第4編 公判 第1章 公判総論
KS1270H27-24Y 犯罪被害者 A
次のアからオまでの各記述のうち,犯罪の被害者であるVを証人として尋問する場合とVに被害に関する心情等の意見を陳述させる場合の双方に当てはまるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.Vには,法律に特別の定めのある場合を除いて,宣誓をさせなければならない。
イ.一定の場合,被告人とVとの間で相互に相手の状態を認識できないようにするための措置を採ることができる。
ウ.尋問又は陳述が認められる被告事件には,罪名による制限がない。
エ.審理の状況その他の事情を考慮して,Vに法廷で供述又は陳述させるのが相当でないと認めるときは,その供述又は意見が記載された書面を提出させることができる。
オ.Vの供述又は陳述を犯罪事実の認定に用いることができる。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ
解答 3
KS1280H28-25Y 被害者参加制度 B
被害者参加制度における被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の法律上定められた権限に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.裁判員裁判の対象事件において,公判前整理手続期日に出席することができる。
イ.情状に関する事項について,証拠調べを請求することができる。
ウ.裁判所が申出を相当と認めるときは,情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,その証人を尋問することができる。
エ.裁判所が申出を相当と認めるときは,訴因として特定された事実の範囲内で事実及び法律の適用について意見を陳述することができる。
オ.上訴をすることができる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 4
KS1281R02-22Y 被害者参加制度 A
被害者,又は被害者参加人(被害者参加制度における被害者参加人をいう。)に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。
ア.被害者は,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を陳述することができ,裁判所は,その陳述を刑の量定のための証拠とすることができる。
イ.被害者参加人は,当該被告事件についての刑事訴訟法の規定による検察官の権限の行使に関し,検察官に対して意見を述べることができ,この場合において,検察官は,当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは,必要に応じ,当該意見を述べた者に対し,その理由を説明しなければならない。
ウ.情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項についてその証人を尋問することの申出を被害者参加人から受けた検察官は,申出に係る尋問事項について自ら尋問する場合を除き,意見を付して,この申出を裁判所に通知するものとされている。
エ.被害者参加人は,裁判所の許可を得て,刑事訴訟法の規定による意見の陳述をするため被告人に対して質問をすることができるが,裁判長は,その質問が既にされた質問と重複するとき,これを制限することができる。
オ.被害者参加人は,裁判所の許可を得て,事実又は法律の適用について意見を陳述することができ,裁判所は,その陳述を犯罪事実の認定のための証拠とすることができる。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 2 ア〇,イ〇,ウ〇,エ〇,オ×
第4編 公判 第3章 公判の準備手続
KS1440H27-22Y 公判前整理手続 A
公判前整理手続に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものを2個選びなさい。(問改)
1.被告人は,公判前整理手続期日への出頭が義務付けられている。
2.検察官は,証明予定事実を記載した書面を提出した後,その内容を追加・変更することはできない。
3.弁護人は,検察官請求証拠の開示を受けた後,検察官に対し,それ以外の証拠の標目を記載した一覧表の交付を請求する権利を有する。
4.公判前整理手続に付された事件については,裁判所は,公判期日において,公判前整理手続の結果を明らかにしなければならない。
5.脅迫被告事件について,公判前整理手続に付された場合,その公判審理に当たり,弁護人なくして開廷しても適法である。
解答 3,4
KS1450H28-20Y 公判前整理手続 A
公判前整理手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.裁判所は,裁判員裁判の対象事件ではない事件についても,必要があると認めるX61ときは,公判前整理手続に付することができる。
イ.裁判所は,公判前整理手続において,弁護人から,被告人の自白調書につきその自白の任意性を争う旨の意見が述べられた場合には,公判前整理手続の終結までに当該自白調書の証拠能力を判断しなければならない。
ウ.検察官は,公判前整理手続における証拠開示に関する裁判所の決定に対して,不服申立てをすることができない。
エ.裁判所は,公判前整理手続に付された事件の公判において,検察官,被告人及び弁護人が公判前整理手続において取調べを請求しなかった証拠について,やむを得ない事由によって請求できなかった場合でなくても,必要と認めるときは,職権で証拠調べをすることができる。
オ.裁判所は,事件を公判前整理手続に付した場合,同手続を終結させて公判を開始した後には,期日間整理手続に付することができない。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ
解答 2
KS1451R03-21Y 公判前整理手続 B
公判前整理手続に付された刑事事件の第一審公判において行われる次のアからオまでの各手続を先に行われるものから時系列に沿って並べた場合,正しいものは,後記1から6までのうちどれか。
ア.黙秘権等の告知並びに被告人及び弁護人の陳述の機会
イ.弁護人の冒頭陳述
ウ.公判前整理手続の結果の顕出
エ.起訴状朗読
オ.検察官の冒頭陳述
1.ウアエオイ 2.ウエアオイ 3.ウオイエア 4.エアウオイ 5.エアオイウ 6.エオアイウ
解答 5
第4編 公判 第4章 公判手続
KS1501R02-21Y 被告人質問 A
第一審の被告人質問に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.被告人質問を実施するためには,証拠調べの請求や決定を必要としない。
イ.被告人質問を実施する場合には,他の証拠が全て取り調べられた後にこれを行わなければならない。
ウ.被告人質問を実施する場合には,まず裁判長が質問をしなければならず,弁護人がこれに先んじて質問をすることはできない。
エ.被告人は,供述を拒む場合に,その理由を明らかにする必要はない。
オ.被告人が任意に供述をする場合には,共同被告人の弁護人は,裁判長に告げて,被告人の供述を求めることができる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
解答 3
KS1550H27-19Y 公判手続 A
公判手続に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.証人尋問が予定された公判期日に,勾留されている被告人が,召喚を受け,正当な理由がないのに出頭を拒否し,引致しようとする刑事施設職員に暴力を振るって出頭しないときは,裁判所は,被告人が出頭しないまま,その公判期日において証人尋問を行うことができる。
イ.弁護人が行った証拠調べに関する異議の申立てについて,裁判所が決定で棄却したのに対し,弁護人は,その判断に不服があるときでも,重ねて異議を申し立てることはできない。
ウ.被告人に弁護人があるときは,判決宣告を行うための公判期日に弁護人が出頭しなければ,裁判所は,判決を宣告することができない。
エ.同一事件の共犯者である甲と乙が,共同被告人として併合審理を受けている場合,検察官が,乙のためにのみその供述録取書の証拠調べを請求したとき,甲及び甲の弁護人は,これに対して意見を述べる権利がある。
オ.公判前整理手続に付された事件について,被告人又は弁護人は,証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは,検察官の冒頭陳述に引き続き,必ず冒頭陳述をしなければならない。
解答 ア1,イ1,ウ2,エ2,オ1
KS1560R01-20Y 被害者特定事項 B
被害者特定事項の秘匿に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.強制わいせつ致死事件の被害者の兄弟姉妹は,被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないよう申し出ることはできない。
イ.傷害事件の被害者は,犯行の態様,被害の状況その他の事情により,被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがある場合,被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないよう申し出ることができる。
ウ.被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされた場合,被害者を証人として尋問する際には,被告人と被害者との間で相互に相手の状態を認識することができないようにするための遮へい措置を講じなければならない。
エ.被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定がされた場合,裁判長は,弁護人の尋問が被害者特定事項にわたるときは,当該尋問を必ず制限しなければならない。
オ.被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定に対して,抗告することはできない。
1.ア ウ 2.イ ウ 3.イ オ 4.エ オ 5.ア エ
解答 3
KS1580H27-23Y 裁判員裁判 A
裁判員裁判に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.裁判員裁判の対象事件であっても,被告人の明示の意思に反するときは,裁判員の参加する合議体により審理・裁判をすることはできない。
イ.裁判所は,裁判員裁判の対象事件については,必ず当該事件を公判前整理手続に付さなければならない。
ウ.裁判員裁判の公判において,被告人以外の者の供述を証拠とする場合,その者が供述不能である場合を除き,常にその者を証人として尋問しなければならない。
エ.裁判員は,犯罪事実の認定に関する事項につき,裁判長に告げて,被告人に対し,直接質問することができる。
オ.裁判員裁判により言い渡された判決につき,検察官は,刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立てをすることはできない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ
解答 3
KS1590H30-23Y 裁判員裁判 A
裁判員裁判に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.裁判員の参加する合議体の構成は,原則として,裁判官3人,裁判員6人である。
イ.裁判員の選任手続は,公開の法廷で行われる。
ウ.検察官が,裁判員候補者につき不選任の請求をする場合,必ず理由を示さなければならない。
エ.補充裁判員は,裁判員の員数が不足した場合に,不足した裁判員に代わって裁判員に選任されるが,選任されるまでは,訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧することはできない。
オ.法令の解釈に係る判断については,裁判官のみの合議によってなされる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
解答 2
第4編 公判 第5章 審判の対象
KS1620H30-21Y 訴因 A
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.共謀共同正犯において,「共謀」は,罪となるべき事実にほかならないから,訴因においてその存在を明示することを要し,これを認定するためには厳格な証明によらなければならない。
イ.殺人罪の共同正犯において,実行行為者が誰であるかは,罪となるべき事実の特定に不可欠とはいえないものの,一般的に,被告人の防御にとって重要な事項であるから,検察官は,訴因に実行行為者を明示しなければならない。
ウ.検察官において,共謀共同正犯の存在に言及することなく,被告人が1人で原動機付自転車を窃取したという窃盗の訴因で公訴を提起した場合に,裁判所が,証拠上,他に実行行為を行っていない共謀共同正犯者が存在するとの心証を得たときは,被告人1人の行為により犯罪構成要件の全てが満たされたと認めるときであっても,検察官に対し,訴因の変更を積極的に促し,又はこれを命じなければならない。
エ.被告人が共謀共同正犯として起訴された事件において,検察官が主張せず,被告人側も防御活動を行っていない日時における謀議について,裁判所が,争点としてこれを顕在化させる措置を採ることなく,その日時における謀議への被告人の関与を認定したとしても,取り調べた証拠から認定したものである限り,被告人に不意打ちを与え,その防御権を不当に侵害するものとして違法となることはない。
オ.被告人及びAを共同正犯とする殺人被告事件において,実行行為者が誰であるかが争点となり,審理を尽くしても実行行為者を特定するに至らなかった場合には,裁判所は,実行行為者につき,「被告人若しくはA又はその両名」と認定し,その旨を罪となるべき事実として判示することが,許されることがある。
1.ア イ 2.イ ウ 3.ウ エ 4.エ オ 5.ア オ
解答 5
KS1621R02-23Y 訴因 B
次の【事例】に関する教授と学生AないしDの【会話】のうち,誤った発言をしている学生は何人いるか。後記1から5までのうちから選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
【事例】
甲は,令和2年3月1日,H市内の甲方において,乙から現金30万円を受け取り,同日,同所において,公務員である丙に対して,乙から受け取った同現金30万円を交付した。
【会話】
教 授:この事例について,検察官が,「甲は,丙と共謀の上,令和2年3月1日,H市内の甲方において,乙から賄賂金30万円を収受した。」という収賄罪の共同正犯の訴因で起訴したとします。審理の結果,裁判所が,当該賄賂金の授受があった日は,令和2年3月10日であり,場所は,H市内の丙方であるとの心証を形成した場合,裁判所は,どうすべきですか。
学生A:訴因の機能は,裁判所に対し審判の対象を限定するとともに,被告人に対し防御の範囲を示すことにあります。審理の経過に鑑み,犯罪の実行行為がなされた日時場所について,訴因と異なる日時場所を認定することにより,被告人に不意打ちを与える場合には,その防御に実質的な不利益を与えることになります。その場合には,訴因変更の手続を経ずに,「甲は,丙と共謀の上,令和2年3月10日,H市内の丙方において,乙から賄賂金30万円を収受した。」という事実を認定することはできません。
学生B:裁判所は,検察官に対して,心証に沿った事実を内容とする訴因への変更を促し,検察官が応じない場合には,訴因の変更を命ずることが考えられます。
学生C:裁判所は,検察官が訴因変更命令に応じなかったとしても,訴因変更命令により訴因が変更されたものとして,「甲は,丙と共謀の上,令和2年3月10日,H市内の丙方において,乙から賄賂金30万円を収受した。」という事実を認定して,有罪判決を言い渡すことができます。
教 授:それでは,裁判所は,審理の結果,甲が,令和2年3月1日,H市内の甲方において,乙から現金30万円を受け取り,同日,同所において,公務員である丙に対して,同現金30万円を交付した事実は間違いないが,収賄罪の共同正犯ではなく,「甲は,乙と共謀の上,丙に対し,賄賂金30万円を供与した。」という贈賄罪の共同正犯が成立するとの心証を形成したとします。その場合,裁判所は,どうすべきですか。
学生D:この場合,一連の同一の行為についての法的評価を異にするにすぎないので,訴因変更の手続を経ることなく,贈賄罪の共同正犯を認定して,有罪判決を言い渡すことができます。
1.0人 2.1人 3.2人 4.3人 5.4人
解答 3 A〇,B〇,C×,Ⅾ×
KS1640H28-21Y 訴因変更の要否 A
次の【記述】は,訴因変更の要否に関する最高裁判所の決定からの引用である。【記述】中の①から④までの( )内から適切な語句を選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
【記 述】
殺人罪の共同正犯の訴因としては,その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって,それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから,訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても,①(a.審判対象の画定 b.被告人の防御)という見地からは,訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ,実行行為者がだれであるかは,一般的に,②(a.審判対象の画定 b.被告人の防御)にとって重要な事項であるから,当該訴因の成否について争いがある場合等においては,③(a.他の犯罪事実との識別 b.争点の明確化)などのため,検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ,検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上,判決においてそれと実質的に異なる認定をするには,原則として,訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら,実行行為者の明示は,前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから,少なくとも,被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし,④(a.被告人に不意打ちを与えるものではない b.他の犯罪事実との識別を損なうものではない)と認められ,かつ,判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,例外的に,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。
1.①a ②b ③a ④a
2.①a ②b ③b ④a
3.①a ②b ③b ④b
4.①b ②a ③a ④a
5.①b ②a ③a ④b
解答 2
KS1650H29-21Y 訴因変更 A
訴因変更に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.「乙が公務員Aに賄賂を供与した際,これを幇助した。」という贈賄幇助の訴因で起訴された甲について,「乙と共謀の上,公務員Aに賄賂を供与した。」という贈賄の共同正犯の事実を認定するには,訴因変更の手続を要しない。
イ.「Aを脅迫して現金を強取した。」という強盗の訴因で起訴された甲について,脅迫が相手方の反抗を抑圧するほど強度ではなかったことを理由に「Aを脅迫して現金を交付させた。」という恐喝の事実を認定するには,訴因変更の手続を経なければならない。
ウ.「甲は,公務員乙と共謀の上,乙の職務上の行為に対する謝礼の趣旨で,丙から賄賂を収受した。」という収賄の訴因を,「甲は,丙と共謀の上,公務員乙の職務上の行為に対する謝礼の趣旨で,乙に対して賄賂を供与した。」という贈賄の訴因に変更することは,収受したとされる賄賂と供与したとされる賄賂とが同一であったとしても,公訴事実の同一性を欠き,許されない。
エ.「甲が銅板を窃取するに際し,犯行供用物件を貸与して窃盗の幇助をした。」という窃盗幇助の訴因を,これと併合罪関係にある「甲が窃取した銅板を,盗品と知りながら買い受けた。」という盗品等有償譲受けの訴因に変更することは,公訴事実の同一性を欠き,許されない。
オ.「Aに対し,殺意をもって猟銃を発射して殺害した。」という殺人の訴因で起訴された甲について,証拠上,殺人の訴因については無罪とするほかなくとも,これを重過失致死という相当重大な罪の訴因に変更すれば有罪であることが明らかな場合,裁判所は,例外的に,訴因変更を促し又はこれを命ずる義務がある。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ
解答 5
KS1660H28-24Y 直接証拠 A
次の【事例】に関し,捜査機関が収集した後記アからオまでの【証拠】について,「直接証拠とは,犯罪事実を直接に証明する証拠をいう。」とする見解を前提とした場合,直接証拠に該当するものには1を,直接証拠に該当しないものには2を選びなさい。
【事 例】
甲は,平成28年2月1日午後7時頃,Hマンション401号室のV方において,Vを包丁で刺殺した。
【証 拠】
ア.「平成28年2月1日午後6時58分頃,包丁を持った甲がHマンション1階でエレベーターに乗り,4階で降りた後,401号室方向に向かう状況」を撮影した防犯カメラ映像
イ.V方居室内で,隠れて犯行を見ていたA(Vの交際相手)の「甲は,Vを包丁で刺して殺しました。」との供述を録取した検察官調書
ウ.V方の隣室である402号室に住むBの「平成28年2月1日午後7時頃,401号室から,Vの声で,『おい,甲,包丁で何するんだ。やめろ。』という声を聞いた。」との供述を録取した検察官調書
エ.V方に遺留されていた,Vの血液及び甲の指紋が付着した包丁
オ.甲及びVの共通の知人であるCの「甲は,Vのことを恨んでいた。甲がVを殺したことに間違いないと思う。」との供述を録取した検察官調書
解答 ア2,イ1,ウ2,エ2,オ2
第5編 証拠 第1章 証拠法総論
KS1690H29-25Y 厳格な証明 A
次の【見解】を前提とした場合,後記アからオまでの【記述】のうち,厳格な証明を要する事実として正しいものの個数は,後記1から6までのうちどれか。
【見 解】
刑罰権の存否及び範囲を定める事実については,証拠能力があり,かつ,適式の証拠調べを経た証拠による証明(厳格な証明)を要する。
【記 述】
ア.共謀共同正犯における共謀の事実
イ.累犯加重となる前科
ウ.暴行事件において,被告人が争っていない暴行事実
エ.勾留の要件の1つである被告人が定まった住居を有しない事実
オ.事後強盗事件において,被告人に逮捕を免れる目的があった事実
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 5 ア〇,イ〇,ウ〇,エ×,オ〇
第5編 証拠 第2章 証拠調べ手続
KS1740H29-24Y 証拠調べ A
次の【事例】は,被告人甲に対する傷害被告事件の公判手続である。同手続に関する後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
【事 例】
甲は,冒頭手続において,甲がVの頭部を鉄パイプで殴打し,加療約1か月間の傷害を負わせた旨の公訴事実につき,これを認める旨の陳述をし,弁護人も被告人と同旨であるとの意見を述べた。
検察官は,公訴事実を立証するため,証拠書類のほか,Vの血液が付着した鉄パイプの証拠調べ請求を行い,弁護人は,証拠書類全てを証拠とすることに同意し,鉄パイプの証拠調べについては異議がない旨の意見を述べた。
検察官請求証拠の証拠調べ終了後,弁護人は,甲とVとの間の示談書及び甲がV宛てに郵送した反省文の写しの証拠調べ請求を行い,検察官は,これら全てを証拠とすることに同意した。
【記 述】
ア.検察官が,立証趣旨が同一で,内容が重複するVの供述調書2通を請求した場合,裁判所は,弁護人が証拠とすることに同意している以上,いずれの供述調書も証拠として採用する決定をしなければならない。
イ.証拠として採用する決定があった証拠書類の取調べについては,必ず朗読の方法で行わなければならない。
ウ.検察官は,鉄パイプの証拠調べにおいて,鉄パイプを被告人に展示する際,事件との関連性を被告人に質問しなければならない。
エ.示談書の原本が取り調べられた後,弁護人は,裁判所の許可を得て,示談書の写しを提出することができる。
オ.裁判所は,反省文の原本を取り調べることができない以上,その写しを証拠として採用する決定をすることはできない。
解答 ア2,イ2,ウ2,エ1,オ2
KS1780H30-24Y 証人尋問 A
次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.主尋問において,誘導尋問をすることができる場合がある。
イ.証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは,裁判長の許可を受けずに,書面を証人に示して尋問することができる。
ウ.証人は,自己の祖父が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる。
エ.裁判官は,検察官の請求により第1回公判期日前に証人尋問を実施する場合は,被告人,被疑者又は弁護人をその尋問に立ち会わせなければならない。
オ.裁判所は,証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めるときは,弁護人が出頭している場合に限り,検察官及び弁護人の意見を聴き,その証人の供述中被告人を退廷させることができる。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ
解答 4
KS1800H29-22Y 公判準備における証人尋問 A
次の【事例】における証人尋問について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事 例】
検察官は,甲に対する傷害被疑事件の捜査において,目撃者Wを取り調べて供述録取書(以下「検察官調書」という。)を作成した上,甲を傷害罪で地方裁判所に起訴した。検察官は,公判において,検察官調書の取調べを請求したが,弁護人は,これを証拠とすることに同意しなかった。そこで,検察官は,Wの証人尋問を請求した。裁判所は,Wが病気で入院していたため,検察官及び弁護人の意見を聴いて,Wの入院先の病院においてWの証人尋問を実施することを決定した。その後,同病院において,Wの証人尋問が実施されたところ,Wは,検察官調書の内容と相反する供述をした。
【記 述】
ア.弁護人は,裁判所がWの証人尋問の実施場所を病院と定めたことについて,相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることはできない。
イ.甲及び弁護人は,いずれも裁判所の許可を得なければ,Wの証人尋問に立ち会うことができない。
ウ.裁判所は,病院でWの証人尋問を実施するに当たっては,その証人尋問を公開しなければならない。
エ.裁判所は,Wの証人尋問の実施後,その結果を記載した調書を公判廷で取り調べなければ,証人尋問におけるWの供述内容を事実認定に用いることができない。
オ.Wの証人尋問が公判期日において行われない限り,検察官調書の証拠能力を認める余地はない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ
解答 2
KS1810H29-23Y 証人尋問の方法 B
次の【事例】は,甲が自動車を運転中,これを自転車に乗っていたVに衝突させて同人を死亡させ,そのまま逃走を図った過失運転致死及び道路交通法違反(不救護・不告)被告事件に関する公判での検察官の立証活動を記述したものである。各証人に対して書面,図面等を示してした尋問に関する各下線部分の趣旨について,後記【記】の(a)から(c)までのいずれかに結び付けた場合,(a)に結び付くものの個数は,後記1から6までのうちどれか。
【事 例】
検察官Xは,事故現場の道路状況,スリップ痕の位置,Vの自転車が転倒していた場所,自動車の破片が散乱していた位置等が記載された実況見分調書を作成した警察官Aに対する証人尋問において,Aが「事故現場の道路状況等を正確に観察し,その結果を実況見分調書に正確に記載した。」旨証言したので,(ア)同実況見分調書をAに示して尋問したところ ,Aは,「この実況見分調書は,今話をした実況見分調書で間違いありません。」旨証言した。
次に,Xは,事故状況を目撃し実況見分に立ち会ったBに対する証人尋問において,Bが「交差点の中央付近で衝突した。」旨証言したことから,(イ)現場付近の地図の写しを示し,事故の際にBが立っていた位置及び衝突位置を同地図の写しに記入するよう求めたところ,Bは,同地図の写しに,立っていた位置及び衝突位置を記入した。続いて,Bは,「事故後の被告人運転車両の動きは覚えていない。」旨証言したが,捜査段階においては,Xに対し,「被告人は,事故後,コンビニ前の路上で一旦自動車を止め,被害者の様子を見たものの救護措置を講ずることなく逃走した。」旨供述していたことから,Xは,「被告人は,その後,コンビニ前の路上で,一旦自動車を止めていなかったか。」などの誘導尋問を行った。それにもかかわらず,Bが「覚えていない。」旨証言したことから,Xは,(ウ)コンビニエンスストアが写った事故現場付近の写真を示して尋問したところ,Bは,「思い出しました。事故現場から約30メートル西方のコンビニ前の路上で,被告人は,一旦自動車を止め,被害者の様子を見たものの救護措置を講ずることなく逃走しました。」旨証言した。
また,Xは,甲の自動車の一部破損したヘッドライトと路上に散乱していたガラス片の各破断部分が整合することを立証するため,同ガラス片を押収した警察官Cに対する証人尋問において,(エ)同ガラス片をCに示し,これをCが自ら押収したかどうかを尋問したところ,Cは,「このガラス片は間違いなく自らが押収した物である。」旨証言した。
さらに,Xは,甲の自動車がVの自転車のどの位置に衝突したのかを鑑定したDに対する証人尋問において,Dに対し,衝突箇所を尋問し,Dは,「自転車の前輪右側部と自動車の左前部が衝突した。」旨証言した。Xは,Dが衝突状況をシミュレーションした図面を鑑定書に添付していたことから,(オ)同図面を法廷内のスクリーンに映写した上,事故状況の詳細について尋問したところ,Dは,同図面を利用して事故状況を証言した。
【記 述】
(a) 書面又は物に関しその成立,同一性その他これに準ずる事項について証人を尋問する場合において必要があるとき
(b) 証人の記憶を喚起するため必要があるとき
(c) 証人の供述を明確にするため必要があるとき
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 3 アa,イc,ウb,エa,オc
KS1820R01-21Y 証人尋問 A
次の【事例】における被害者Vの証人尋問に関して述べた後記アからオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとし,対象となる書面又は物については,あらかじめ相手方に閲覧する機会を与えたものとする。
【事例】
甲は,Vの顔面を鉄パイプで殴打して傷害を負わせたという傷害の事実で公訴を提起された。甲は,公判において公訴事実を否認し,検察官の請求により,Vの証人尋問が実施された。
【記述】
ア.検察官は,Vの供述を明確にするため必要があるときは,裁判長の許可を受けて,実況見分調書に添付された現場見取図を利用して尋問することができる。
イ.検察官や弁護人は,証拠調べを終わったものでない書面又は物については,これをVに示して尋問することができない。
ウ.検察官は,現場に遺留された鉄パイプにつき,犯行に使用された鉄パイプとの同一性をVに尋問する場合に必要があるときは,裁判長の許可を受けずにこれを示すことができる。
エ.検察官が,捜査段階で撮影されたVによる被害再現写真をVに示すことについては,弁護人が異議がないと述べた場合に限り許される。
オ.検察官は,Vの記憶が明らかでない被害状況についてその記憶を喚起するため必要があるときは,裁判長の許可を受けて,Vが被害状況について記載していたメモを示して尋問することができる。
1.ア ウ 2.イ エ 3.イ オ 4.ア エ 5.ウ オ
解答 2
KS1821R03-24Y 証人尋問 B
証人尋問に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.刑事訴訟規則は,書面又は物に関しその成立,同一性その他これに準ずる事項についてその書面又は物を示してする尋問は,裁判長の許可が必要であると定めている。
イ.証人の供述を明確にするため,図面,写真,模型,装置等を利用して尋問する際,それらの図面等が証拠調べを終わったものでないときは,あらかじめ,相手方に閲覧する機会を与えなければならないが,相手方に異議がないときは,この限りでない。
ウ.刑事訴訟規則は,証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときに示すことができる書面について,供述を録取した書面を条文上除外している。
エ.証拠として採用されていない書面であっても,その書面を証人に示した尋問が行われて証人尋問調書に添付された場合にはその書面が証人尋問調書と一体になるから,その書面を証拠として取り調べなくても,証言で引用されていない部分を含むその書面の全部を事実認定の用に供することができる。
オ.証拠として採用されていない鑑定書であっても,鑑定書の作成者の証人尋問において,作成の真正を立証するために,その作成者欄の署名押印部分を証人に示して証人の署名押印であるかを確認する尋問は許される。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ
解答 1
第5編 証拠 第3章 証拠の許容性
KS1861R03-22Y 前科証拠 A
後記アからオまでの【記述】のうち,次に掲げる【判例】(住居侵入,窃盗,現住建造物等放火被告事件に係る最高裁判所平成24年9月7日第二小法廷判決・刑集66巻9号907頁)に整合しないものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。
【判例】
「前科も一つの事実であり,前科証拠(被告人の前科の存在を示す証拠)は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての価値(自然的関連性)を有している。反面,前科,特に同種前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど,その取調べに付随して争点が拡散するおそれもある。したがって,前科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。」
【記述】
ア.前科証拠を用いて,被告人と起訴に係る事件の犯人の同一性を証明しようとする場合,当該前科証拠と証明すべき事実との間に自然的関連性があるかどうかのみによって,その証拠能力の有無が決せられるわけではない。
イ.前科証拠を用いて,被告人に起訴に係る犯罪事実と同種の前科があるという事実から,起訴に係る事件の犯人が被告人であることを推認しようとする場合は,実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすい。
ウ.前科証拠を用いて,起訴に係る事件の犯人が被告人であることを推認しようとする場合に伴う弊害には,訴訟の円滑な進行に支障をもたらすおそれがあることが含まれる。
エ.前科証拠を用いて,被告人と起訴に係る事件の犯人の同一性を証明しようとする場合において,当該前科に係る犯罪事実の有する特徴が顕著なものではないため,その特徴が起訴に係る犯罪事実と相当程度類似していても,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるとはいえないときは,これを証拠として採用することはできない。
オ.事実認定者が前科証拠に触れることに伴う弊害を軽視することは相当ではないから,裁判員の参加する合議体が審理する事件においては,前科証拠を証拠として採用することはできない。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 2 ア〇,イ〇,ウ〇,エ〇,オ×
KS1870H28-22Y 各種書面の証拠能力 A
次の教授と学生の【会話】は,各種書面の証拠能力に関する議論である。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,aが正しいものには1を,bが正しいものには2を選びなさい。
【会 話】
教授:刑事訴訟法第321条第3項の「検証の結果を記載した書面」に,捜査機関が任意捜査として行う実況見分の結果を記載した書面(以下「実況見分調書」という。)が含まれるかについて,あなたはどのように考えますか。
学生:私は,実況見分調書も含まれると考えます。検証と実況見分は,①(a.いずれも弁護人の立会権が明文で認められており b.いずれも客観的・技術的性質を有しており)虚偽が入る余地が少ないと考えるからです。
教授:次に,私人が作成した書面について,刑事訴訟法第321条第3項の準用又は類推が認められるかについて,あなたはどのように考えますか。
学生:私は,認められると考えます。ただし,私人が作成した書面全般に準用又は類推を認めるべきではなく,私は,②(a.捜査機関の実況見分に準ずるだけの客観性・業務性が認められるときは b.特別の学識経験に基づいた報告であれば)準用又は類推を認めてよいと考えています。
教授:火災原因の調査を行う会社に勤める元消防士で,通算約20年間火災原因の調査・判定に携わった経験のある私人が,燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面の証拠能力について,判例はどのような判断を示しましたか。
学生:判例は,③(a.刑事訴訟法第321条第3項の準用により証拠能力を有する b.刑事訴訟法第321条第3項の準用は否定されるが,同条第4項の準用により証拠能力を有する)旨の判断を示しました。
教授:では,医師が作成する診断書について,判例は,どの条文を根拠に証拠能力を認めていますか。
学生:④(a.刑事訴訟法第321条第3項 b.刑事訴訟法第321条第4項)を根拠としています。
教授:また,判例によれば,酒酔い鑑識カードの化学判定欄及び被疑者の言語,動作,酒臭,外貌,態度等の外部的状態に関する各記載は,いずれも刑事訴訟法第321条第3項により証拠能力が認められるとされていますが,更に警察官が被疑者に質問を行い,これに対する被疑者の応答を記載した部分について,判例はどのように述べていますか。
学生:⑤(a.化学判定欄等と一体となって刑事訴訟法第321条第3項により証拠能力が認められる b.警察官作成の捜査報告書たる性質のものとして刑事訴訟法第321条第1項第3号により証拠能力が認められる)と述べています。
解答 ア2,イ1,ウ2,エ2,オ2
KS1890R01-23Y 違法収集証拠 A
違法収集証拠の証拠能力に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.違法に収集された証拠物の証拠能力が否定されるか否かは,専ら憲法の解釈に委ねられており,憲法第31条の適正手続の保障自体の要請として,証拠物の収集手続に重大な違法があり,これを使用して被告人を処罰することによって手続全体が適正を欠くものとなる場合に限って,その証拠能力が否定される。
イ.被告人を逮捕する際に逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていないという違法がある場合,警察官が逮捕手続の違法を糊塗するため,逮捕時に逮捕状を呈示した旨の虚偽を逮捕状に記入した上,同旨の内容虚偽の捜査報告書を作成し,さらに,公判廷において,同旨の内容虚偽の証言をしたという事情が存するとしても,これらは逮捕後に生じたものであるから,その逮捕当日に任意に採取された尿の鑑定書の証拠能力を判断するに当たり,これを考慮することはできない。
ウ.証拠物の収集手続にその証拠能力を否定すべき重大な違法があるか否かを判断するに当たり,手続違反がなされた際の状況や適法になし得た行為からの逸脱の程度を考慮することはできるが,警察官の,令状主義に関する諸規定を潜脱しようとの意図の有無を考慮することはできない。
エ.違法な捜査手続の結果収集された証拠物が犯罪の立証上重要なものであればあるほど,その証拠能力を否定することは,事案の真相の究明との抵触が大きくなるため,逮捕手続に重大な違法が認められる場合であっても,その逮捕中に被告人が任意に提出した尿から覚せい剤成分が検出された旨の鑑定書は,同人の覚せい剤使用の罪に係る公判において,証拠能力が否定されることはない。
オ.ある証拠物が収集された直接の手続のみに着目すれば違法が認められない場合でも,それに先行する捜査手続(先行手続)に重大な違法があって,当該証拠物がその先行手続と密接な関連を有するときは,その証拠能力が否定されることがある。
解答 ア2,イ2,ウ2,エ2,オ1
第5編 証拠 第4章 自白法則
KS1950R01-24Y 補強証拠 A
次のⅠ,Ⅱの【見解】は,犯行を否認する甲を有罪とするに当たり,甲と共に犯行を行った旨自白する乙の供述につき,補強証拠を必要とするか否かに関するものである。【見解】に関する後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。
【見解】
Ⅰ.甲を有罪とするには,乙の供述につき補強証拠を必要とする。
Ⅱ.甲を有罪とするには,乙の供述につき補強証拠を必要としない。
【記述】
ア.刑事訴訟法第319条第2項の規定は,自由心証主義の例外であるから限定的に解すべきであると考えると,Ⅱの見解に結び付きやすい。
イ.Ⅰの見解に対しては,他に補強証拠がない限り,否認した甲は有罪,自白した乙は無罪になるという非常識な結論が生じるとの批判がある。
ウ.自白の証明力の過大評価を防止するという刑事訴訟法第319条第2項の規定の趣旨からすれば,本人の自白と共犯者の自白を区別する理由がないと考えると,Ⅱの見解に結び付きやすい。
エ.共犯者である乙の自白は,甲の公判において反対尋問による吟味を経るため,証明力が高いと考えると,Ⅱの見解に結び付きやすい。
オ.Ⅰの見解のうち,補強証拠を必要とする範囲を法益侵害があった事実とそれが何人かの犯罪行為によるものであることで足りるとする立場に対しては,共犯者の自白には,引込みや責任転嫁の危険があるが,それらの危険を防止することはできないとの批判がある。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 3 ア〇,イ×,ウ×,エ〇,オ〇
KS1980H28-23Y 共犯者の自白 A
次の【会話】は,乙と共謀の上,丙を殺害したという事件で起訴された甲の公判において,「甲の指示により丙を殺害した。」旨の乙の供述のみによって,甲を有罪とすることはできるかについての議論である。甲を有罪とすることはできるとの立場から発言する学生の人数は,後記1から5までのうちどれか。
【会 話】
学生A:この場合に問題となるのは,共犯者の自白にいわゆる補強証拠が必要か,すなわち,憲法第38条第3項,刑事訴訟法第319条第2項により,「本人の自白」を唯一の証拠として有罪とすることは許されず,補強証拠が必要とされるところ,この「本人の自白」に共犯者の自白も含まれるかということですよね。
学生B:補強法則は,自由心証主義の例外ですから,条文の解釈は厳格に行うべきだと思います。
学生C:私は,自白偏重防止という観点から,本人の自白と共犯者の自白とで区別すべきではないと考えます。
学生D:私は,他に補強証拠がない場合に,自白した者が無罪となり,否認した者が有罪となるような非常識な結論を導く解釈を採ることは,許されないと思います。
学生A:自白した者が無罪となるのは,自白に補強証拠がないためであり,否認した者が有罪となるのは,共犯者の供述が信用できると判断された結果だから,別に不合理ではないでしょう。
学生B:共犯者の自白に対しては反対尋問ができるのだから,被告人本人の自白とは違いますよ。
学生C:誤判のおそれという観点からは,むしろ共犯者の自白の方が危険だということも考えるべきでしょう。
学生D:共犯者は,自己の刑事責任を免れ又は軽くするために,他人を巻き込んだり責任転嫁したりするような供述をする危険性がありますからね。
1.0人 2.1人 3.2人 4.3人 5.4人
解答 3 A〇,B〇,C×,D×
第5編 証拠 第5章 伝聞法則
KS2020H29-26Y 321条1項1号該当性 B
被告人甲以外の者の供述を録取した次のアからオまでの各調書のうち,刑事訴訟法第321条第1項第1号の裁判官の面前における供述を録取した書面は幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.第1回公判期日前の証人尋問調書
イ.民事事件における証人尋問調書
ウ.乙の刑事事件における証人尋問調書
エ.乙の刑事事件における被告人質問調書
オ.少年丙の保護事件における証人尋問調書
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 6 ア〇,イ〇,ウ〇,エ〇,オ〇
KS2060H27-20Y 実況見分調書 A
次の【事例】中の実況見分調書につき,その証拠調べ請求に関して述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。
【事 例】
司法警察員Kは,現住建造物に対する放火事件の捜査として,焼損した建造物につき,その所有者Vを立会人とする見分を行い,実況見分調書を作成した(実況見分調書には,Vの署名・押印のいずれもない。)。Vが実況見分の際に建造物の特定の箇所を指し示しながら,Kに対し「ここにAが火を付けるのを見た。」旨説明したので,Kは,その箇所を写真撮影した後,同写真を実況見分調書に添付するとともに,Vの前記説明内容を実況見分調書に記載した。その後,Aが同事件の犯人として起訴された。検察官は,当該被告事件の公判前整理手続において,「建造物の焼損状況」を立証趣旨として実況見分調書の証拠調べを請求した。弁護人は,「Aは犯人ではなく,本件火災はVによる失火が原因である。」旨主張した上,実況見分調書について不同意の意見を述べた。
【記 述】
ア.弁護人は,裁判長から,不同意意見の理由として実況見分調書が真正に作成されたものであることを争う趣旨であるかについて釈明を求められた場合には,釈明する義務を負う。
イ.実況見分調書につき,関連性があるとして証拠能力が認められるためには,Aが犯人であることを疎明する必要がある。
ウ.Kが火災原因の調査,判定に関して学識経験を有しない場合には,実況見分調書が真正に作成されたものであるとは認められない。
エ.実況見分調書の証拠能力が認められるためには,K及びV両名に対する証人尋問が必要である。
オ.裁判所は,実況見分調書が真正に作成されたものであることが認められても,実況見分調書におけるVの前記説明内容が記載された部分を,Aが犯人であることを証明する証拠として用いることはできない。
解答 ア1,イ2,ウ2,エ2,オ1
KS2131R03-23Y 伝聞証拠 A
次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事例】
甲は,「令和2年12月5日午前1時頃,H市内のI公園内で,ゴルフクラブでVを殴打して殺した。」との殺人の事実により,H地方裁判所に起訴された。公判において,犯行の目撃者A,甲の妻B,甲の知人Cの証人尋問が,それぞれ実施された。
【記述】
ア.Aの,「話をしていた2人のうち1人が『甲,お前に貸した金を早く返せ。』と言うと,言い争いになり,その後,言われた方がもう一方に棒のようなものを振り下ろした。」旨の証言は,要証事実を「甲がVに借金をしていたこと」とした場合,伝聞証拠に当たらない。
イ.Aの,「話をしていた2人のうち1人が『甲,お前に貸した金を早く返せ。』と言うと,言い争いになり,その後,言われた方がもう一方に棒のようなものを振り下ろした。」旨の証言は,要証事実を「犯人がVから甲と呼ばれていたこと」とした場合,伝聞証拠に当たる。
ウ.Bの,「令和2年12月1日午後1時頃,自宅において,甲から『探していたゴルフクラブを家の物置で見つけた。』と言われた。」旨の証言は,要証事実を「甲が犯行時点よりも前からゴルフクラブを所持していたこと」とした場合,伝聞証拠に当たる。
エ.Bの,「令和2年12月8日午後3時頃,自宅において,甲から『3日前の午前1時頃,H市内のI公園で,Vをゴルフクラブで殴り殺した。』と言われた。」旨の証言は,要証事実を「Vを殺したのが甲であったこと」とした場合,伝聞証拠に当たる。
オ.Cの,「令和2年12月7日午後5時頃,甲から電話があり,『2日前の午前1時頃には,俺は自宅でテレビ番組を見ていた。』と言われた。」旨の証言は,要証事実を「Vが殺されたとき甲が自宅にいたこと」とした場合,伝聞証拠に当たらない。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 4
KS2140R01-22Y 伝聞証拠322条1項 B
次の【事例】に関し,甲の供述を記載した書面の証拠能力について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。ただし,刑事訴訟法第326条の同意がなかったものとする。
【事例】
甲は,平成30年12月15日午後8時頃,H市I町2丁目先路上において,Vに対し,殺意をもって,携帯していた出刃包丁で,同人の胸部を突き刺すなどし,よって,その頃,同所において,同人を胸部刺切創による心臓損傷に基づく出血により失血死させて殺害したという殺人の事実により公訴を提起された。
【記述】
ア.甲がVを殺害するに至った経緯を自ら書き記した書面は,甲の署名又は押印のあるものに限り,V殺害の経緯を立証するための証拠として用いることができる。
イ.取調べの際に,甲がVを殺害するに至った経緯についてした供述を録取した書面で,甲の署名又は押印のあるものは,その供述が検察官の面前でされたものであるときに限り,V殺害の経緯を立証するための証拠として用いることができる。
ウ.検察官による取調べの際に,甲が,Vを殺害したことを認めた供述を録取した書面で,甲の署名又は押印のあるものは,その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるときに限り,甲がVを殺害したことを立証するための証拠として用いることができる。
エ.検察官による取調べの際に,甲が,平成30年12月14日午後7時頃,Vの胸部刺切創の大きさと合致する出刃包丁を購入したことを認めた供述を録取した書面で,甲の署名又は押印のあるものは,その供述が任意にされたものでない疑いがないときに限り,甲がVを殺害するために出刃包丁を購入したことを立証するための証拠として用いることができる。
オ.検察官による取調べの際に,甲が,平成30年12月15日午後8時頃,隣のJ市にいたため,Vを殺害することは不可能であった旨を述べた供述を録取した書面で,甲の署名又は押印のあるものは,その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り,Vが殺害された当時,甲が犯行の場所にいなかったことを立証するための証拠として用いることができる。
解答 ア2,イ2,ウ2,エ1,オ1
KS2141R02-25Y 伝聞証拠 B
伝聞証拠に関する次のアからオまでの各記述のうち,証拠とすることができる要件に差異のない書面の組合せが記載されたものの個数は,後記1から6までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.司法警察員の面前における被告人の供述を録取した書面で同人の署名及び押印のあるものと,検察官の面前における被告人の供述を録取した書面で同人の署名及び押印のあるもの
イ.司法警察員の面前における被害者の供述を録取した書面で同人の署名及び押印のあるものと,検察官の面前における被害者の供述を録取した書面で同人の署名及び押印のあるもの
ウ.被告人が作成した供述書で同人の署名及び押印のあるものと,被告人が作成した供述書で同人の署名及び押印のいずれもがないもの
エ.司法警察員が作成した検証調書と,司法警察員が作成した実況見分調書
オ.司法警察員から鑑定の嘱託を受けた者が作成した鑑定書と,裁判所から鑑定を命じられた鑑定人が作成した鑑定書
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 5 ア〇,イ×,ウ〇,エ〇,オ〇
KS2180H30-25Y 伝聞例外 B
次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.刑事訴訟法第321条第3項所定の書面の作成主体は「検察官,検察事務官又は司法警察職員」とされているところ,火災原因の調査,判定に関して特別の学識経験を有する者は,私人であっても同項の作成主体に準ずるものと解されるから,同人の作成した燃焼実験報告書についても,同項の書面に準ずるものとして,同項により証拠能力を認めることができる。
イ.捜査官が,被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして,被疑者に犯行状況について再現させた結果を記録した実況見分調書の要証事実が,再現されたとおりの犯罪事実の存在と解されるときは,このような内容の実況見分調書の証拠能力については,刑事訴訟法第326条の同意が得られない場合には,同法第321条第3項所定の要件を満たす必要があることはもとより,被告人である再現者の供述の録取部分については同法第322条第1項所定の要件を,写真部分については署名押印を除く同項所定の要件を,それぞれ満たす必要がある。
ウ.刑事訴訟法第323条第2号の「業務の通常の過程において作成された書面」に該当するか否かは,その書面自体だけから判断されなければならず,その作成者の証言等関係証拠を考慮に入れて判断することは許されない。
エ.犯行の状況を撮影したいわゆる現場写真は,非供述証拠に属し,当該写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認め得る限り証拠能力を具備するものであって,これを証拠として採用するためには,必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言させることを要しない。
オ.刑事訴訟法第328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
解答 1
第6編 裁判 第2章 裁判の内容
KS2230H27-21Y 裁判所の決定 A
裁判所の決定に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.弁護人は,訴因変更を許可する裁判所の決定に対し,適法に即時抗告をすることができる。
イ.検察官,被告人又は弁護人は,裁判所による証拠調べの決定に対し,適法に異議を申し立てることができる。
ウ.裁判所は,保釈請求に対して許可又は却下の決定をするに当たり,公判期日において証拠として取り調べていない資料に基づいて判断することができない。
エ.検察官は,保釈を許可する裁判所の決定に対し,適法に抗告をすることができる。
オ.裁判所は,決定をもって公訴を棄却する場合,口頭弁論に基づく必要はない。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
解答 1
KS2240R01-25Y 証明 A
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」とは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いを入れる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣旨である。
イ.直接証拠によって事実を認定すべき場合と,情況証拠によって事実を認定すべき場合とで,求められる証明の程度に異なるところはない。
ウ.裁判官が,証人の証言の信用性を判断する際には,その証言内容のみによって判断しなければならず,その証人の公判廷での表情や態度を考慮してはならない。
エ.略式手続においては,犯罪の証明の程度は,証拠の優越で足りる。
オ.裁判所は,被告人の精神状態につき,精神医学者の意見が鑑定等として証拠になっている場合には,その意見のとおりに認定しなければならない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 1
KS2255R02-26Y 択一的認定 A
次のⅠないしⅢの【見解】は,「Yに対する保護責任者遺棄致死罪で起訴された甲の公判において,証拠調べの結果,甲がYを遺棄した当時,Yが生きていたか死亡していたかが判明せず,甲に保護責任者遺棄致死罪と死体遺棄罪のどちらかが成立することは疑いがないが,どちらであるかは確定できなかった場合に,裁判所は,どのような判決を言い渡すべきか。」という問題に関する考え方を述べたものである。【見解】に関する後記アからオまでの【記述】のうち,誤っているものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。
【見解】
Ⅰ.無罪判決を言い渡すべきである。
Ⅱ.保護責任者遺棄致死罪又は死体遺棄罪のいずれかの事実が認定できるという択一的認定をして,有罪判決を言い渡すべきであるが,量刑は,軽い死体遺棄罪の刑によるべきである。
Ⅲ.軽い死体遺棄罪の事実を認定して,有罪判決を言い渡すべきである。
【記述】
ア.Ⅰの見解に対しては,国民の法感情に反するという批判がある。
イ.Ⅰの見解に対しては,刑事訴訟において重要なのは,特定の犯罪に当たる事実の証明がされたかどうかであるとの批判がある。
ウ.Ⅱの見解は,保護責任者遺棄致死罪又は死体遺棄罪のいずれかであることは疑いがない以上,軽い罪の刑で処罰するのであれば,「疑わしきは被告人の利益に」の原則に反しないとする。
エ.Ⅱの見解に対しては,合成的な構成要件を設定して処罰することになり,罪刑法定主義に反するという批判がある。
オ.Ⅲの見解は,保護責任者遺棄致死罪又は死体遺棄罪のどちらかが成立することは疑いがない状況で,重い保護責任者遺棄致死罪の事実が認定できないのであれば,死体遺棄罪が疑いなく証明されたと考えるべきであるとする。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 2 ア〇,イ×,ウ〇,エ〇,オ〇
第7編 救済手続 第1章 上訴
KS2350H30-26Y 控訴 A
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.控訴の提起期間は,刑事訴訟法上,10日と定められている。
イ.判決の主文と理由に食い違いがある場合,それが判決に影響を及ぼすことが明らかであるときに限り,控訴を申し立てることができる。
ウ.控訴審において,裁判所は,公判期日に被告人が出頭しなければ開廷することができない。
エ.控訴裁判所は,必要と認めるときは,原判決の言渡し後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべき情状について取り調べることができる。
オ.控訴裁判所は,被告人のみが控訴をした事件について,原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ
解答 5
KS2370H27-26Y 控訴申立ての理由の審査 A
次の【記述】は,控訴審における控訴申立ての理由の審査に関する最高裁判所の判例からの引用である。【記述】中の①及び②の( )内に入る適切な語句の組合せとして正しいものは,後記1から6までのうちどれか。
【記 述】
刑訴法は控訴審の性格を原則として事後審としており,控訴審は,第一審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく,当事者の訴訟活動を基礎として形成された第一審判決を対象とし,これに事後的な審査を加えるべきものである。第一審において,直接主義・口頭主義の原則が採られ,争点に関する証人を直接調べ,その際の証言態度等も踏まえて供述の信用性が判断され,それらを総合して(①)が行われることが予定されていることに鑑みると,控訴審における(②)の審査は,第一審判決が行った証拠の信用性評価や証拠の総合判断が論理則,経験則等に照らして不合理といえるかという観点から行うべきものであって,刑訴法第382条の(②)とは,第一審判決の(①)が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいうものと解するのが相当である。したがって,控訴審が第一審判決に(②)があるというためには,第一審判決の(①)が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要であるというべきである。
1.①訴訟手続 ②事実誤認
2.①訴訟手続 ②訴訟手続の法令の違反
3.①法令の適用 ②法令の適用の誤り
4.①法令の適用 ②訴訟手続の法令の違反
5.①事実認定 ②事実誤認
6.①事実認定 ②法令の適用の誤り
解答 5
KS2381R03-26Y 上告審 B
刑事事件の上告審に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあることは適法な上告理由となる。
イ.単なる事実誤認は適法な上告理由に当たらないが,判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があることは適法な上告理由となる。
ウ.単なる量刑不当は適法な上告理由に当たらないが,刑の量定が甚しく不当で,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められることは適法な上告理由となる。
エ.大審院の判例と相反する判断をしたことが適法な上告理由となることはない。
オ.上告審は法律審であるが,上告裁判所である最高裁判所は,上告趣意書に包含された事項を調査するについて必要があるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調べをすることができる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 2
KS2410R01-26Y 準抗告の対象 B
次のアからオまでの裁判又は処分のうち,準抗告の対象となるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.裁判官がした,逮捕状を発付する裁判
イ.受訴裁判所がした,被告人の保釈請求を却下する裁判
ウ.司法巡査がした捜索
エ.司法警察員がした差押え
オ.検察官がした,被疑者とその弁護人との接見の日時の指定
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 5
第7編 救済手続 第2章 非常救済手続
KS2440H28-26Y 再審 A
次のアからオまでの各記述は,有罪の確定判決に対する再審について述べたものである。これらの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.有罪の言渡しを受けた者が死亡した場合には,その者の子であっても再審の請求をすることができない。
イ.検察官は,再審の請求をすることができる。
ウ.有罪の言渡しを受けた者は,再審の請求をする場合には,弁護人を選任することができる。
エ.再審の請求を受けた裁判所は,同請求が理由のあるときは,再審開始の決定をしなければならない。
オ.再審開始の決定が確定したときは,再審の請求が対象とした確定判決は,その効力を失う。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 2
第9編 総合問題
KS2461R03-20Y 法定刑による違い A
次のアからオまでの各事項のうち,その可否が,刑事訴訟法の規定上,法定刑の軽重により異ならないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.緊急逮捕
イ.必要的保釈(権利保釈)
ウ.勾留の執行停止
エ.検察官による第1回公判期日前の証人尋問請求
オ.即決裁判手続の申立て
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答 4
KS2490H27-14Y 検察官と司法警察員の権限 A
次のアからオまでの各記述のうち,検察官と司法警察員のいずれもが行使できる権限は幾つある か。後記1から6までのうちから選びなさい。
ア.逮捕状により被疑者を逮捕すること
イ.被疑者の勾留を請求すること
ウ.捜索差押許可状により捜索すること
エ.私人から,同人が逮捕した現行犯人の引渡しを受けること
オ.第1回公判期日前に,裁判官に対し,証人の尋問を請求すること
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
解答 4 ア〇,イ×,ウ〇,エ〇,オ×
KS2491R03-19Y 検察官への事件送致等 B
司法警察員から検察官への事件送致及び検察官の訴追裁量権に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものに1を,誤っているものには2を選びなさい。
ア.司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,例外なく,速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
イ.刑事訴訟法では起訴独占主義が採られているため,起訴・不起訴について検察官の判断を一切経ることなく,事件が公訴提起されることはない。
ウ.刑法第177条(強制性交等)の罪及びその未遂罪について告訴又は告発をした者は,当該事件につき検察官のした公訴を提起しない処分に不服があるときは,刑事訴訟法に基づき,その検察官を指揮監督する検事正に当該処分の見直しを請求することができる。
エ.検察審査会が,検察官の公訴を提起しない処分の当否に関し,起訴を相当とする議決をしたときは,検察官は,当該議決に従って公訴を提起しなければならない。
オ.告訴又は告発をした者は,当該事件につき検察官のした公訴を提起しない処分に不服があるときは,付審判請求をすることができるが,その対象事件には限定がない。
解答 ア2,イ1,ウ2,エ2,オ2
KS2531R03-25Y 異議申立て B
異議申立てに関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.検察官,被告人又は弁護人は,裁判所による証拠調べ請求を却下した決定に対し,相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる。
イ.合議体の裁判長は,証人尋問において,検察官の尋問に対する弁護人の異議申立てに対して判断をするに当たり,陪席裁判官との合議を経る必要がある。
ウ.証人尋問における異議の申立てについては,個々の行為,処分又は決定ごとに,直ちにしなければならないが,その理由を示す必要はない。
エ.検察官,被告人又は弁護人は,裁判長の訴訟指揮に基づく処分に対し,相当でないことを理由として適法に異議を申し立てることができる。
オ.弁護人が行った証拠調べに関する異議の申立てについて,裁判所が決定で棄却したのに対し,弁護人は,その判断に不服があるときでも,その決定で判断された事項については,重ねて異議を申し立てることはできない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ
解答 4
KS2560H28-18Y 刑事手続きの期間 A
次のアからオまでの各記述は,刑事訴訟法の各規定の要旨を記述したものである。これらの各記述中の( )内からそれぞれ適切なものを選んだ場合,aが正しいものには1を,bが正しいものには2を選びなさい。
ア.検察官は,逮捕状により被疑者を逮捕したときは,直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上,弁解の機会を与え,留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から(a.24 b.48)時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
イ.裁判官は,やむを得ない事由があると認めるときは,検察官の請求により,被疑者の勾留の期間を延長することができる。この期間の延長は,通じて(a.10 b.20)日を超えることができない。
ウ.検察官は,死刑又は無期若しくは長期(a.3 b.5)年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で,急速を要し,裁判官の逮捕状を求めることができないときは,その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。
エ.被告人の勾留の期間は,公訴の提起があった日から(a.1 b.2)箇月とする。
オ.控訴の提起期間は,(a.7 b.14)日とする。
解答 ア2,イ1,ウ1,エ2,オ2
KS2570R02-24Y 証拠と憲法の諸規定 B
刑事訴訟における証拠と憲法の諸規定に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.違法に収集された証拠物の証拠能力については,憲法及び刑事訴訟法に明文の規定は置かれていないものの,刑事訴訟法の解釈として,憲法第31条による適正手続の保障並びに憲法第35条による住居の不可侵及び捜索・押収を受けることのない権利の保障にも鑑み,そのような証拠物の証拠能力が否定される場合がある。
イ.国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができない者の供述を録取した検察官面前調書を,刑事訴訟法第321条第1項第2号前段の規定により証拠とすることは,それが作成され証拠請求されるに至った事情や,供述者が国外にいることになった事由のいかんによっては,憲法第37条第2項の保障する証人審問権の趣旨に鑑み許されない場合がある。
ウ.自己負罪拒否特権に基づき証言を拒否する証人に対して刑事免責を付与して供述を強制することは,憲法第38条第1項に違反するから,そのようにして得られた供述を,被告人の有罪を認定するための証拠とすることは許されない。
エ.任意にされたものでない疑いのある自白を,犯罪事実を認定するための証拠とすることは,刑事訴訟法第319条第1項の定める自白法則に違反するが,憲法第38条第2項の定める自白法則には違反しない。
オ.公判廷における被告人の自白を唯一の証拠として被告人を有罪とすることは,刑事訴訟法第319条第2項の定める補強法則に違反するが,憲法第38条第3項の定める補強法則には違反しない。