑法第178条第2項)が成立する。(問改)
ウ.2名以上の者が,女子を強制性交等する目的でそれぞれ暴行を加えて同人の反抗を著しく困難な状態にした上,犯行現場にいる者のうち1名が性交等行為に及んだ場合,強制性交等罪(刑法第177条)の共同正犯が成立する。(問改)
エ.強制性交等する目的で暴行を加えたところ,その暴行によって同人が死亡したため,性交等するに至らなかった場合,強制性交等致死罪(刑法第181条第2項)が成立する。(問改)
オ.女子に対して準強制わいせつ罪に当たる行為をし,同人に騒がれて捕まりそうになり,わいせつな行為を行う意思を喪失してその場から逃走するため同人に暴行を加えて傷害を負わせた場合,強制わいせつ致傷罪(刑法第181条第1項)は成立せず,準強制わいせつ罪と傷害罪が成立する。
1.ア ウ  2.ア オ  3.イ ウ  4.イ エ  5.エ オ

KH1720R01-12Y 性的自由に対する罪 A

性的自由に対する罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。
1.不同意わいせつ罪は,告訴がなくても公訴を提起することができる。(問改)
2.15歳の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわ
いせつな行為をした場合には,暴行又は脅迫を用いていなくても,監護者わいせつ罪が成立する。
3.不同意性交等罪の犯人が,不同意性交を行った直後に強盗の犯意を生じて,同じ被害者に対し,強盗罪の手段に当たる脅迫を加えて財物を強取した場合には,不同意性交等罪と強盗罪の併合罪となる。(問改)
4.不同意性交等罪については,女性も男性も,その行為の主体となり得るし,客体ともなり得る。(問改)
(5.強制性交の意思をもって暴行又は脅迫を用いて被害者を抗拒不能にさせた後,その状態に乗じて性交をした場合には,準強制性交等罪ではなく,強制性交等罪が成立する。)改正のため不成立

解答 3

KH1730H24-14 住居・建物侵入罪 A

住居侵入罪又は建造物侵入罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.甲は,父親乙と居住していた実家から長期間家出していたが,強盗の目的で,共犯者丙と一緒に,深夜,乙方内に入った。丙には住居侵入罪が成立するが,甲には住居侵入罪は成立しない。
イ.甲は,乙が現に住んでいるアパートの居室内にのぞき目的で入ったが,同居室は乙の家賃の滞納により既に賃貸借契約が解除されていた。甲には住居侵入罪が成立する。
ウ.甲は,門塀が設けられるとともに,看守者が置かれ出入りが制限されている工場の敷地内に窃盗の目的で立ち入ったが,工場の建物に入る前に逮捕された。甲には建造物侵入未遂罪が成立するにとどまる。
エ.甲は,強盗の目的で乙方に行き,その意図を隠した上,玄関前で「こんばんは。」と挨拶したところ,乙が「お入り。」と答えたので乙方内に入った。甲には住居侵入罪は成立しない。
オ.甲は,交通違反の取締りに当たる捜査車両の車種やナンバーをのぞき見るため,外部からの立入りが制限され,内部をのぞき見ることができない構造になっている警察署の高さ約3メートル,幅30センチメートルのコンクリート塀の上に登り,その上部に立って中庭を見たが,塀から降りて中庭に立ち入る意思はなかった。甲には建造物侵入罪が成立する。
1.ア イ  2.イ ウ  3.イ オ  4.ウ エ  5.ウ オ

解答 3

KH1740H28-06K 住居を侵す罪 A

住居を侵す罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.強盗の意図を隠してA方の玄関前で「こんばんは。」と言ったところ,来客と勘違いしたAから「どうぞお入りください。」と言われてA方住居に立ち入った場合,住居侵入罪が成立する。
イ.建造物への立入りが平穏な態様で行われた場合には,管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない限り,建造物侵入罪が成立することはない。
ウ.平穏を害する態様での住居への立入りであっても,住居権者の同意に基づくものである場合には,住居侵入罪の構成要件には該当するが,違法性が阻却される。
エ.現金自動預払機が設置されている銀行支店出張所は,一般の利用客の立入りが許容されている場所であるので,同機を利用する客のキャッシュカードの暗証番号等を盗撮する目的で立ち入っても,平穏な態様での立入りであれば,建造物侵入罪が成立することはない。
オ.住居権者の意思に反して住居に立ち入った上,その後,退去を求められたにもかかわらず数日間にわたってその住居に滞留した場合には,住居侵入罪だけでなく,不退去罪も成立する。

解答 ア1,イ2,ウ2,エ2,オ2

KH1741R02-06Y 住居侵入等の罪 A

住居侵入等の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.「住居」というには,居住者が,法律上正当な権限に基づいて居住する必要があり,単に日常生活に使用しているだけでは足りない。
2.「人の看守する」というには,施錠等の物的設備がなくても,人が事実上管理支配していれば足りる。
3.「建造物」というには,土地に定着し,屋根があって,壁又は柱により支持され,その内部に人の出入りができる構造であるだけでは足りない。
4.「建造物」に含まれる囲繞地というには,当該建物に接してその周辺に存在し,かつ,管理者が外部との境界に囲障を設置することにより,建物の付属地として,建物利用のために供されるものであることが明示されているだけでは足りない。
5.「侵入し」というには,建造物等の平穏を害する必要があり,その管理権者の意思に反して立ち入ることだけでは足りない。

解答 2

KH1742R03-02 住居侵入等の罪 A

住居侵入等の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。 
ア.甲は,警察署の敷地内に駐車中の捜査用車両のナンバーを把握しようと考え,外部から同敷地内への交通を制限するために設置され,内部をのぞき見ることができない構造になっている
高さ2.5メートル,幅0.2メートルの同警察署の塀をよじ登り,その上に立った。この場合,甲には,建造物侵入未遂罪が成立するにとどまる。
イ.甲は,窃盗の目的で,乙が所有し,その扉や窓に施錠して管理していた空き家に立ち入った。この場合,甲には,邸宅侵入罪が成立する。
ウ.甲は,強盗の目的で,面識のない乙方に行き,その意図を隠しながら,玄関前で,「こんばんは。」と挨拶したところ,これを知人による来訪と勘違いした乙が,「どうぞ入ってください。」と答えたので,乙方内に立ち入った。この場合,甲には,住居侵入罪は成立しない。
エ.甲は,乙会社が所有するビルに窃盗に入る目的で,同ビルに接しており,同社が設置した門扉及び金網フェンスによって,同ビルの利用のために供されるものであることが明示され,部外者の出入りが制限されている敷地部分に立ち入ったが,同ビルに立ち入る前に警備員に取り押さえられた。この場合,甲には,建造物侵入未遂罪が成立するにとどまる。
オ.甲は,住居権者乙の意思に反し,乙方家屋に立ち入ったが,その後,乙から退去を求められたにもかかわらず数時間にわたって同家屋に居座った。この場合,甲には,住居侵入罪だけでなく,不退去罪も成立し,両罪は併合罪となる。

解答 ア2,イ1,ウ2,エ2,オ2

KH1750H26-12 住居侵入罪 A

刑法第130条の住居侵入等の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.本罪の客体は,人の住居若しくは邸宅,又は人の看守する建造物若しくは艦船である。
2.刑法第130条の規定する「看守」とは,現実に人が監視していることを意味し,単に出入口に鍵をかけてその鍵を保管しただけでは足りない。
3.集合住宅の1階出入口から各居室の玄関までの共用部分は,刑法第130条の規定する「住居」に当たる。
4.建造物に付属し,その利用に供される囲にょう地は,刑法第130条の規定する「建造物」に当たる。
5.1棟の建物の低層階に商業施設,高層階に住居がそれぞれ存在する場合,当該建物全体が刑法第130条の規定する「住居」に当たる。

解答 4

KH1770H27-02 業務妨害罪 A

業務妨害罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。 
1.業務妨害罪における「業務」とは,職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業をいい,営利を目的とするものでなくても「業務」に含まれる。
2.業務妨害罪における「業務」は,業務自体が適法なものであることを要するから,行政取締法規に違反した営業行為は「業務」には当たらない。
3.強制力を行使しない非権力的公務は,公務執行妨害罪における「公務」に当たるとともに業務妨害罪における「業務」にも当たる。
4.威力業務妨害罪における威力を「用いて」といえるためには,威力が直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要する。
5.業務妨害罪における「妨害」とは,現に業務妨害の結果が発生したことを必要とせず,業務を妨害するに足りる行為があることをもって足りる。

解答 2,4

KH1780H29-10 業務妨害罪 A

信用及び業務に対する罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.威力業務妨害罪における「威力」は,暴行又は脅迫を用いることを要し,騒音喧騒により人の意思を制圧して業務を妨害した場合,同罪は成立しない。
2.偽計業務妨害罪における「偽計」は,直接人に向けられていなくてもよい。
3.信用毀損罪における「信用」は,人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されず,経済的側面とは関係のない社会的な信頼を害した場合も,同罪が成立する。
4.業務妨害罪における「業務」は,社会生活上又は個人生活上の地位に基づき反復継続して従事する事務であるから,学生の学習活動を妨害した場合も,同罪が成立する。
5.信用毀損罪は危険犯であるが,業務妨害罪は侵害犯である。

解答 2

KH1790H30-18K 信用及び業務に対する罪 A

信用及び業務に対する罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.信用毀損罪における「流布」とは,虚偽の風説を不特定又は多数の人が認識可能な状態に置くことをいい,行為者自らが直接に不特定又は多数の人に告知する場合のみならず,特定かつ少数の者を通じて順次不特定又は多数の人に伝播させる場合も含まれる。
2.電子計算機損壊等業務妨害罪は,電子計算機に向けられた加害行為を手段とする業務妨害行為を処罰対象とするものであるところ,同罪の加害行為は,「人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊」することと「人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え」ることに限られる。
3.威力業務妨害罪における「威力を用いて」とは,人の意思を制圧するような勢力を行使することをいい,このような勢力が業務に従事している人に対して直接行使されることを要する。
4.信用毀損罪は,公訴が提起されることにより公判において事件の内容が明らかになり,かえって被害者の信用が損なわれる事態を招くおそれがあるため,被害者による告訴がなければ公訴を提起することができない。
5.強制力を行使しない公務は,業務妨害罪における「業務」には該当するが,公務執行妨害罪における「職務」には該当しない。

解答 1

KH1800R01-12 業務妨害罪 A

業務妨害罪に関する次の【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。
【見 解】
業務妨害罪は人の社会的活動の自由を保護法益とするものであるが,公務も人の社会的活動にほかならないから,公務の性質いかんにかかわらず,同罪によって保護されると解するのが妥当である。
【記 述】
1.この【見解】に対しては,公務執行妨害罪という国家的法益に対する罪と業務妨害罪のような個人的法益に対する罪とを安易に混同するものであるとの批判が可能である。
2.この【見解】に基づけば,公務員と共に公務に従事する非公務員に暴行を加えてその公務を妨害した場合,威力業務妨害罪が成立すると考えることが可能である。
3.この【見解】に対しては,逮捕行為のような強制力を行使する権力的公務は,暴行にも脅迫にも至らない手段による妨害を受けた時にそれを自力で排除し得るから,そのような公務まで業務として保護する必要はないとの批判が可能である。
4.この【見解】に基づけば,公務が暴行又は脅迫によって妨害された場合,公務執行妨害罪は業務妨害罪の特別法という関係にあるから前者のみが成立すると考えることが可能である。
5.この【見解】に対しては,威力や偽計による公務の妨害は公務執行妨害罪にも業務妨害罪にも当たらないこととなり,公務が業務に比して刑法上軽い保護しか受けられないという不都合があるとの批判が可能である。

解答 5

KH1801R02-12 業務妨害罪 A

業務妨害罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。 
1.利用客のキャッシュカードの暗証番号等を盗撮する目的で,現金自動預払機が2台設置されている銀行の無人出張所において,そのうち1台にカメラを設置し,当該現金自動預払機に客を誘導する意図で,一般客を装い,もう1台の現金自動預払機を2時間占拠した場合,偽計業務妨害罪が成立する。
2.講演会の主催者が閲覧する可能性を認識した上,インターネット上の掲示板に,当該講演会の会場に放火するという趣旨の書き込みをし,当該主催者に閲覧させた結果,当該講演会を中止させた場合,威力業務妨害罪が成立する。
3.公職選挙法上の選挙長による立候補届出受理事務を妨害する目的で,その届出場所において,突如大声を発し,ボールペンを机にたたき付けるという暴行・脅迫に至らない言動を用いてその事務を滞らせた場合,威力業務妨害罪が成立する。
4.知人Aに対する嫌がらせの目的で,同人に成り済まし,同人に無断で宅配ピザ店に電話をかけてピザ50枚を注文し,これを同人宅まで配達することを依頼して,同店店員にピザ50枚を作らせ,配達させた場合,偽計業務妨害罪が成立する。
5.弁護士Xの弁護士としての活動を困難にさせる目的で,同人から,同人が携行し,その業務にとって重要な訴訟記録等が入ったかばんを奪い取った上,自宅に保管した場合,偽計業務妨害罪が成立する。

解答 5

KH1802R03-08 業務妨害罪 A

学生A,B及びCは,次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑥までの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。なお,①から⑥までの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。
【会 話】
学生A.私は,公務も公務員としての個人の社会的活動であり,その性質に関わりなく業務妨害罪によって保護されるべきなので,(①)と考えます。
学生B.私は,国家的法益と個人的法益では罪質が違うので,(②)と考えます。
学生C.B君の見解では,(③)ような威力による非権力的公務に対する妨害のときに業務妨害罪が成立せず,非権力的公務の保護が不十分との批判がありますね。このような批判を踏まえて,私は,(④)と考えます。
学生A.C君の見解によると,(⑤)ような暴行による非権力的公務に対する妨害については,いかなる犯罪が成立するのでしょうか。
学生C.その場合には,業務妨害罪と公務執行妨害罪が成立すると考えます。
学生B.C君の見解に対しては,(⑥)との批判がありますね。
【語句群】
a.全ての公務が業務妨害罪の対象となる
b.強制力を行使する権力的公務以外の公務に限って業務妨害罪の対象となる
c.公務は一切業務妨害罪の対象とならない
d.威力による非権力的公務に対する妨害のときに処罰の間隙が生じてしまう
e.逮捕行為や強制執行のように,自力で抵抗を排除し得る機能を付与されている場合まで威力に対する保護を認めることになる
f.公務は公共の福祉を目的とするので,民間の業務より厚く保護されるべきである
g.公務に限って二重に保護する必要はない
h.市役所の窓口業務を大声を上げて妨害した
i.警察官による適法な捜索差押えの際,多数名で怒号しながら入口を塞いで警察官が捜索場所に立ち入るのを妨害した
j.公立学校の入学試験監督員である教員を拳で殴って試験会場に入るのを阻止した 
1.①a ②c ③j
2.①a ④b ⑥e
3.②c ③h ④a
4.③h ⑤i ⑥g
5.④b ⑤j ⑥g

解答 5

KH1810H25-10K 秘密漏示罪 B

次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤っているものはどれか。
【事案及び判旨】
精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属している家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたAの捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴した事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨判示し,甲に有罪判決を言い渡した。
【記 述】
1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。
2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。
3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。
4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命じた家庭裁判所の秘密であると考えている。
5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含むかどうかは必ずしも明らかではない。

解答 4

KH1830H27-02Y 名誉棄損罪と侮辱罪 A

名誉毀損罪(刑法第230条)と侮辱罪(刑法第231条)の保護法益に関する次の各【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5
までのうちどれか。 
【見 解】
A説:名誉毀損罪と侮辱罪の保護法益は,いずれも人の外部的名誉(社会的評価,社会的名誉)であり,名誉毀損罪と侮辱罪の違いは,事実の摘示の有無である。
B説:名誉毀損罪の保護法益は人の外部的名誉(社会的評価,社会的名誉)であり,侮辱罪の保護法益は人の主観的名誉(名誉感情)である。
【記 述】
ア.A説によれば,刑法第231条で侮辱が被害者の面前において行われることを要件としていないのは,公然たる侮辱の言葉はやがて本人に伝わるので面前性は不要だからであると考えられる。
イ.A説に対しては,刑法第231条の「事実を摘示しなくても」との文言は文字どおりに解すべきであって「事実を摘示しないで」という意味にはならないはずであるとの批判がある。
ウ.B説によれば,刑法第231条で公然性が要件とされているのは,侮辱行為が公然となされるかどうかでその当罰性に差異が生ずるからであると考えられる。
エ.B説に対しては,幼児・重度の精神障害者・法人に対する侮辱罪が成立しないのは妥当でないとの批判がある。
オ.B説に対しては,名誉毀損罪と侮辱罪の法定刑の差を説明できないという批判がある。 
1.ア  イ  ウ 
2.ア  イ  エ
3.イ  ウ  エ
4.イ  エ  オ
5.ウ  エ  オ

解答 3

KH1831R02-16K 名誉毀損罪及び侮辱罪 A

名誉毀損罪及び侮辱罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.名誉毀損罪及び侮辱罪の保護法益は,いずれも人の外部的名誉であり,法人については,侮辱罪の客体になり得ない。
2.死者であっても,その外部的名誉を保護すべきことに変わりはないので,死者の名誉を毀損する事実が摘示された場合も,その事実の真偽にかかわらず,名誉毀損罪が成立し得る。
3.特定かつ少数の者に特定人の名誉を毀損する事実を摘示した場合,その内容が拡散する可能性があったとしても,「公然と」事実を摘示したことにはならない。
4.風評の形式を用いて人の社会的評価を低下させる事実が摘示された場合,刑法第230条の2にいう「真実であることの証明」の対象となるのは,風評が存在することではなく,そのような風評の内容たる事実が存在することである。
5.表現方法が嘲笑的であるとか,適切な調査がないまま他人の文章を転写しているなどといった,事実を摘示する際の表現方法や事実調査の程度は,摘示された事実が刑法第230条の2にいう「公共の利害に関する事実」に当たるか否かを判断する際に考慮すべき要素の一つである。

解答 4

KH1832R03-12K 名誉毀損罪及び侮辱罪 A

名誉毀損罪及び侮辱罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 
ア.事実を摘示せずに公然と人を侮辱することを教唆した者に,侮辱教唆罪が成立することはない。
イ.弁護人が被告人の利益を擁護するためにした弁護活動であれば,それが名誉毀損罪の構成要件に該当する行為であっても,違法性が阻却されるため,名誉毀損罪が成立することはない。
ウ.人の社会的評価を害するに足りる事実を公然と摘示したとしても,その人の社会的評価が現実に害されていない場合,刑法第230条第1項にいう「人の名誉を毀損した」とはいえないため,名誉毀損罪は成立しない。
エ.私人の私生活の行状であっても,その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度等によっては,刑法第230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に当たる場合がある。
オ.インターネットを利用して公然と虚偽の事実を摘示し,人の名誉を毀損した場合,他の表現手段を利用する場合と異なり,インターネットの個人利用者に要求される水準を満たす調査によって摘示した事実が真実か否かを確かめることなく発信したときに限り名誉毀損罪が成立する。 
1.ア エ  2.ア オ  3.イ ウ  4.イ オ  5.ウ エ

解答 1

KH1850H24-08 信用・名誉棄損罪 A

信用毀損罪又は名誉毀損罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。 
1.甲は,スーパーマーケットVに嫌がらせをする目的で,誰でも閲覧できるインターネット上の掲示板に「Vで買ったオレンジジュースに異物が混入していた。」旨の嘘の書き込みをした。甲には信用毀損罪は成立しない。
2.教授甲は,数百人が出席している講演会で,日頃意見の対立するV教授がX県出身であったことから,誰のことを言っているかは分からないようにしつつ,「X県人は頭が悪い。」と述べた。甲には名誉毀損罪が成立する。
3.甲は,以前交際していたV女が別の男性と婚約したことを知り,腹いせに,V女の両親に宛てて,「V女には他にも数人男がいる。V女の好色は目に余る。」などと嘘の事実を記載した手紙を匿名で郵送した。甲には名誉毀損罪は成立しない。
4.甲は,インターネット上の書き込みを信じ,特段の調査をすることなく,誰でも閲覧できるインターネット上の掲示板に「ラーメン店Vの経営母体は暴力団Xである。」旨の真実に反する書き込みをした。甲には名誉毀損罪は成立しない。
5.甲は,かつて甲をいじめたVが破産したことを知り,仕返しをするため,「Vは破産者である。」と書かれたビラを多数人に配布した。甲には信用毀損罪は成立しない。

解答 3,5

KH1860H26-10 真実性の証明 B

刑法第230条の2に関する次の各【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
【見 解】
A説:刑法第230条の2の規定は,名誉毀損罪について真実性の証明がなされたことを処罰阻却事由として定めたものである。
B説:刑法第230条の2の規定は,他人の名誉を毀損する表現の内容が証明可能な程度に真実であることを違法性阻却事由として定めたものである。
【記 述】
ア.A説は,刑法第230条の2が真実性の証明に係る立証責任を被告人に負担させていることと整合的であると評価されている。
イ.B説に対しては,他人の名誉を毀損する表現をした者がその表現内容について真実であると信じた場合には,常に故意がないことになり相当でないという批判が向けられている。
ウ.A説に立つことと,相当な資料・根拠に基づく言論活動について刑法第35条による違法性阻却の余地を認めることは両立しない。
エ.B説によれば,他人の名誉を毀損した者が,その表現した事実が証明可能な程度に真実であると誤信し,その誤信したことについて,確実な資料・根拠に照らし相当の理由がある場合には,違法性が阻却されると考えることになる。
オ.A説に対しては,真実の言論について違法性を認める点に疑問があるとの批判が向けられている。

解答 ア1,イ2,ウ2,エ2,オ1

KH1870H29-18K 名誉棄損罪 A

名誉毀損罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.摘示される「事実」は,非公知のものでなければならないから,公知の事実を摘示した場合には,名誉毀損罪は成立しない。
2.事実の摘示が「公然」といえるためには,摘示内容を不特定かつ多数人が認識し得る状態にあったことが必要であるから,不特定ではあるが,少数人しか認識し得ない状態にとどまる場合には,名誉毀損罪は成立しない。
3.名誉の主体である「人」は,自然人に限られるから,法人の名誉を毀損した場合には,名誉毀損罪は成立しない。
4.死者の名誉を毀損したとしても,虚偽の事実を摘示した場合でなければ処罰されないから,摘示した事実が真実である場合には,名誉毀損罪として処罰されない。
5.人の名誉を侵害するに足りる事実を公然と摘示したとしても,現実に人の名誉が侵害されていない場合には,名誉毀損罪は成立しない。

解答 4

第4編 個人法益 第4章 財産に対する罪

KH1900H24-01K 窃盗罪 A

次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合,甲に窃盗罪が成立しないものはどれか。 
1.甲は,コンビニエンスストアでレジ係のアルバイトをしていたが,店長の乙が短時間外出していた間に,商品棚からたばこ1カートンを取り出して自分のバッグに入れ,アルバイト終了後店外へ持ち出し,これを自分のものにした。
2.甲は,旅館に宿泊した際,旅館内にある共同浴場の脱衣場で,他の宿泊客が置き忘れた時計を見付けたので,脱衣場から持ち出し,これを自分のものにした。
3.甲は,深夜,路上を歩いていたところ,見知らぬ乙と丙が殴り合いのけんかをしていたので,これを見ていると,乙がナイフを取り出して丙を刺し殺した。甲は,乙が走り去った直後,死亡した丙の上着のポケット内に入っていた現金入りの財布を持ち去り,これを自分のものにした。
4.甲は,乙から封かんされた現金10万円入りの封筒を渡されて丙に届けるように依頼され,丙方に向かって歩き始めたが,途中で封筒内の現金が欲しくなり,封を開いて封筒に入っていた現金のうち2万円を取り出してこれを自分のものにした後,残りの現金が入った封筒を丙に交付した。
5.甲は,乙が他の者から盗んできた宝石を乙所有の自動車の中に置いているのを知っていたところ,ある日,同車が無施錠で駐車されているのに気付き,同車内から同宝石を持ち去り,これを自分のものにした。

解答 3

KH1910H25-04 窃盗罪の成否 A

次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に窃盗罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。 
ア.甲は,夜道を歩いていた際,乙が路上で倒れて急死したのを目撃し,乙が死亡しているのを認識した上で,乙の上着ポケットに入っていた財布を自分のものにしようと考え,これを取り出して自分のかばんにしまった。
イ.甲は,乙を強制性交した直後,警察に通報されないよう乙の携帯電話を破壊するため,乙の持っていたかばんから,乙に気付かれないうちに乙の携帯電話を取り出してその場で破壊した。
ウ.甲は,自然湖であるA湖内で,同湖の一部を区切って錦鯉を養殖している乙のいけすから逃げ出した錦鯉20匹を発見し,乙が養殖していた錦鯉であると認識しながら,これを自分のものにするため捕獲し,第三者に売却した。
エ.甲は,乙から鍵の掛かった乙の手提げ金庫を預かって保管していたが,同金庫の在中物を自分のものにしようと考え,同金庫を破壊し,中に入っていた乙の宝石を取り出し,第三者に売却した。
オ.甲は,A駅行きの満員電車に乗っていた際,隣の席に座っていた乙がかばんを忘れたままB駅で下車したのを目撃し,乙のかばんとその中身を自分のものにしようと考え,次のC駅で乙のかばんを持って下車し,自宅に持ち帰った。

解答 ア2,イ2,ウ2,エ1,オ2

KH1920H26-02K 窃盗罪の成否 A

窃盗罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。 
1.宿泊客が,旅館の貸与した浴衣を自分のものにしようと考え,これを着用したまま,玄関にいた支配人に「ちょっと向かいのポストまで手紙を出してくる。」と告げ,支配人に「いってらっしゃいませ。」と言われて旅館を立ち去った行為には,窃盗罪は成立しない。
2.送金銀行の手違いで,自己名義の預金口座に誤って入金されたことを知った者が,これを自分のものにしようと考え,同口座のキャッシュカードを用いて現金自動預払機から全額を引き出した行為には,窃盗罪は成立しない。
3.民家で火災が発生し,消火活動に参加した者が,一人暮らしだった住人の焼死体に付いていた金のネックレスを発見して自分のものにしようと考え,これを取り外して持ち去った行為には,窃盗罪は成立しない。
4.施錠された友人所有のキャリーバッグを同人から預かり保管していた者が,在中する衣類を自分のものにしようと考え,友人に無断でキャリーバッグの施錠を解き,同衣類を取り出した行為には,窃盗罪は成立しない。
5.パチスロ機を誤作動させてメダルを窃取することを共謀した者が,実行者の犯行を隠ぺいするため,実行者の隣で通常の遊戯方法によりメダルを取得した場合,そのメダルを被害品とする窃盗罪は成立しない。

解答 3,5

KH1930H30-08K 窃盗罪 A

次のアからオまでの各記述における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 
ア.甲が,自然湖の一部に設けられた乙のいけすから逃げ出した乙所有の錦鯉30匹を,同湖内の同いけすから離れた場所で発見し,乙が所有する錦鯉であると認識しながら,これらを自己のものにしようと考えて捕獲した場合,窃盗罪が成立する。
イ.甲は,パチスロ機に針金を差し込んで誤作動させてメダルを窃取することを乙と共謀し,乙による窃盗の犯行を周囲から見えにくくするため,乙の隣のパチスロ機で通常の遊戯を行い,それによりメダルを取得した。この場合,甲自身が遊戯したパチスロ機で取得したメダルについても窃盗罪が成立する。
ウ.甲が,乙から封かんされた現金20万円入りの封筒を渡されてそれを丙に届けるように依頼されたが,丙方に向かう途中で封筒内の現金が欲しくなり,封を開いて封筒に入っていた現金のうち5万円を取り出してこれを自己のものとし,残りの現金が入った封筒を丙に交付した場合,取り出した5万円について窃盗罪が成立する。
エ.甲は,乙から,乙が海中に落とした腕時計の引き揚げを依頼され,その腕時計が落ちた場所の大体の位置を指示された。甲が,乙から指示された海中付近を探索した結果,同腕時計を発見したが,それを乙に知らせることなく,同腕時計を引き揚げて自己のものとした場合,窃盗罪が成立する。
オ.甲が,満員電車に乗っていた際,隣の席に座っていた見ず知らずの乙が財布を座席に置き忘れたままX駅で下車したのを目撃し,乙の財布とその中身を自己のものにしようと考え,次のY駅に到着した時点で乙の財布を取得した上,同駅で下車し自宅に持ち帰った場合,窃盗罪が成立する。
1.ア イ  2.ア オ  3.イ エ  4.ウ エ  5.ウ オ

解答 4

KH1951R03-10K 不法領得の意思 A

窃盗罪における不法領得の意思についての次の各【見解】に従って後記の各【事例】における甲の罪責を検討した場合,後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。なお,後記の各【事例】における甲の行為は,いずれも窃盗罪の客観的要件を全て満たすものとする。
【見 解】
A.不法領得の意思として,権利者を排除して所有者として振る舞う意思及び何らかの用途に従って利用・処分する意思が必要である。
B.不法領得の意思として,権利者を排除して所有者として振る舞う意思は必要であるが,何らかの用途に従って利用・処分する意思は不要である。
C.不法領得の意思として,何らかの用途に従って利用・処分する意思は必要であるが,権利者を排除して所有者として振る舞う意思は不要である。
D.不法領得の意思は不要である。
【事 例】
Ⅰ.甲は,勤務先の会社の上司乙を困らせる目的で,乙が机の引き出し内に保管していた同社の銀行届出印をひそかに持ち出し,自宅の天井裏に隠匿した。
Ⅱ.甲は,乙が不在であることを知り,一時的に借用して直ちに戻す意思で,乙方の玄関先に無施錠で駐輪されていた乙の自転車を無断で乗り出し,100メートル先の店まで移動して用事を済ませ,その乗り出しから5分後,同自転車を同玄関先に戻した。
Ⅲ.甲は,X市議会議員選挙に際し,候補者乙の得票数を水増しする目的で,同市選挙管理委員会が保管していた投票用紙50枚を投票所から持ち出し,乙の支持者らに交付して乙に対する投票を依頼した。
【記 述】
1.A及びBいずれの見解によっても,事例Ⅰでは窃盗罪が成立する。
2.A及びDいずれの見解によっても,事例Ⅱでは窃盗罪が成立する。
3.B及びCいずれの見解によっても,事例Ⅱでは窃盗罪が成立する。
4.B及びDいずれの見解によっても,事例Ⅲでは窃盗罪が成立する。
5.C及びDいずれの見解によっても,事例Ⅰでは窃盗罪が成立する。

解答 4

KH2010H24-19 強盗予備 A

次の1から5までの各記述のうち,事後強盗の予備行為に強盗予備罪の成立を認める見解の根拠となり得るものを2個選びなさい。 
1.窃盗の実行に着手した後,財物窃取前に被害者に発見されたため,同人に暴行・脅迫を加えて財物を強取するいわゆる居直り強盗の場合と,事後強盗の場合を,予備段階で区別するのは実際上困難であり,両者の処罰に差異を設けることは妥当でない。
2.条文の配置上,事後強盗罪の処罰規定が強盗予備罪の処罰規定の後に規定されていることを考慮すべきである。
3.実質的に窃盗の予備を処罰することになる。
4.事後強盗罪に関する刑法第238条は,「強盗として論ずる。」と規定している。
5.事後強盗罪は,窃盗犯人であることを身分とする身分犯であり,身分犯の予備行為は,身分者でなければ行うことができない。

解答 1,4

KH2020H25-12 強盗の罪 A

強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。 
1.甲は,乙に対し,金品を奪うために,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,その反抗を抑圧して乙から財布を奪ったが,乙は財布を奪われたことに気付かなかった。甲には強盗既遂罪が成立する。
2.甲は,乙宅で財布を窃取し,誰からも追跡されることなく,約2キロメートル離れた場所まで徒歩で移動した後,窃取した財布の中を見たが,予想していたよりも現金が少なかったことから,再び窃盗を行う目的で乙宅に戻り,玄関を開けたところ,帰宅していた乙に発見され,逮捕を免れるために,乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。甲には事後強盗既遂罪は成立しない。
3.甲は,電車内で乗客のポケットから財布を窃取した直後,その犯行状況を目撃して甲を逮捕しようとした警察官乙に対し,逮捕を免れるために,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えたが,乙に逮捕された。甲には事後強盗未遂罪が成立する。
4.甲は,空き巣を行う目的で乙宅に侵入したところ,たまたま留守番をしていた乙の甥である10歳の丙に発見され,金品を奪うために,丙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,その反抗を抑圧して寝室のタンス内にあった乙名義の預金通帳と印鑑を奪った。甲には強盗既遂罪が成立する。
5.甲は,飲食店において,代金を支払う意思及び能力がないのに,店長乙をだまして酒食を注文し,飲食した後,代金の支払いを免れるために,乙に対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,その反抗を抑圧して逃走し,代金請求を免れた。甲には強盗既遂罪が成立する。

解答 3

KH2030H26-14 強盗の罪 A

強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。 
1.甲は,金品窃取の目的で乙方内を物色中,金品を手にする前に乙に見付かり,逮捕を免れるため,乙に暴行を加えてその反抗を抑圧し,逃走した。甲には事後強盗未遂罪が成立する。
2.甲は,金品窃取の目的で乙方の金庫の扉を開けていたところを乙に見付かり,自分が犯人であることを警察に告げられることを防ぐため,乙を殺害し,そのまま逃走した。甲には強盗殺人未遂罪が成立する。
3.甲は,路上で乙とけんかになり,乙の胸をナイフで刺して殺害したが,そのすぐ後,乙が身に付けていた腕時計に気付き,自分のものにしようと考え,これを持ち去った。甲には強盗殺人既遂罪が成立する。
4.甲が,金品を奪う目的で,乙に暴行を加えてその反抗を抑圧したところ,乙は,持っていたバッグをその場に放置して逃走したことから,甲は,そのバッグを持ち去った。甲に強盗既遂罪は成立しない。
5.甲は,深夜,事務所で窃盗をしようと考え,窃盗の際に誰かに発見されたら包丁で脅して逃げるため,これを携帯しながら盗みに入ることができそうな事務所を探して街をはいかいしていたが,悔悟の念を生じたため,盗みに入ることを断念した。甲に強盗予備罪の中止犯は成立しない。

解答 1,5

KH2040H27-16K 事後強盗罪 A

事後強盗罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。 
1.窃盗既遂犯人のみが事後強盗罪の主体となる。
2.事後強盗罪は,強盗罪と同様,財物と財産上の利益について成立する。
3.窃盗犯人が窃盗の現場で逮捕を免れるために暴行・脅迫を加えた相手方が,現に当該窃盗犯人を逮捕する意図を有していなくても,事後強盗罪は成立する。
4.窃盗犯人が窃盗の現場で逮捕を免れるために相手方を殺害した場合,強盗殺人罪は成立しない。
5.強盗予備罪の「強盗の罪を犯す目的」には,事後強盗を犯す目的も含まれる。

解答 3,5

KH2050H30-10 強盗致傷罪 B

強盗致傷罪に関する次の各【見解】AないしDに従って後記各【事例】ⅠないしⅢにおける甲の罪責を検討し,後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。
【見 解】
A.致傷結果は,強盗の機会に行われた行為から発生すれば足りる。
B.致傷結果は,強盗の手段である暴行から発生する必要がある。
C.致傷結果は,強盗の手段である暴行のほか,強盗の機会に行われた行為のうち,強盗行為とその性質上密接な関連性を有する行為から発生する必要がある。
D.致傷結果は,強盗の手段である暴行のほか,強盗の機会に刑法第238条所定の目的で行う暴行から発生する必要がある。
【事 例】
Ⅰ.甲は,自らの強盗の犯行を乙に目撃されたところ,犯行の翌日,犯行現場から約10キロメートル離れた路上において,たまたま乙に発見され,乙に捕まらないようにするため,乙の顔面を拳骨で多数回殴打し,乙に傷害を負わせた。
Ⅱ.甲は,乙から金品を強取することを丙と計画し,丙と共に乙方に侵入して乙から金品を強取したが,その直後,乙方において,丙に対する日頃の不満を解消するためだけに,丙の顔面を拳骨で多数回殴打し,丙に傷害を負わせた。
Ⅲ.甲は,乙から金品を強取することを計画し,乙方に侵入して乙に包丁を突き付けて金品を要求したが,これに乙が応じなかったため,金品強取を諦めて逃走しようとしたところ,乙から金品を強取できなかった腹いせに,乙とは別の部屋で寝ていた1歳の丙の腹部を多数回蹴り付け,丙に傷害を負わせた。
【記 述】
1.Aの見解によれば,事例ⅠからⅢのいずれでも強盗致傷罪が成立する。
2.Bの見解によれば,事例ⅠからⅢのいずれでも強盗致傷罪が成立しない。
3.Cの見解によれば,事例Ⅱでは強盗致傷罪が成立しない。
4.Dの見解によれば,事例Ⅰでは強盗致傷罪が成立する。
5.Dの見解によれば,事例Ⅲでは強盗致傷罪が成立する。

解答 2,3

KH2051R03-18K 強盗の罪 A

強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.甲は,銭湯の脱衣場で窃盗をしようと考え,客の財布を手に取って在中する金額を確認中,その様子を目撃した乙から声を掛けられたため,逮捕を免れる目的で,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて加療約1か月間を要する傷害を負わせた。この場合,甲には,事後強盗罪及び強盗致傷罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
2.甲は,電車内で寝ていた乙の財布を盗んで電車を降りたが,乙が目を覚まして追い掛けてきたため,逮捕を免れる目的で,乙に暴行を加えたところ,乙が転倒して重傷を負い,反抗が抑圧された状態に至った。この場合,甲の暴行の程度を問わず,甲には,強盗致傷罪が成立する。
3.甲は,留守宅に侵入して窃盗をしようと考え,金品を物色中に家人が帰ってきたら同人に反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて逃げる意図でサバイバルナイフを携帯し,住宅街を徘徊して侵入に適した留守宅を探したが,これを発見できず,侵入を断念した。この場合,甲には,強盗予備罪が成立する。
4.甲は,窃盗の目的で乙宅に侵入し,金品を物色中,乙に発見されたため,この機会に乙に暴行を加えて金品を奪おうと考え,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,金品を奪った。この場合,甲には,事後強盗罪が成立する。
5.甲は,乙宅に侵入して財布を盗んだ後,誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移動して財布内の現金を確認した。しかし,甲は,その金額に満足せず再度乙宅で窃盗をしようと考え,乙宅を出た30分後に乙宅に戻り,その玄関扉を開けようとしたところ,帰宅していた乙に発見されたため,逮捕を免れる目的で,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合,甲には,事後強盗罪が成立する。

解答 3

KH2090H30-12 詐欺罪 A

詐欺罪に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。 
1.航空会社の空港係員に対し,内心では,外国への不法入国を企てている知人を搭乗させるつもりであるのに,自らが搭乗するとうそを言って,あらかじめ航空券を購入していた航空便について搭乗券の交付を求め,同係員から搭乗券の交付を受けた場合,当該搭乗券についての詐欺罪が成立する。
2.自動車販売会社の販売員に対し,その代金を支払う意思も能力もないのに,これらがあるように装って自動車の購入を申し込み,分割払いの約定で同販売員から自動車の引渡しを受けた場合,代金完済まで同自動車の所有権が同会社に留保されていても,詐欺罪が成立する。
3.他人名義の国民健康保険被保険者証を利用して消費者金融から借入れをしようと考え,その他人に成り済まして,市役所職員を欺いて国民健康保険被保険者証の交付を受けた場合,詐欺罪が成立する。
4.自己名義の銀行預金口座に多額の誤った振込みがなされていることを知った上で,同銀行の窓口係員に対し,誤った振込みがあった旨を告知することなく同口座の残金全額の払戻しを請求し,同係員から即時にその払戻しを受けた場合,詐欺罪が成立する。
5.他人所有の土地を当該他人から買い受けた事実がないのに,当該他人から盗んだ印鑑を押して登記申請に必要な書類を偽造した上,これを登記官に提出し,当該他人に無断で,自己への所有権移転登記を完了させた場合,当該土地についての詐欺罪が成立する。

解答 5

KH2100R01-16 詐欺罪と他罪の成否 A

次のアからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,後記の各【結論】との組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。なお,【結論】の詐欺罪には詐欺未遂罪も含むものとする。
【記 述】
ア.他人のためにその事務を処理する者が,任務に背いて,その他人を欺く行為をし,同人を錯誤に陥らせて財物を交付させた。
イ.他人を恐喝するに際して,脅迫文言の中に虚偽の部分があり,それも同人に畏怖の念を生じさせる一材料となって,その畏怖の結果として,同人に財物を交付させた。
ウ.新聞販売店から集金業務を委託されている集金員が,集金した購読料を同店に持ち帰らずに自己の用途に費消するつもりであるのに,これを秘して,正規の手続や方式に従って購読者から購読料を集金し,自己の遊興費に費消した。
エ.保険金を詐取する目的で,火災保険の付された自己所有の家屋に放火した。
オ.他人に売買代金として偽造通貨を行使し,同人を錯誤に陥らせて財物を交付させた。
【結 論】
Ⅰ.詐欺罪のみが成立し得る。
Ⅱ.詐欺罪と他の罪の双方が成立し得る。
Ⅲ.詐欺罪は成立しない。 
1.アⅠ-イⅡ  2.アⅡ-ウⅢ  3.イⅢ-エⅢ  4.ウⅡ-オⅡ  5.エⅡ-オⅢ

解答 3 アⅠ,イⅢ,ウⅢ,エⅢ,オⅢ

KH2101R02-18 詐欺罪 A

次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
【事 例】
甲は,知人のAをだまして,A所有の土地・建物(以下「本件不動産」という。)を時価よりも割安な価格で入手した上,他人に転売してもうけを得ようと考えた。そこで,甲は,Aに対し,実際にはそのような事実はないのに,「本件不動産は,現在は公表されていないが,大規模な地盤沈下のおそれのある地域にある。」と伝えた上,「公表される前に,俺が買ってやる。」と言った。Aは,元々,本件不動産を子供に相続させるつもりであり,他人に売り渡すつもりはなかったが,甲の言葉を信じ,低額でも処分しようと思い,某月1日,甲との間で,通常の取引価額の半額程度である2000万円で本件不動産を売却する旨の売買契約を締結した。そして,甲は,同月3日,本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに,本件不動産の売買代金として,現金2000万円をAに支払い,同月5日,本件不動産の引渡しを受けた。
その後,甲は,乙との間で本件不動産に関する売買の交渉を行ったが,その過程で,乙は,甲がAをだまして相当安い価格で本件不動産を入手したことを知った。しかし,乙は,甲から,売買代金として通常の取引価額よりも低額である3000万円を提示されたことから,同月20日,甲との間で本件不動産の売買契約を締結し,同日,乙への所有権移転登記を行った。
一方,甲は,知人の丙に前記売買代金として現金3000万円を受け取らせ,B銀行の甲名義の預金口座に直ちに同代金を入金させることとし,同月18日,その旨を丙に指示した。丙は,それまでの経緯を知らないまま,甲の指示に従い,同月20日,乙から現金3000万円を受領した。ところが,丙は,多額の借金を抱えており,B銀行に向かう途中,「この現金を元に一もうけして借金返済に充てよう。」と考え,競馬場に行き,乙から受領した現金の全額を馬券購入に充てた。すると,総額で1000万円のもうけが出たので,丙は,同月21日,現金3000万円をB銀行の甲名義の預金口座に入金し,もうけに相当する現金1000万円を自己の借金返済に充てて費消した。
【記 述】
ア.甲には,本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で,詐欺既遂罪が成立する。
イ.甲が本件不動産の乙への所有権移転登記を行った行為には,横領罪が成立する。
ウ.乙には,本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で,詐欺既遂罪の幇助犯が成立する。
エ.乙が本件不動産を譲り受けた行為には,盗品等有償譲受け罪が成立する。
オ.丙は甲に財産上の損害を与えていないので,丙に横領罪は成立しない。

解答 3

KH2110H26-20K 詐欺横領盗品等罪 A

次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
【事 例】
甲は,知人のAをだまして,A所有の土地・建物(以下「本件不動産」という。)を時価よりも割安な価格で入手した上,他人に転売してもうけを得ようと考えた。そこで,甲は,Aに対し,実際にはそのような事実はないのに,「本件不動産は,現在は公表されていないが,大規模な地盤沈下のおそれのある地域にある。」と伝えた上,「公表される前に,俺が買ってやる。」と言った。Aは,元々,本件不動産を子供に相続させるつもりであり,他人に売り渡すつもりはなかったが,甲の言葉を信じ,低額でも処分しようと思い,某月1日,甲との間で,通常の取引価額の半額程度である2000万円で本件不動産を売却する旨の売買契約を締結した。そして,甲は,同月3日,本件不動産の自己への所有権移転登記を行うとともに,本件不動産の売買代金として,現金2000万円をAに支払い,同月5日,本件不動産の引渡しを受けた。
その後,甲は,乙との間で本件不動産に関する売買の交渉を行ったが,その過程で,乙は,甲がAをだまして相当安い価格で本件不動産を入手したことを知った。しかし,乙は,甲から,売買代金として通常の取引価額よりも低額である3000万円を提示されたことから,同月20日,甲との間で本件不動産の売買契約を締結し,同日,乙への所有権移転登記を行った。
一方,甲は,知人の丙に前記売買代金として現金3000万円を受け取らせ,B銀行の甲名義の預金口座に直ちに同代金を入金させることとし,同月18日,その旨を丙に指示した。丙は,それまでの経緯を知らないまま,甲の指示に従い,同月20日,乙から現金3000万円を受領した。
ところが,丙は,多額の借金を抱えており,B銀行に向かう途中,「この現金を元に一もうけして借金返済に充てよう。」と考え,競馬場に行き,乙から受領した現金の全額を馬券購入に充てた。すると,総額で1000万円のもうけが出たので,丙は,同月21日,現金3000万円をB銀行の甲名義の預金口座に入金し,もうけに相当する現金1000万円を自己の借金返済に充てて費消した。
【記 述】
ア.甲には,本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で,詐欺既遂罪が成立する。
イ.甲が本件不動産の乙への所有権移転登記を行った行為には,横領罪が成立する。
ウ.乙には,本件不動産の自己への所有権移転登記が完了した時点で,詐欺既遂罪の幇助犯が成立する。
エ.乙が本件不動産を譲り受けた行為には,盗品等有償譲受け罪が成立する。
オ.丙は甲に財産上の損害を与えていないので,丙に横領罪は成立しない。

解答 ア1,イ2,ウ2,エ1,オ2

KH2120H25-08Y 詐欺の罪 A

詐欺の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.国や地方公共団体が所有する財物は,刑法第246条第1項の詐欺罪における「財物」には当たらない。
2.家賃を支払う意思も能力もないのに,これがあるように装って大家をだましてアパートの一室を借り受けたhttps://youtu.be/0eZwOrinexM場合,刑法第246条第1項の詐欺罪が成立する。
3.商品買受けの注文の際,代金支払の意思も能力もないのに,そのことを告げることなく,単純に商品買受けの注文をした場合,その注文行為が刑法第246条第1項の詐欺罪における作為による欺罔行為となる。
4.相手方を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより相手方から財物の交付を受けたとしても,錯誤に陥ったことに相手方の過失が認められるときには,刑法第246条第1項の詐欺罪は成立しない。
5.知慮浅薄な未成年者を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより未成年者から財物の交付を受けた場合,刑法第248条の準詐欺罪が成立する。

解答 3

KH2130H26-08 電子計算機使用詐欺罪 B

次の1から5までの各事例における甲の罪責を判例の立場に従って検討した場合,甲に電子計算機使用詐欺罪が成立するものはどれか。
1.甲は,電磁的記録部分を偽造したキャッシュカードを使って現金を得ようと考え,これを乙銀行に設置された現金自動預払機に挿入して作動させ,これに保管されていた現金を引き出した。
2.甲は,消費者金融会社の無人契約機を使い,同無人契約機とオンラインで結ばれているオンラインセンターにいたオペレーター乙に対し,Xに成り済まして会員契約を締結した上,同無人契約機を操作して金銭の借入れを申し込み,甲をXと誤信した乙に同社の電子計算機を操作させ,同社名義の預金口座から甲の管理するX名義の預金口座に50万円を振り込ませた。
3.甲は,Aの所有する不動産を勝手に処分するために,X地方法務局の登記官乙に対し,Aの所有権登記がある不動産につき自己に所有権が移転した旨内容虚偽の申告をし,乙をして同法務局内の電子計算機に接続されたハードディスクに記録されていた同不動産の登記に関する電磁的記録をその旨書き換えさせた。
4.甲は,盗んだクレジットカードの名義人乙を装い,インターネットを使用した取引の決済に用いることができる電子マネーの購入手続として,乙の氏名やカード番号等の情報をインターネットを介してクレジットカード会社が使用する電子計算機に送信し,同電子計算機に接続されたハードディスクに乙が電子マネーを購入した旨の電磁的記録を作ってその電子マネーの利用権を取得した。
5.甲は,自己がインターネット上に開設した天気予報サイトのホームページの閲覧数を増やして広告収入を増やそうと考え,競合会社の電子計算機に接続されたハードディスクに記録されていた同社の天気予報サイトのホームページに関する電磁的記録を書き換えて予報が外れるようにさせたところ,自己の開設したサイトのホームページ閲覧数が増えて広告収入も増えた。

解答 4

KH2150H29-16 不法原因給付と横領 A

次の【見解】に関する後記アからオまでの各【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【見 解】
横領罪の目的物は,犯人が占有する他人の物であり,物の給付者において民法上その返還を請求できるものであることを要しないので,不法な目的で金銭を委託した場合,委託者に返還請求権が認められなくても,受託者がこれを領得する行為には,横領罪が成立する。
【記 述】
ア.この【見解】に対しては,民法第708条にいう「給付」に「委託」は含まれないとする立場を前提としなければならず,妥当でないとの批判ができる。
イ.この【見解】は,使途を定めて委託された金銭の所有権は受託者に移転しないとする立場と明らかに矛盾するものである。
ウ.この【見解】に対しては,受託者が民法第708条に基づいて委託者からの返還請求を拒む行為にも横領罪が成立することになりかねず,妥当でないとの批判ができる。
エ.この【見解】は,横領罪の保護法益が所有権であることを重視し,委託信任関係の破壊という点を全く考慮していない。
オ.この【見解】に対しては,不法原因給付の目的物の所有権は,給付者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として,受給者に帰属するに至ったと解すべきであるとする立場を前提とすると,横領罪にいう「他人の物」を領得したわけではないのに受託者に横領罪の成立を認めることになり,妥当でないとの批判ができる。
(参照条文)民法
第708条 不法な原因のために給付をした者は,その給付したものの返還を請求することができない。ただし,不法な原因が受益者についてのみ存したときは,この限りでない。
1.ア エ  2.ア オ  3.イ ウ 4.イ エ  5.ウ オ

解答 5

KH2190H28-02 横領罪の成否 A

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,甲に横領罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。 
ア.甲は,自己が所有する不動産を乙に売却したが,乙への所有権移転登記が完了する前に,同不動産を丙に売却し,丙への所有権移転登記を完了した。
イ.甲は,所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の月賦払いで,自動車販売会社から自動車を購入し,同自動車の引渡しを受けたが,3回分を支払った時点で,自己の借金の担保として,同自動車を金融業者に提供した。
ウ.甲は,乙から盗品を売却するよう依頼され,同盗品を丙に売却したが,その売却代金を着服した。
エ.甲は,自己が所有する不動産を乙に売却したが,乙への所有権移転登記が完了する前に,丙との間で金銭消費貸借契約を締結した事実及びその担保として同不動産に係る抵当権設定契約を締結した事実がないにもかかわらず,同不動産について,丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を完了した。
オ.甲は,自己が所有する不動産について,乙を権利者とする抵当権を設定したが,その抵当権設定登記が完了する前に,同不動産について,丙を権利者とする抵当権を設定し,その抵当権設定登記を完了した。

解答 ア1,イ1,ウ1,エ1,オ2

KH2191R02-02K 横領の罪 A

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,乙からの委託に基づき,同人所有の衣類が入った,施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ,衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,勝手に開錠し,中から衣類を取り出した。この場合,遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,甲には,横領罪が成立する。
2.甲は,乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管していたところ,乙に無断でその現金全てを抜き取り,自己の遊興費に費消した。この場合,甲には,横領罪が成立する。
3.株式会社の取締役経理部長甲は,同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合,甲が,会社の不利益を回避する意図を有していたとしても,当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので,甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど,専ら会社のためにしたとは認められないときは,甲には,業務上横領罪が成立する。
4.甲は,乙から某日までに製茶を買い付けてほしい旨の依頼を受け,その買付資金として現金を預かっていたところ,その現金を確実に補填するあてがなかったにもかかわらず,後日補填するつもりで自己の遊興費に費消した。この場合,甲がたまたま補填することができ,約定どおりに製茶の買い付けを行ったとしても,甲には,横領罪が成立する。
5.甲は,自己が所有し,その旨登記されている土地を乙に売却し,その代金を受領したにもかかわらず,乙への移転登記が完了する前に,同土地に自己を債務者とし丙を抵当権者とする抵当権を設定し,その登記が完了した。この場合,同抵当権が実行されることなく,後日,その登記が抹消されたとしても,甲には,横領罪が成立する。

解答 1,2

KH2200H25-18K 横領の罪 A

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上の支配力を有する状態を含まない。
2.株式会社の代表取締役には,同社の所有物について,横領罪の「占有」は認められない。
3.横領罪の「物」は,窃盗罪における「財物」と同義であり,不動産は横領罪の客体とはならない。
4.法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。
5.業務上横領罪の「業務」には,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務であれば,いかなる事務も含まれる。

解答 4

KH2201R03-08Y 横領の罪 A

横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1.所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の均等分割払いで,自動車販売会社から自動車を購入した者が,同車の引渡しを受け,3回分の支払を済ませた時点で,同車の売却代金を自己の生活費として費消するため,同社に無断で,第三者に同車を売却し,これを引き渡した場合,当該行為は,実質的には他人の所有権を侵害する行為ではないから,横領罪は成立しない。
2.スーパーマーケットでレジ係のアルバイトをしていた者が,担当するレジ内の売上金を自己の遊興費として費消するため,店長に無断で,同レジ内から売上金を取り出し,自己のバッグに入れて店外に持ち出した場合,当該行為は,他人の占有ではなく,その所有権を侵害する行為であるから,業務上横領罪が成立する。
3.所有者から動産を賃借している者が,同動産の売却代金を自己の生活費として費消するため,所有者に無断で,第三者に同動産の売却を申し入れたが,同人から買受けの意思表示がない場合,他人の所有権を侵害する状態には至っていないから,横領罪は成立しない。
4.所有者から委託を受けて不動産を占有する者が,所有者に無断で,金融機関を抵当権者とする抵当権を同不動産に設定してその旨の登記を了した後において,同不動産の売却代金を自己の用途に費消するため,更に所有者に無断で,第三者に同不動産を売却してその旨の登記を了した場合,先行する抵当権設定行為について横領罪が成立する場合であっても,後行する所有権移転行為について,横領罪が成立する。
5.窃盗犯人から盗品の売却を依頼された者が,その売却代金を自己の用途に費消するため着服した場合,当該行為は,他人の所有権を侵害する行為であるものの,窃盗犯人との間の委託信任関係は法律上保護に値しないから,横領罪は成立しない。

解答 4

KH2240H27-12 盗品等に関する罪 A

次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。 
1.盗品等無償譲受け罪が成立するためには,無償譲受けについて契約を締結しただけでは足りず,盗品等が現実に移転されることが必要であるが,盗品等有償譲受け罪は,有償譲受けについて契約を締結しただけで成立する。
2.盗品等の売買をあっせんすれば,あっせん自体が無償であっても,盗品等有償処分あっせん罪が成立する。
3.盗品等有償譲受け罪の客体に対する故意は,財産罪に当たる行為によって領得された物であることの認識があれば足り,いかなる財産罪に当たるかの認識までは不要である。
4.盗品等の売買をあっせんすれば,盗品等が現実に移転されなくても,盗品等有償処分あっせん罪が成立する。
5.盗品等有償譲受け罪の犯人が本犯である窃盗犯人の配偶者である場合,当該盗品等有償譲受け罪の犯人について,その刑は免除される。

解答 1

KH2250H29-12 盗品等に関する罪 A

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。 
ア.甲は,自転車Aが,乙が自ら窃取した自転車Bからサドルを取り外し,乙所有の別の自転車本体に容易に着脱可能な状態で取り付けて完成させたものであると知りつつ,乙から自転車Aを購入した。甲には盗品等有償譲受け罪が成立する。
イ.甲は,盗品であると知りつつ,窃盗犯人乙から依頼を受けて保管していた宝石を乙に返却した後,改めて乙から依頼を受け,預かった同宝石を事情を知らない丙に売却した。甲には盗品等有償処分あっせん罪のみが成立する。
ウ.甲は,刑法第41条の刑事未成年である乙が窃取した物を,盗品であると知りつつ,乙から無償で譲り受けた。甲には盗品等無償譲受け罪は成立しない。
エ.甲は,親族関係にない窃盗犯人乙から盗品の保管を依頼された。甲は,同盗品が,甲の実父丙の自宅から窃取された丙所有の物であると知りつつ,乙からの依頼を受け入れて,同盗品を保管した。甲は盗品等保管罪の刑が免除される。
オ.甲は,妻乙が,親族関係にない窃盗犯人丙から盗品であると知りつつ購入した物を,乙から依頼を受け,盗品であると知りつつ,乙の指定した場所まで運んだ。甲は盗品等運搬罪の刑が免除される。

解答 ア1,イ2,ウ2,エ2,オ2

KH2251R02-10Y 盗品等に関する罪 B

盗品等に関する罪についての次のアからエまでの各記述を判例の立場に従って検討し, 正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.賄賂として収受された現金は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たる。
イ.窃取された物品を買い受けた者が,平穏に,かつ,公然とその占有を開始し,その際,善意無過失である場合,当該物品は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たる余地はない。
ウ.会社が保管する秘密資料を窃取した者が,自宅で,そのコピーを作成した場合,当該コピーは,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たらない。
エ.親族間の犯罪に関する特例(刑法第244条)により刑が免除される犯人が窃取した物品は,「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たらない。

解答 ア2,イ2,ウ1,エ2

KH2290R01-02Y 文書毀棄罪 B

文書等毀棄罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.公用文書等毀棄罪における「公務所の用に供する文書」とは,公務所又は公務員が作成したもので,現に公務所において使用され,又は使用の目的をもって保管されている文書のことをいう。
2.偽造された文書や未完成の文書は,公用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。
3.保存期間が経過した後の文書は,公用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。
4.私用文書等毀棄罪における「権利又は義務に関する他人の文書」とは,権利又は義務の存否・得喪・変更・消滅等を証明し得る他人所有の文書のことをいう。
5.手形や小切手等の有価証券は,私用文書等毀棄罪の客体とはなり得ない。

解答 4

KH2320H28-16K 財産犯の成否 A

次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。 
1.甲は,警察官から職務質問をされそうになったのでその場から急いで立ち去ろうと考え,たまたま路上に駐車されていた他人所有の自動車に乗り込み,適当な場所で乗り捨てるつもりで,同自動車を運転してその場から走り去った。この場合,甲には,不法領得の意思が認められ,窃盗罪が成立する。
2.甲は,タクシーの売上金を奪おうと考えて,乗客を装ってタクシーに乗り込み,行き先を指定して人気のない場所に誘導した上,同所で,乗車料金を請求してきた運転手の首元に鋭利なガラス片を突き付けて売上金を渡すよう要求したが,同運転手から抵抗されて売上金を手に入れることができず,そのままその場から立ち去った。この場合,甲には強盗未遂罪のみが成立する。
3.甲は,視力回復の効果が全くない飲料について,その効果が絶大で入手困難なものと偽って,信じた客にこれを販売し,その代金として現金の交付を受けたが,その販売価格は適正,妥当なものであった。この場合,甲には詐欺罪は成立しない。
4.甲は,乙がその同居の親族から盗んできたカメラを,盗品であると知りながら乙から購入した。この場合,乙は,窃盗罪についての刑が免除されることから,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない。
5.甲は,乙所有の土地について,価格が暴落すると偽って,これを信じた乙との間で,時価の半額で同土地を買い受ける旨の売買契約を締結した。この場合,その売買契約が成立したことのみをもって,甲には詐欺既遂罪が成立する。

解答 1

KH2361R02-10 親族間の犯罪に関する特例 A

親族間の犯罪に関する特例について次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。 
1.甲が,実母乙の使用するタンスから,乙がその友人丙から預かり同タンスに保管していた丙所有の宝石を窃取した場合,甲の窃取行為について刑は免除されない。
2.甲が,実父乙の内縁の妻である丙が乙から預かり保管していた乙所有の時計を窃取した場合,甲の窃取行為について刑は免除されない。
3.甲は,家庭裁判所から実父乙の成年後見人に選任されていたところ,後見の事務として業務上預かり保管中の乙の預金を引き出して自己の借金の返済に充てた場合,甲の横領行為について刑は免除されない。
4.甲が,友人乙を教唆して,乙の実父丙が所有し,管理している自動車を窃取させた場合,甲の窃盗教唆行為について刑は免除されない。
5.甲が,同居していない祖父乙を恐喝して同人から現金の交付を受けた場合,甲の恐喝行為について刑は免除されない。

解答 5

KH2370H24-15K 各種犯罪 A

次の【事例】に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。
【事 例】
甲と乙は,V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに,同人に軽度の暴行を加え,これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて,損害賠償金の名目で50万円を支払わせ,これを分配することを計画した。乙は,計画に従い,同店に行き,Vに対し,「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと,この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上,Vの額を手の平で軽くたたいた。Vは,これをよけようとした際,バランスを崩して転倒し,全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
Vは,乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが,乙の要求に応じないと,更に暴力を振るわれたり,店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し,手持ちの現金30万円を乙に渡し,残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
乙は,同店を出て,甲と会い,前記経緯を説明した上,Vから受け取った30万円のうち15万円を分け前として甲に渡した。
乙は,翌日,同店を訪れてVから残りの20万円を受け取ろうとしたが,通報を受けた警察官が同店近くにいたので,20万円の受取は断念した。
乙は,甲に事前に相談することなく,腹いせに,「V経営の食料品店で買った弁当を食べた客が食中毒になった。」という虚偽の事実が書かれたビラを多数の者に配った。
なお,甲は,乙がVに怪我を負わせることや前記ビラを配ることを予想していなかった。
【記 述】
1.Vに怪我を負わせたことについて,甲には,傷害罪は成立しない。
2.Vに怪我を負わせたことについて,乙には,傷害罪が成立する。
3.Vに30万円を交付させたことについて,甲及び乙には,恐喝既遂罪が成立する。
4.虚偽のビラを配ったことについて,甲には,信用毀損罪も業務妨害罪も成立しない。
5.乙から15万円を受け取ったことについて,甲には,盗品等無償譲受け罪が成立する。

解答 1,5

KH2380H24-06K 詐欺罪・恐喝罪 A

詐欺罪又は恐喝罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを全て選んだ場合の組合せは,後記1から7までのうちどれか。
ア.甲は,交通事故を装い保険会社から保険金をだまし取ろうと企て,自己の運転する自動車を道路脇の電柱に衝突させて自ら怪我をした。この場合,甲には,自動車を電柱に衝突させた時点で,詐欺未遂罪が成立する。
イ.甲は,警察官でないのに警察官を装い,窃盗犯人である乙に対し,「警察の者だが,取り調べる必要があるから差し出せ。」などと虚偽の事実を申し向けて盗品の提出を求め,これに応じなければ直ちに警察署に連行するかもしれないような態度を示したところ,乙は,逮捕されるかもしれないと畏怖した結果,甲に盗品を交付した。この場合,甲には,恐喝既遂罪が成立する。
ウ.甲は,無銭宿泊を企て,宿泊代金を支払う意思も能力もないのに,これらがあるように装い,民宿を営む乙に対し,宿泊を申し込んだところ,乙は,他の民宿から甲が無銭宿泊の常習者であることを聞いていたため,甲に宿泊代金支払の意思も能力もないことが分かったが,甲に憐憫の情を抱き,甲を宿泊させた。この場合,甲には,詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
エ.甲は,通行中の乙から現金を喝取することを企て,乙に対し,反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫を加えたところ,乙は,甲の脅迫により畏怖し,甲が乙の上着の内ポケットに手を入れて財布を抜き取ることを黙認した。この場合,甲には,恐喝未遂罪が成立するにとどまる。
オ.甲は,偽札を作る意思がないのに,乙に対し,一緒に偽札を作ることを持ちかけた上,偽札を作る機材の購入資金にすると嘘を言って資金の提供を求め,その旨誤信した乙から同資金として現金の交付を受けた。この場合,甲には,詐欺未遂罪も,詐欺既遂罪も成立しない。 
1.アイウ  2.アエオ  3.アオ  4.イウ  5.イオ  6.エ  7.エオ

解答 2

KH2390H27-10K 強盗罪等 A

次の【記述】中の①から⑨までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【記 述】
強盗罪における強取とは,相手方の反抗を①(a.困難にする・b.抑圧する)に足りる程度の暴行・脅迫を加え,相手方の②(c.意思に反し・d.瑕疵ある意思に基づき),相手方の占有に属する財物を自己又は第三者の占有に移転することをいう。強取と③(e.窃盗罪における窃取・f.恐喝罪における喝取)との区別は,実行行為としての暴行・脅迫の有無であり,強取と④(g.窃盗罪における窃取・h.恐喝罪における喝取)との区別は,相手方の反抗を①(a.困難にする・b.抑圧する)に足りる程度の暴行・脅迫であるか否か,つまり,暴行・脅迫の程度である。それゆえ,恐喝罪は,⑤(i.委託物横領罪・j.詐欺罪)と同様,相手方の⑥(k.意思に反し・l.瑕疵ある意思に基づき),財物を交付させる犯罪である。そして,強盗罪や⑦(m.窃盗罪・n.恐喝罪)のように,相手方の②(c.意思に反し・d.瑕疵ある意思に基づき),相手方の占有に属する財物を自己又は第三者の占有に移転する犯罪を⑧(o.奪取罪・p.交付罪)と呼び,恐喝罪や⑤(i.委託物横領罪・j.詐欺罪)のように,相手方の⑥(k.意思に反し・l.瑕疵ある意思に基づき),相手方の占有に属する財物を自己又は第三者の占有に移転する犯罪を⑨(q.奪取罪・r.交付罪)と呼んで区別することができる。 
1.①a ②c ③e ④h ⑤j ⑥k ⑦n ⑧p ⑨q
2.①b ②c ③e ④h ⑤j ⑥l ⑦m ⑧p ⑨q
3.①a ②d ③f ④g ⑤i ⑥l ⑦n ⑧p ⑨q
4.①b ②d ③f ④g ⑤i ⑥k ⑦m ⑧o ⑨r
5.①b ②c ③e ④h ⑤j ⑥l ⑦m ⑧o ⑨r

解答 5

KH2400H28-20K 財産犯の成否 A

次の【事例】に関する後記アからエまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
甲は,内縁の妻Aと同居していたところ,遊興費に窮し,A所有のドレス20着及び指輪1個と,A管理のA名義のクレジットカード1枚(その規約上,会員である名義人のみが利用でき,他人への譲渡,貸与等が禁じられ,また,加盟店は,利用者が会員本人であることを善良な管理者の注意義務をもって確認することが定められている。)を,Aの部屋から盗み出した。
甲は,丙にドレス及び指輪の売却を仲介してもらおうと考え,これらの盗品を丙方に運ぼうとした。しかし,甲は,ドレスの数が多く一人で運ぶのが困難であったため,乙に対し,ドレスと指輪が盗品であることを話した上で,丙宅への運搬を手伝ってほしいと頼んだ。乙がこれを了解したので,甲及び乙は,指輪とドレスのうち10着を甲が,残りのドレス10着を乙が,それぞれ運転する自動車に載せて丙宅へ運ぶこととし,これらの盗品を丙宅へ運んだ。
丙は,ドレス及び指輪を,甲がAから盗んできたものであることを承知した上で甲から預かり,甲からの依頼どおりに売却先を探すこととしたが,指輪についてはAが母親の形見として大切にしていたものであることを知っていたことから,高値でAに売り付けようと考え,後日,Aに対し,代金50万円で指輪を売却し,その売却代金を甲に渡した。
また,甲は,Aから盗んだクレジットカードを担保として丁から現金30万円を借りたが,その際,丁に対し,「これはA名義のクレジットカードだけど,Aから使用を許されており,お前がこのカードを利用して買物をしても,その利用代金はAにおいて決済される。」と伝えた。その後,甲が丁に対して金を返さなかったことから,丁は,甲の話を信じ,デパートにおいて,Aに成り済まして同カードを用いて腕時計1個を購入した。
【記 述】
ア.甲がAの指輪を盗んだことにつき,甲の行為は窃盗罪に該当するが,Aは甲の内縁の妻であるから,刑法第244条第1項により刑が免除される。
イ.乙が盗品のドレス10着を,窃盗犯人である甲が指輪とドレス10着を,それぞれ丙宅まで運搬したことにつき,乙は甲と共同してこれら盗品を運搬したのであるから,乙にはドレス20着全てと指輪につき盗品等運搬罪が成立する。
ウ.丙がAを相手方として指輪の売却をあっせんしたことにつき,Aは窃盗の被害者であるが,丙には盗品等処分あっせん罪が成立する。
エ.丁がA名義のクレジットカードで腕時計を購入したことにつき,丁は,Aから同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金がAにおいて決済されるものと信じていたので,丁に詐欺罪は成立しない。 
1.ア イ  2.ア ウ  3.イ ウ  4.イ エ  5.ウ エ

解答 3

KH2410H29-08 不法領得の意思 A

不法領得の意思に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。 
ア.甲は,町議会議員選挙に際し,特定の候補者を当選させるため,後日その候補者の氏名を記載して投票の中に混入することにより同候補者の得票数を増加させる目的で,投票所管理者乙の保管する同選挙の投票用紙を密かに持ち出した。この場合,甲に不法領得の意思は認められず,窃盗罪は成立しない。
イ.A市建設部長である甲は,不正工事の発覚を恐れ自宅に隠匿する目的で,自己が業務上保管している公文書である市立小学校の設計書を市役所外に持ち出した。この場合,甲に不法領得の意思は認められず,業務上横領罪は成立しない。
ウ.甲は,自宅で分解して売却できそうな部品を中古部品屋に売却する目的で,知人乙所有の自動車を乙に無断で運転してその場から走り去った。この場合,甲に不法領得の意思は認められず,窃盗罪は成立しない。
エ.新聞購読料の集金業務に従事する甲は,購読料として集金した現金を遊興のため全額費消して横領した後,その発覚を免れる目的で,新たに購読料として集金した現金を穴埋めに充てた。この場合,穴埋めに充てた現金について,甲に不法領得の意思は認められず,業務上横領罪は成立しない。
オ.甲は,乙宛てに送達されてきた支払督促状を乙に成り済まして受領して廃棄することにより,送達が適式になされたものとして支払督促の効力を生じさせ,乙所有の財産を不正に差し押さえようと考え,郵便配達員丙を欺いて同督促状の交付を受けて廃棄した。この場合,甲に不法領得の意思は認められず,詐欺罪は成立しない。

解答 ア2,イ2,ウ2,エ2,オ1

KH2420R01-02 強盗殺人未遂罪 A

次の【事例】に関する後記アからエまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。
【事 例】
甲及び乙は,宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は,甲が,宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し,別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し,甲の退室後に,乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
甲は,計画に従って,ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し,それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し,丙に重傷を負わせたが,殺害には至らなかった。
【記 述】
ア.甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合,甲及び乙に,事後強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。
イ.甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合,同一の被害を二重に評価することはできないため,甲及び乙が,丙から宝石の代金相当額の支払を免れる意図を持っていたとしても,甲及び乙に,殺人未遂罪が成立するにとどまり,いわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。
ウ.甲及び乙が,丙から宝石の代金相当額の支払を免れる意図を持っていたとしても,丙がこれを免除又は猶予する旨の財産的処分行為をしていないため,甲及び乙に,いわゆる二項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。
エ.乙が丙の腹部を包丁で刺した行為が,丙から宝石の占有を奪取する手段とならないと考えた場合,甲及び乙に,いわゆる一項強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。 
1.0個  2.1個  3.2個  4.3個  5.4個

解答 2 ア〇,イ×,ウ×,エ〇

KH2430R01-14 財産犯総合 B

学生A,B及びCは,次の各【事例】を題材にして,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑧までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
Ⅰ.店員甲は,自己の担当する売場の商品を勤務時間中にこっそり持ち出して,後日転売した。
Ⅱ.店員甲は,店長乙に言われて,店の売掛金を集金したが,これを持ち逃げした。
Ⅲ.甲は,パーティーで使うために友人乙から借りたネックレスを,無断で質入れした。
Ⅳ.甲は,登記名義を有する所有者乙から自己使用を条件に借りた土地を,しばらく自己使用した後,無断で丙に賃貸して利益を得た。
【会 話】
学生A.事例Ⅰにおいて,甲にはどのような財産犯が成立するだろうか。
学生B.店の商品であれば,①(a.店長・b.店員)が占有しているといえるから,②(a.横領罪・b.窃盗罪)が成立すると思う。
学生C.反対だ。占有は,③(a.店長・b.店員)にあると認めるべきだから,④(a.横領罪・b.窃盗罪)が成立すると考える。
学生B.事例Ⅱにおいて,Cさんの見解によれば,甲に(④)は成立するのか。
学生C.成立すると考える。
学生A.その結論は,事例Ⅱにおける判例の立場と一致しない。では,Cさんは,事例Ⅲにおいても,甲に(④)が成立すると考えるのか。
学生C.いや,成立しないと考える。物を人から借りている場合は別だ。
学生B.そうだとすると,Cさんは,事例Ⅳにおいて,甲には,どのような財産犯が成立すると考えるのか。
学生C.土地のような不動産の場合,動産とは異なり,その占有は,⑤(a.登記名義を有する者・b.現実に不動産を占有・使用する者)にあると認めるべきだと思うから,土地に対する占有の程度・態様が著しく変更された場合,甲には⑥(a.横領罪・b.不動産侵奪罪)が成立する可能性があると考える。
学生A.そうだろうか。⑦(a.横領罪にいう「横領」・b.不動産侵奪罪にいう「侵奪」)があったとはいえないのではないか。むしろ,Cさんの見解によれば,⑧(a.背任罪・b.横領罪)の成否を検討すべきだと思う。 
1.①a ②b ③b ④a ⑤a ⑥b ⑦b ⑧a
2.①a ②b ③b ④a ⑤b ⑥a ⑦a ⑧b
3.①b ②a ③a ④b ⑤a ⑥b ⑦b ⑧a
4.①b ②a ③a ④b ⑤a ⑥b ⑦b ⑧b
5.①b ②a ③a ④b ⑤b ⑥a ⑦a ⑧b

解答 3